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さようならロン。また会う日まで。  作者: 湖灯


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修学旅行⑩

 ホテルに着くとロビーで先生が出迎えてくれて「大丈夫か?」と声をかけてもらい、私は恥ずかしくて俯いたまま「大丈夫です」とだけ応えた。


 先生からは、あまり痛むようなら病院に連れて行くので我慢せず言うように言われ、江角君も私もキョトンとした顔をして話を聞いていた。


 だって、心の痛みに病院なんて先進的というか、大げさというか、優しすぎるというか……。


 いったい里沙ちゃんは、私が遅れる理由を先生になんと説明したのだろう?


 京都では心のケア(カウンセリング)は、ごく一般的になっているのかと思ったら、先生が去ったあと、その陰に隠れるように私たちを待っていた里沙ちゃんが


「先生には清水寺の石段で千春が転んだことにしておいたの」と悪戯がバレた悪さ坊主のように、バツが悪そうに言った。


 江角君が「くだらんことに付き合わすなよな!」と怒ったよなぶっきらぼうな声をかけて通り過ぎて行った。


 私は江角君のその態度が可愛く思えてしばらく浮いた目で追ったあと、今度はその目を座らせて里沙ちゃんのほうに向き直った。


 里沙ちゃんは私の目と合ったとたんに目を瞑り三十三間堂で見た観音様のように手を合わせて「千春。ごめん!!」と言った。


 里沙ちゃんらしい愛らしい可愛さにすぐに許してあげる。


 いいえ、もともと悪いのは私。


 修学旅行でロンに会えないことばかり考えていて、まだ普通に学校にいる時間帯からロンに会えないことを悲しんでいて、里沙ちゃんや周りの友達なんていないかのように自分の殻に閉じこもっていたのだから。


 あわただしくお風呂に入り、そのあとは大広間でお食事をした。


 京懐石というのかな?


 和風の懐石料理に男子たちが「今日は誰の法事だ?」「法事じゃない!校長先生の葬式!」なんて言って笑かせていた。


 食事が終わって皆と、お土産物売り場やゲームコーナーを覗いていたとき里沙ちゃんに袖を引かれた。何の用だろう?私まだ殻に閉じこもっている態度なのかしら……と思っていたら、お風呂に誘われた。


 宿に帰ってきた時間が他の人よりも遅かったので、ただでさえ時間的に余裕にないお風呂の時間がさらに短くなった。

 そしてそれは、早く帰ったのに私をロビーでずっと待っていた里沙ちゃんも同じだった。


 私たちは二人だけでお風呂に行った。


 さっきまで入った時は大混乱だったお風呂も、今は数えるほどしか人がいなくてゆったり入れる。


 きれいに体と髪を洗って湯船につかる。


 湯船から窓越しに月の灯りがさす。


 ぼーっと、その月に見とれていると、里沙ちゃんがスーッと横に来て「ロンのこと?」と、覗き込むように聞いてきた。


「ううん。月がきれいだと思って」


「あら。ほんと」


 少し小母さんチックな里沙ちゃんの反応が可笑しくて笑うと、里沙ちゃんはすぐに気がついて「なによ、その意味深な笑顔は」と、つっこんできた。


 私は里沙ちゃんの問いには答えずに「今日はごめんなさい」と自分の殻に閉じこもっていたことを謝った。

 里沙ちゃんは私の話を最初の言葉から最後の言葉まで一字一句逃さないほど真剣に聞いてくれたあと秘密を打ち明けてくれた。

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