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さようならロン。また会う日まで。  作者: 湖灯


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中学最後の大会⑩(江角くんの告白)

 楽器を片付け終わり幕間の間にワイワイ騒ぎながら会場の席に着く。


 列の先頭に立っていた江角君はいつもと変わりない淡々とした表情で部長らしく皆に労いの言葉を掛けていた。


 私も席に着くと、待っていた里沙ちゃんが抱きついてきて「感動した」と目に涙を浮かべてくれていた。


 次の学校が緞帳の向こう側でチューニングを始めた頃、皆静かになった。


 ふと通路を見ると江角君が一人で通路を下りて行くのが見えた。

 なにか嫌な予感がして私も席を立とうとしたら、里沙ちゃんに「次、始まっちゃうよ」と言われたので「ちょっと緊張してお腹壊したみたいだから、次はパスする」と言って席を離れ通路を下りていく。


 会場を出た先の通路にはもう江角君の姿は見えなかった。


 ただのトイレだったのかしらとも思ったが、こんなときロンがいてくれたらすぐに見つけ出してくれるのに……。

 場内アナウンスが始まったので慌てて扉のところまで行くと係の人から嫌な目で睨まれた。


 少し開けた隙間から見ると、やはり江角君の席は空っぽだった。


『もー!世話のやける人』

 そう思ったけど、私が勝手に気になっているだけだ。


 会場の外側の通路を一階から順に上がって行っても、結局江角君は見つからなかった。


 とぼとぼと階段を下りていた時、ガラスの向こう側に小さく見える人影がポツリ。


『もしかしたら……』


 階段を駆け下りて建物の外に出てから思ったけど、急に駆け寄るのも変だし、恐る恐る近づくのも更に変!


 追いかけて来たものの、どう近づいたらいいのか、どう声を掛けるべきなのかもわからずに江角君の背中を5メートルくらい離れた位置でじっと見ていた。


「微妙だな」


 江角君が独り言を言っていると思ったら、もう一度「微妙な距離だな」と言われ、私に話しかけているのだと分かって近づいた。


「なにしているの」


 江角君の隣に腰掛けて聞くと「落ち込んでいる」と、正直な気持ちを打ち明けられた。


「いいんじゃない。あれで。みんな気が付かなかったみたいだし」


「でも、鮎沢は気が付いたろ?」


「私はね。最初のアレでアドレナリンいっぱい出ちゃって音に敏感になっていたから」


「かっこう悪いな。俺……」


「そうかなぁ?あの場面江角君がフォローしなかったらトランペットの伊藤君が今頃落ち込んでいると思うんだけど。みんなも気が付いただろうし」


「……」

「かっこう悪くなんてないよ。私はさすが江角君は部長なんだなって思ったよ」


「みんなはいいんだ……」


「えっ!?」


「みんなに何て思われてもいいんだ。ただ……」


 あ~。これって告白するパターンだなってすぐに気が付いて「大丈夫!里沙には黙っててあげるから」と言ったが、その言葉はなぜかスルーされて江角君はこう言った。


「俺、鮎沢にかっこういいところ見せたかったんだよ!」と。


 私の出した言葉に被せるように江角君の言葉が重なったので、お互いに言っている意味が最初分からなくてポカンとしていた。


 先に口を開いたのは江角君。


「立木がなんで関係あるの?」

「だ、だって好きなんじゃ……」


「お前バカかよ。俺が好きなのはお前だ!」


「バカって、な・によ。……えっ? えぇ~~~~~っ!!!!」


 お互いに大声を出し合ったので周りの人から変な目で見られたのが分かり、二人とも慌ててホールの中に駆けこんだ。


 それ以降、江角君とは言葉も交わさなかった。


 夕方発表された結果は残念ながら関東大会には届かなかったけど、みんなが力を出し切ったことに満足していた。


 夜に、良い子で茂山さんのお店で留守番(?)してくれていたロンと一緒に散歩に出た。


 蒸し暑い夜が続いていたけれど、今夜はなんだか風が吹いて涼しい。


 いつものベンチに腰掛けて星を見上げた。


 私が空を見ると必ずロンもつられて空を見る。


 そしてすぐにその顔を私に向ける。


「好きだって言われちゃった……」

 自分でもどうしていいか分からないから、ロンに告白した。


 だけどロンは何も言わず、私の顔をじっと見ていた。


 遠く空の上を夜間飛行の灯が点滅を繰り返しながら近づいて、そして遠ざかって行った。

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