修学旅行⑤
「おいっ」
まだハッキリしていない頭に、男の日との声。
ぶっきらぼうな、その呼び方が兄に似ていて思わず「兄ちゃん?」と呟いた。
「んっんん」と咳払いが聞こえ、そのあと「もう着くぞ。準備しろ」と言う声に「うん」と素直に応えて棚に上げた荷物を取るために起き上がって驚いた。
「えっ江角君!?なんでここに?!」
江角君は少し怒った口調で言った。
「お前が、空いていた俺の隣の席に勝手に座って眠り込んだだけだろ。俺のせいにするなよな!」
私は、この席が江角君の隣であることさえ分からないくらいボーっとしていて、そして寝てしまったのだ。
「ごめんなさい」と謝ると「別に俺の席じゃねーし」と無視された。
後ろで里沙ちゃんがクククッって笑いを堪えている声「もーっ!里沙!知っていたのなら教えてよね!」
京都駅に着くと班ごとに分かれて自由行動。
自由行動と言っても各々が勝手な行動をしないように事前に班ごとの行程表を提出し、そのスケジュールに沿った行動をするのが決まり。
行程表は自分たちと、先生、それにこれからお世話になるタクシーの運転手さんに同じものが配られる。
私たちの班は八人なのでタクシー二台で行動をする。一号車は男子、二号車が女子に分かれた。
ちなみに一号車の助手席には班長の江角君。そして二号車の助手席には副班長の里沙ちゃんが座る。
まず私たちが目指したのは霊山博物館。
ここは幕末に活躍した人たちにまつわる資料が沢山あるらしい。
リクエストしたのは里沙ちゃんだった。





