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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第1章・運命が変わる前触れ
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脱走するあいつ・言葉の意味

病室に行くと、ヤツはいなかった。

「えっ!?なんで?」

「……うそ、だろ……!?」

ベッドはもぬけの殻でシーツが無くなっている。しかも、窓が全開だ。ここは三階。まさかと思い、窓に駆け寄るとシーツを裂いて作ったらしいお手製ロープがおろされていた。

「くそっ……!あいつ、なんでっ……?」

……そうだ。アイツは俺を一回殴ってる。そんなヤツが素直におとなしくしてるわけがなかったんだ。

「すいません!ここから降りてきたヤツ見ませんでしたか?」

俺は窓から散歩している患者さんに聞く。

「ああ、見た見た。……でも、俺と違って今にも倒れるんじゃないかってくらいフラフラだったよ。今から追いかければ追いつくんじゃないかな」

「ありがとうございます!」

俺は窓から顔を引っ込め、頭を抱えた。

「ちっ……!なんでだ!?アイツに脱走する理由があったか?」

「ウィンストン、早く追いかけないと!下手したら彼、死んじゃうかもしれない!」

ロナさんの言葉で俺のスイッチが入った。

「ロナさん!俺、アイツ連れ戻してきます!もし警察が来たら急用で出かけたって言っといてください!」

俺はまず真っ先に医局に向かった。救急箱とあるものを持ってくるためだ。


彼が向かった場所、それは先日兵器の暴走事故のあったアリワナ兵器研究所だった。

ここに来るまでに何度も転び、傷口がそのたびに開いていく。走ったために肺が悲鳴を上げていた。

(やっと……ここまで来たんだ……)

ふらふらとした足取りで入り口に向かう。が、入り口には警備員が二人立っていた。

「君、ここは立ち入り禁止だぞ。今すぐ立ち去りなさい」

一人の警備員はそう言った。

「それは……できません……。俺は……ここに来なければいけないんです……」

「それでもだめだ!すぐに帰りなさい!」

「だめ、なんですね……」

彼はそうつぶやくとけが人とは思えぬ早さで警備員の後ろに回り込んだ。首の後ろに手刀を落とし、失神させた。呆気にとられているもう一人の方も失神させようとさっきと同様に後ろに回り込む。が、動きを読まれ、かわされてしまった。

「……君は、なにをしたいんだ……?」

「……ごめんなさい……。それは、言えないんです……」

彼はそう言いながら残るもう一人の警備員と対峙している。もうそれほど早く動くことはできない。むしろ、彼の体力は先ほどまでですでに底をついていた。

「どうしても……言えないんだね……。それなら、仕方ない……。まだ危険なものが残っているかもしれない……。だから、気をつけて行ってきなさい」

もう一人の警備員は彼をなぜか通してくれた。一生懸命頭を下げて、そして先に進んでいく。



「げほっ!ごほごほっ!……かはっ!」

彼は膝を付き、喉からあがってきた血の固まりを吐き出した。

今いる場所は、手術室にも似ているようだ。だが、ここは研究所。だとすると、やはり……。

「俺は……ここで……」

彼は床に散らばっているメスを一つ拾う。

刃に触れると指が切れた。キレ味は落ちていないらしい。

一瞬悲しげな笑みを浮かべ、それをポケットの中につっこんだ。

さらに奥に進む。彼の意図が見えないまま……

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