山の上のキャンプ場⑤
「寂しいのね。甘えてていいよ」
胸に抱いたロンの頭を撫でているとき、屹度ロンはこれを伝えたかったのではないかと閃いて慌てて携帯を持ち直した。
「里沙!吹奏楽部のキャンプの日って空いてる?」
「なによ唐突に。空いていることは空いているけど屹度そのころは夏休みの宿題に追いまくられているんでしょうね」
「だったら一緒に宿題しない?キャンプ場で!」
「えっ……。で、でも、その日は吹奏楽部のイベントでしょ」
「それがさ、一般参加もOKなのよ!貸し切りのキャンプ場じゃないから」
「・・・」
少しの時間、里沙ちゃんは考えているのか黙っていたけど
「楽しそうだけど、平日だから親に乗せて行ってもらえないけど、そっちはバスでしょ?」
「うん。でも貸し切り」
「そうか……。どうせ乗れても人間だけだろうから、交通手段はこっちで手配するわ」
「えっ!行けるの?だったらもう一つお願いがあるんだけど」
「分かってるって。だから、交通手段が大変になるんだろ」
「えっ。あ・ありがとう」
「どうせ、私よりロンと一緒に行けるので喜んでいるんでしょ」
「あっ……い、いや。そんなこと……ゴメン!!!!」
「でも、いいよ。“わたしは千春と一緒が楽しいから”」
「だからゴメン!!」
「もーっ!謝らないでくれるぅ!それじゃ私が本当にダシに使われているまんまじゃん」
「いや、違うって!だから……」
「だからぁ?」
「好き!」
思わず口に出してからテンションが上がってしまって連呼した。
「好き好き!だぁ~い好き!」
体中が焼けるように熱くなるのが分かり“好き”という言葉のパワーを感じる。
「もう・いいよ。ありがとネッ!私も千春とロンが大好きだよ」
里沙ちゃんのそっけない口調も照れていた。
「じゃあ、一緒に行ってくれるのね!」
「いいともぉ~!」
小学校のときに流行っていた懐かしい番組のフレーズで通話を終えた。





