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中学最後の大会②

 会場に着くと、バックネット付近で里沙ちゃんがキャッチボールをしているのが目を引いた。

 体操服みたいな青色で、対戦相手のオレンジの派手なユニフォームに比べると大分ダサい我が校ソフトボール部のユニフォームだけど、健康的でスタイルの良い里沙ちゃんが着ると色気があって凄く映える。

 それがグラウンドの中心に立つのだから選手も応援する私たちも、自ずとテンションがあがるのは間違いない。

 広いグラウンドは甲子園の野球のような観客席もなく、学校関係者や選手の父兄たちがベンチ近くの大きな木陰に陣取っている。

 私はそこから少し離れた小さな木の木陰にシートを敷いた。

 海の傍なので浜風が吹いて心地好い。人間には過ごしやすい環境。

 でも目の前に置いた温度計はもう32℃に上がっている。

 体から汗を流すことのない犬にとって風が吹いて汗が気化して熱を奪うことにより涼しいと感じる恩恵はないから、常に気温を気にしてあげないといけない。

 立っている位置が人間に比べ大分低い犬は、特に外では炎天下で焼けた地面の影響も受けやすい。

 幸い今日のこの場所は日ごろから木陰なのか地面はひんやりしているので安心できる。

 茂山さんには悪いけど、里沙ちゃんに来たことと頑張るように伝えに行ってもらった。

 犬を連れているので、おとなしくしていないと、少しでも関係者や父兄に目を付けられたら“即退場!”ってことにもなりかねないし、折角ロンと同伴で応援に誘ってくれた里沙ちゃんや、連れてきてくれた茂山さんにも嫌な思いをさせてしまう。

 それより大変なのは私一人の間違った行動で、他に犬や猫を飼っている人にまで迷惑が及ぶことだ。

 若干15歳の少女だけど、ここではペットを飼う人間の代表として振る舞う意気込みなのだ。

 ロンがいつでもお水が飲めるようにお皿に冷えた水を入れてやると、まだ足を拭いている最中なのに水を飲みだした。

 それだけロンにとっては暑いということなんだろう。

 丁度ロンも水を飲み終わり、私も落ち着いたころに茂山さんが里沙ちゃんを連れてきてくれた。

 目の前に現れた健康的な足に、ダレるように伏せをしていたロンがシャキンと起き上がってお座りをした。

『やっぱりロンはエロだ』

「来てくれて有り難う!」

「ううん。呼んでくれて有り難う。試合頑張ってね!」

「うん頑張る!」

 そう言った里沙ちゃんは、何を思ったのかロンの前でポーズをとると

「ピッチピチのユニフォーム姿の里沙も好いでしょ!ロンは惚れ直したかな?」

 とロンに声を掛けると、なんと正直者のロンは「ワン!」とハッキリした声で応えた。

「人前で吠えちゃ駄目!」

 慌ててロンの口を押えて

「里沙!ロンを挑発しちゃ駄目よ」

 と軽く睨むと

「ゴメン!ゴメン!」

 と全然反省していないように謝り

「決勝の前には、ここで一緒にお昼ご飯食べようね!」

 と言って里沙ちゃんは走って戻って行った。

 里沙ちゃんの代わりに茂山さんが来てすわると、ロンはまたダルそうに伏せの姿勢に戻った。


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