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美樹さんの秘密⑧

 散歩から帰ると、兄は肩掛けバックの中から一冊のノートを取り出した。

 何度も一緒にロンの料理を作ったあのレシピの書かれたノートだった。

 手に取って、ロンにもみせると美樹さんの臭いがするのかクンクンといっぱい臭いを嗅いでいた。

 手を洗い歯磨きをして自分の部屋に戻ってノートを開くと、懐かしいメニューが沢山あった。

 初めてスキー場で知った手作りの料理。

 初めて美樹さんと作った豆腐ハンバーグ。

 初めて私一人で作った野菜おじや。

 美樹さんと初めて会った花火大会の夜、私には綺麗な人という印象しかなかったけど、そのときの美樹さんは私のこともロンのことも兄から聞いていて実際に合って、見た、私たちをどう思ったのだろう。

 頭の上に犬の頭を乗せ、真剣な表情で竹串を持つ変な少女と、間抜けそうな犬……。

 体育祭のとき、私が嫉妬してイライラしていたのって美樹さんには丸分かりだったんだろうな。

 思い返すと恥ずかしい。

 寝る前に、窓の向こうを見た。

 南の方角。

 いつかまた会えたなら、美樹さんに自慢できる二人でいたい。

 そう思いながら開け放していた窓を閉めた。

 湿り気を帯びた未だ冷たい春の空気の中には、ほのかに桜の花の香りが混じっていた。

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