第四章 第二節 鬼の村へ
アータヴァカが支配する村についたのは数日後であった。アータヴァカが呪を唱え、緊箍の環を外す。それを見たケンがミラの首輪を外した。
「あー息苦しかった」
「あー、気分が楽になる」
「二人ともすまない。そしてありがとう」
「はい、大元帥様。使命を果たしました」
「結果はどうなるかわからん。それに我々は他の鬼族を裏切ったのだ。他の鬼族らから攻められるかもしれぬ」
「そこでだ、ミラ。この使命を受けるかはそなたらの自由だ」
「通商条約と保護条約案を手渡してほしいのだ。今度は近い。ファリドゥーン王国の首都じゃ」
「王子よ。どう思うかね。なるべくなら王子と同行したのだが」
「アータヴァカ様、わかりました。同行します。」
「王子!」
「私は鬼族として誇りに思うぞ。ミラとアラよ。一緒に同行してくれ。それと犬人よ、今度は我々は王子には一切束縛も脅迫もせぬ。すべては自由じゃ。だからそなたも束縛はやめていただきたい」
「……」
「そなたらの本当の目的は電力であり、文明の復興じゃろ?」
「はい、鬼軍の総指揮官様」
「えっ」
王子が驚く。
「王子、この方は大元帥の称号を持つ鬼です。軍をすべて指揮する身分の鬼です。彼がそこまでやるというのですから嘘ではないのでしょう。ですから万が一の時はわが国に逃げようというのです」
「大元帥アータヴァカ様、お教えできませぬか?なぜゆえ人間や我々獣族の肉を食うのかを」
「それは魔導物質の副作用のせいじゃ」
「何!?」
タウスが驚く。
「我々は生まれたときに魔導石を埋め込まれる。この力を増幅することによって暗黒の戦士になれる。力も強大じゃ。たとえ子どもであってもじゃ。じゃが、この力を使いすぎると……人間や元魔族の血肉を欲する副作用が出る」
タウスは顔を顰めた。
「元々鬼は数年に一回程度人間の肉を食えば上等じゃし、牛や馬でも代用できる。しかし、鬼の王である天帝はこの力を使って征服しようとしているのじゃ。最終的には封印されたアジ・ダハーカの力を使って魔導石の力を増幅しようとしている」
ケンはやはりという表情だった。
「我々はもう戦争につぐ戦争に疲れたのじゃ。鬼族がどんどん冷酷な軍隊になっていくのだからな」
(その言葉に偽りはないようだな)
「そのような戦いには限界が来るだろうし、人間や元魔族である獣族、半獣族の逆襲に会う。全面戦争は鬼族そのものを滅ぼす危険性が高いうえに、ジラント王国の文明を見るに、鬼族には勝ちは無いと判断したのだ」
周りの鬼達がうなずく。中には泣いている鬼もいる。決して冷酷な食人鬼ではない。暗黒の鎧の中で戦士達は泣いていたのだ。人間と何が違うのであろう。
「これ以上、強制された戦争に借り出されるのはもう御免なのじゃ」
「王子、誠にすまない。このような因果に巻き込んでしまって」
「いいえ!」
一同が驚く。
「これは私の意志で行ないます。和平に向けて最大限努力しましょう」
村に歓声が響いた。五人が新たな親書を持って鬼族の村を後にする。




