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千春の初恋⑤

 転んだ1位の選手を上手く飛び越えたと思ったけど、着地した時に1位の選手の手から抜けたバトンを踏みそうになり、それをよけた拍子に私も転んでしまった。

 転ぶ拍子に私の手からバトンが抜けて宙に舞い観客席の中に消える。

 呆然と立ち尽くす私の傍で、1位を走っていた子が起き上がりバトンを拾い直して走り出す。

 3位の足音も迫っていた。

「里沙ちゃん御免……」

 多くの声援が、まるで空耳の様にしか聞こえなかった。

 そのなかで急に目の前に、空耳とは全く違うざわめきが聞こえた。

 何だろうと顔を向けたその場所から勢いよく飛び出してきたのはロン!

 しかも、その口に咥えているのは私のバトン!

「有難う!ロン!!」

 私はロンからバトンを受け取ろうと手を伸ばした。

 だけど、ロンはその手をすり抜けて走って行く。

 慌てて私はロンを追いかける。

 必死で……。

 ロンが1位の選手を抜いて行ったので、私も抜いて行く。

 ロンは『駆けっこ』と勘違いしているのか一向に止まる気配がない。

 完全に遊んでいる?!

「マテ!」

 自分でも意識していなかった言葉が急に口から出た。

 ロンはくるっと反転し私のほうに向きなおりお座りして止まった。

 走り寄った私はロンと顔を合わせるように腰を下ろしてロンの咥えていたバトンを受け取り頭を優しく撫でた。

 そして一緒にゴールに向かって走った。

 私はロンを見ながら、ロンは私を見上げながら一緒にゴールした。

 判定がどうなるのかなんて気にもならい。

 ただ……。

 ただ、ロンと一緒にゴールできたことが何より嬉しかった。

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