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さようならロン。また会う日まで。  作者: 湖灯


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【那須で女子会②】

 なんだろうと思って私も土手の方を見ると、そこには背のスーッと伸びたスタイルのいい女性がスマートで逞しいシルエットの犬を散歩している姿が見えた。


 凛香さんとラッキーだ!


 私が声をかけたけど台風が過ぎた風が強くて届かない。

 するとロンが吠えてくれると、ラッキーが気づいてすぐに凛香さんに伝えてくれて振り向いたので手を振った。


「あー就職ねぇ。私も迷ったよ」

 カチャリとティーカップが鳴り、凛香さんは持っていたカップをソーサーに降ろした。


「凛香先輩は、どうしてお父さんの会社に入らずに、全然違う会社に入られたのですか?」

 以前から気になっていたことを聞いた。


 凛香さんは、すんなり親の会社に入るのもいいけれど、わたし的にはそれだと本当の社会を経験していない気がしたから入らなかったと教えてくれた。


「じゃあ、今の会社で社会経験をつけてから、お父さんの会社に?」


「そういう人もいるかもしれないけれど、私は嫌だな。 そういうの」


「そういうのって?」


「だって、それも結局はただのお嬢さまでしょう? しかも上手くできなかった新入社員時代の過去を他所の会社で過ごしてきて、いかにも私は他の会社でバリバリにやっていましたって言っているようにも見えるし」


 どこからどう見ても、お嬢さまにしか見えない見た目の凛香さんから、そんな言葉が出たのが可笑しくてつい笑ってしまった。


「なによ、その笑い」

「だって凛香さんは、誰がどう見てもお嬢さまにしか見えないのに」と私が言うと、凛香さんは、まんざらでもない顔をして「だから、よけいに嫌なのよ」と言って笑った。


「でもこれだけは言える。甲本くんのように絶対に曲げられない夢を追わないのなら、ちゃんとした給料をもらえる会社にとっとと就職することは重要だと思う!」


「お金ですか……」


「社会人として、お金は重要よ! 学生時代は学校の施設や機材も自由に使えたし、合宿に行くのもコンサート会場を借りるのも学校から補助が出ていたでしょう? 社会人になるとそれらは全部自費なんだよ。 千春はこれでオーボエは止めるの?」


「いえ、続けていきます」


「だったらなおさら、なにせオーボエは吹奏楽部いちの金食い虫なんだから。私も大学に入って親からお小遣いもらえなくなってから、なんでフルートにしなかったんだろうって後悔したわ」と凛香さんが言ったので、私は「それは困ります」と即座に言った。


(※クラリネットやサックスなどシングルリードのリードの寿命が2~3週間と言われるのに対して、オーボエのダブルリードは寿命が約30時間くらいと言われ極端に寿命が短く、クラリネット用のシングルリードが10本入りで2000円~3000円で購入できるのに対して、オーボエのリード1枚の価格が既に3000円くらいもする!それらにくらべてフルートはリードではなくマウスピースを使って音を出すので、演奏する際にリードなどの消耗品は発生しない)


「えっ、どうして?」

「そうなっていたら、木管大戦争で対戦できなくて、いまこうしていないかも」


「そっか……そうだよね。私、オーボエやっててよかった」

 凛香さんはそう言うと、青い空を見上げて言った。

 その目は青い空の向こうにいる、死んだミッキーを懐かしく思っているように見えた。

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