ぶどうジュースで大暴れ
「だけどエリアちゃんを地球へ連れて帰るってったって、豪快にどうにもならないじゃないか!」
次の日、僕はもうすぐギューリキ君に譲るイカルスを飛ばしてセリア君の黄金マンションへ押し掛け、虎猫を押しのけてソファーに堂々と居座り、セリア君から新しい通訳耳栓と通訳メガネをもらってから、「それじゃエリアちゃんを地球へ連れて帰る!」とか言いだして、セリア君をとても困らせていた。
「エリアちゃんはいつまでも十二歳の身長のままで、やがておばあちゃんになっちゃうんだぜ。そして三十歳くらいで死んでしまう。それより、彼女はこっちにいて、普通の人生を送ったほうが幸せじゃないのか?」
「それじゃ彼女を僕と同じように成長して、同じ寿命にしてくれよ!」
「そんな事出来るもんか!」
「でもさぁ、タイムエイジマシンとかぁ、例のお父さんの頭を狙った光線銃とかぁ、いろいろいろいろ使ってさぁ…」
「だめだめだ~め!」
「それがだ~めなら、僕、ず~っとず~っとオーラム星にいるよ。だったらエリアちゃんが長生きすればいいだけじゃん。そしたら僕、とにかくず~~~~っとオーラム星にいて、ねえねえ、こっちで大統領でも何でもするからさぁ」
「大統領?」
「で、エリアちゃんも長生き出来るようにしてさぁ」
「無理だよ!」
「どうしても?」
「大統領はともかく、エリアちゃんも、ず~~~~~~~~っとオーラム星も無理無理無理!」
「デモボクぅエリアチャンニアエナクナル…」
そして僕の消え入りそうな声を聴いたセリア君は、腕組みして突然少し真剣な顔になって、一度ため息をついて、そして僕にこう言った。
「君の気持ちは痛いほど分かる! だけどこればっかりゃぁ…、人生、あきらめが肝心よ!」
それから僕は絶望的な気持ちのままイカルスで寮へ帰り、早速ふて寝を始めた。
だけどその夜、心配したセリア君がぶどうジュースを何本も持って寮の僕の部屋に来てくれた。そんなことは入団して初練習で守備の醜態を晒してふて寝して以来だ。
そしてふて寝している僕に「部屋に閉じこもってないで、寮の食堂で盛大にぱぁ~~~~っと飲み明かそうぜ!」と言って、僕を部屋から引っ張り出した。
それで僕はセリア君と食堂で盛大な飲み会を始める事にしたんだ。
実は僕が2リットルプラチナボトル入りグレープジュース三本を飲み終えた頃に気付いたのだけど、この星のグレープジュースは、大量に飲むと酔っ払うみたいだった。
いきなり天井がくるくる回りだし、そのあとの記憶がないんだ。
そして僕は酷く暴れたらしい。
一方セリア君はおじんっぽくメロンソーダをちびりちびり飲んだ。つまみはいつものエクレア。だから最後まで酔いつぶれなかったらしい。
それで、セリア君の話によると僕はこんな事を言ったらしい。
「あーあ、これでエリアちゃんとは永遠にお別れだ。僕はもう豪快に絶望だぁ!」
それを聞いたセリア君は僕を励まそうとしたらしいのだけれど、結構メロンソーダでも酔っ払っていたらしく、セリア君らしくない、こんな軽率な、僕の神経を逆なでするような、気の利かない事を言ってしまったらしい。
「それじゃ地球でまたいい娘を見付けなよ♪」
で、それが僕の逆鱗に触れたみたいで、
「えええ、エリアちゃんの事を何だと思っているんだ! 僕にとって、エリアちゃんは…エリアちゃんはぁ…」
そう言うと僕は本格的に暴れ始めたらしい。
「何だエアコン。てめえなんか、砲丸投げだ!」
僕は本当にエアコンを「砲丸投げ」したらしく、エアコンはダイヤモンドの窓をがっしゃ~んと突き破り、寮の庭にドッシャ~ンと落ちて小さな衝突クレーターが出来たらしい。
そしてそれからはてんやわんやになり、
「ざまぁみろ、エアコンめ! けけけ!」
「まあまあまあまあ、落ち着けよ」
「ええい、触るな触るなけがわらしい!」
「いいからいいからいいから」
「やかましい! 何だこんなダサいテーブル! ええい、背負い投げでも食らえ!」
どっかんがらがら
「ダイスケ君、やめなってば!」
「うるせぇ! てめえ、たたたたたたき殺すぞぉぉぉぉ!」
それから、僕の目がすっかり座っているのに気付いたセリア君は、身の危険を感じたみたいで、さささっと食堂の隣の炊事場へと逃げ込んだ。
それを追いかけるように僕も炊事場へ向かい、
「ええい、冷蔵庫! お前なんか、大外刈りだ!」
バキ!
「ギャ~!」
「お~い、誰か、湿布と包帯を持って来てくれ!」
「え~いジュースだジュースだ。ジュースを持ってこい!」
それから僕はそんな事をわめきながら、食堂と炊事場を舞台に暴れ回ったたらしい。それで、何事かと集まって来た寮のみんなに取り押さえられ、右足に湿布と包帯をしてもらい、さらにみんなは僕が破壊活動をした食堂と炊事場の後片付けまでやってくれ、しかも寮の庭に落ちたエアコンもわざわざ拾いに行ってくれ、エアコンが地面に衝突した際に出来た衝突クレーターもきちんと埋め戻してくれたのだけど、それからみんなは、どうして僕がそんなに暴れたのかを聞いてくれ、それじゃゆっくり話を聞こうぜという事になって、一緒にグレープジュース飲んでくれ、一緒に酔っぱらってくれたらしい。
それから僕は食堂の椅子に腰を降ろし、包帯をした足をもう一つの椅子に投げ出して、少し酔いも覚め冷静になり、すると今度は雄弁になって、地球の事を話し始めたらしい。
#1僕はサファイア星人で本当は子供だという事
#2サファイア星は、本当は地球と呼ばれている事
#3その地球にはオーラム星ほどじゃないけれど、高度な文明がある事
#4地球人の寿命が八十年はある事
#5そして地球では、未だ民族や宗教や政治思想の違いなどを理由に、戦争やテロなんかが後を絶たないという事……
みんな大笑いしながら聞いてくれたらしい。
もちろん、本気にした者など誰もいなかったらしい。




