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修学旅行③

 修学旅行は、7時半までに駅に集合して8時出発だから家を7時には出ないといけない。

 6時に起きれば、準備の最終確認も朝シャンも余裕でできるけど、その日私は4時半に起きてロンを散歩に連れ出した。

 修学旅行先の町が凄く遠い所にあることや、里沙ちゃんも一緒に行くこと。

 旅行先から必ず連絡をするから嫌がらないでちゃん電話にでること。

 お土産のリクエスト。

 お母さんの言うことを聞いておとなしくする約束。

 大人になって車を運転できるようになったら一緒に遊びに行く約束……。

 ロンに寂しい思いをさせて、私だけ楽しい修学旅行なんてできるはずがない。

 散歩をしているうちに、そんな思いに押しつぶされて泣きながら家に戻った。

 時計を見ると時間はまだ六時十分前だったので、シャワーを浴びた。

 髪を乾かして洗面所から出るとロンが凄い勢いで飛び掛かって来て、そのまま押し倒された。

「なっ・なにっ!??」

 何が起こったのか分からないまま、仰向けに倒れた私に馬乗りになるロンは、いつものように……いや、いつもよりもっと激しく私の顔を舐め回す。

 突然で心の準備も出来ていなかった私は、まるでロンの成すがまま。

 足をバタバタさせて助けを乞うけど、お父さんはトイレ。

 お母さんは食事の支度中で、直ぐには来てくれなかった。

 呼吸困難で頭がボーっとして失神しそうになった頃漸くお母さんが駆けつけてくれたけど、ロンは狂ったように舐め回して私から離れようとしない。

 トイレから出たお父さんが来て、やっとロンは私から離れてくれたけど鏡を見ると折角綺麗に洗った髪がクシャクシャ。

 肩にはロンの前足のツメで引搔かれた傷跡が赤く残っていて、修学旅行のために新調した下着にも穴が開いていた。

「もー!何てことするのよ!!」

 今からシャンプーし直す時間があるかどうかギリギリ。

 それにもう一度シャンプーするのは髪が痛みそうな気もする。

 お母さんに借りたヘアスプレーを使って髪を整えようとしたら、使い過ぎて髪がベタベタになってしまい思わずロンに八つ当たり。

 もーっ完全に頭に来た。

 心配して損をした気分。

 やっぱりロンは、ただのエロ犬だ!

 君の事なんて知るもんか!里沙ちゃんたちと修学旅行を満喫して来るんだから!

 それでも、制服に着替えてスーツケースを手に持ち玄関に立つと少しだけ寂しい気がした。

 ロンは珍しく私に向かって吠えて抱きつこうとしてくる。

 全然反省していない!

 少しでも寂しい気持ちがした私が馬鹿みたい。

 ……。

 でも……。

 でもね。

 本当は私知っているよ。

 そうやって自分だけ悪者になって、私が心配しないようにしてくれていること。

 私は制服がくちゃくちゃになるのも構わずにロンを受け入れた。

 案の定、ロンは襲い掛からずに私の頬に甘えるように顔を押し付けてきた。

 ありがとう心配してくれて。

 私もロンに心配させないように、いっぱい友達と楽しんでくるね!

 ロンにもお土産持って帰るね。

 お土産は、私のとびっきりの笑顔で好いかしら?

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