完全なトラウマ
先生が、わざわざ部屋を借りてくれた。
俺はここですべてを伝えるつもりだ。
「……」
「やっぱ、無理か?」
このことは言わなくてはいけない。
これは俺の記憶だけど、俺が命を奪ってしまった人たちの記憶でもある。
「俺の意識があったのは……研究者たちを殺害し始めた頃からです……。俺の体は……何の武器も持っていませんでした……。体一つだけです……」
「何も武器を持ってないでどうやって人を殺せるんだ?」
「……」
驚愕の早さで俺の腕は研究者たちの胸を貫いていく……
「……!」
気持ち、悪い……。なんで……何で俺は……!
「うっ……」
やばい、吐きそうだ……。でも……でも、言わなくちゃ……。
「バカ!無理すんなって言ったじゃんか!思い出して、気分が悪くなったんだろ?……いいよ。言わなくて……」
「で……、でも……」
「確かに、俺はきついことだってわかっててお前に聞いたよ。お前だって、決心して俺に伝えようとした。でもな、俺は強要してるわけじゃない。だから……頼むから、無理するな」
先生はそういってくれた。でも、俺は今言わなくてはいけない、そんな気がする……。
「だめです……。それじゃ……、俺の気が済まない……」
「何で……そんな、お前……」
「先生……心配してくれていることは俺、ちゃんとわかってるんです……。でも、言わせてください……。たとえ気分が悪くても、このことは伝えなきゃいけないんです……。先延ばしにしたら、きっと言えなくなってしまう……」
「……わかった。でもその前に、少しでいいから休め。顔色が悪すぎる。なんか、お茶でも持ってきてやるから、それ飲んで気分変えるといいよ」
ウィン先生に俺の熱意は伝わったらしい。
「はぁ……」
それにしても、記憶は完全にトラウマ化してしまったようだ。
思い出すだけで吐き気がする……。
これはやばい。
「ちゃんと休んでるかー?」
先生が紙コップを持って戻ってきた。
「どうでしょう……?」
「ま、熱~いお湯で入れたスゴ~い濃い緑茶飲んで、気分をリラックスさせてくれ」
……確かに、すごい濃い。
(絵の具溶かしたとかじゃないよね?)
一応確かめてからお茶を飲んだ。
「あっつ!……ほんとに熱いですよ、これ」
「さっき言っただろ?それに、熱けりゃ飲むのに時間かかるから、その間に気分が落ち着くだろうし」
「まあ……、確かに」
「ゆっくり飲めよ。俺はいつでもいいから」
これで少しは休めただろうか……?
「先生。俺、話します」
「……おう」
俺は深呼吸して、言いたいことを頭の中でまとめる。
やっぱり、気持ち悪くなってきた……。でも我慢だ……。
「俺が、兵器だったときの能力は……全身を強化する……能力でした……」
「……」
「俺は、研究者たちの……体を……自分の腕で貫いて……」
やばい……、吐きそう……。
「殺し、ました……。俺の体は……別の何かに操られていて……どうすることも、できなかった……!どれだけ抵抗しても、止まらないんです……!すべてが終わってから……俺は体を、取り戻しました……でも、もう……遅すぎた……!ほかのことは、わかりません……。そこだけが……鮮明に……残ってるんです……!」
……ダメだ、もう無理……!
俺は先生の承諾も無しに部屋を出ていった。
たぶん、先生ならわかってくれる、と思いたい……。




