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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第8章・トラウマ、そして最大の事件
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完全なトラウマ

先生が、わざわざ部屋を借りてくれた。

俺はここですべてを伝えるつもりだ。

「……」

「やっぱ、無理か?」

このことは言わなくてはいけない。

これは俺の記憶だけど、俺が命を奪ってしまった人たちの記憶でもある。

「俺の意識があったのは……研究者たちを殺害し始めた頃からです……。俺の体は……何の武器も持っていませんでした……。体一つだけです……」

「何も武器を持ってないでどうやって人を殺せるんだ?」

「……」


驚愕の早さで俺の腕は研究者たちの胸を貫いていく……


「……!」

気持ち、悪い……。なんで……何で俺は……!

「うっ……」

やばい、吐きそうだ……。でも……でも、言わなくちゃ……。

「バカ!無理すんなって言ったじゃんか!思い出して、気分が悪くなったんだろ?……いいよ。言わなくて……」

「で……、でも……」

「確かに、俺はきついことだってわかっててお前に聞いたよ。お前だって、決心して俺に伝えようとした。でもな、俺は強要してるわけじゃない。だから……頼むから、無理するな」

先生はそういってくれた。でも、俺は今言わなくてはいけない、そんな気がする……。

「だめです……。それじゃ……、俺の気が済まない……」

「何で……そんな、お前……」

「先生……心配してくれていることは俺、ちゃんとわかってるんです……。でも、言わせてください……。たとえ気分が悪くても、このことは伝えなきゃいけないんです……。先延ばしにしたら、きっと言えなくなってしまう……」

「……わかった。でもその前に、少しでいいから休め。顔色が悪すぎる。なんか、お茶でも持ってきてやるから、それ飲んで気分変えるといいよ」

ウィン先生に俺の熱意は伝わったらしい。

「はぁ……」

それにしても、記憶は完全にトラウマ化してしまったようだ。

思い出すだけで吐き気がする……。

これはやばい。

「ちゃんと休んでるかー?」

先生が紙コップを持って戻ってきた。

「どうでしょう……?」

「ま、熱~いお湯で入れたスゴ~い濃い緑茶飲んで、気分をリラックスさせてくれ」

……確かに、すごい濃い。

(絵の具溶かしたとかじゃないよね?)

一応確かめてからお茶を飲んだ。

「あっつ!……ほんとに熱いですよ、これ」

「さっき言っただろ?それに、熱けりゃ飲むのに時間かかるから、その間に気分が落ち着くだろうし」

「まあ……、確かに」

「ゆっくり飲めよ。俺はいつでもいいから」

これで少しは休めただろうか……?


「先生。俺、話します」

「……おう」

俺は深呼吸して、言いたいことを頭の中でまとめる。

やっぱり、気持ち悪くなってきた……。でも我慢だ……。

「俺が、兵器だったときの能力は……全身を強化する……能力でした……」

「……」

「俺は、研究者たちの……体を……自分の腕で貫いて……」

やばい……、吐きそう……。

「殺し、ました……。俺の体は……別の何かに操られていて……どうすることも、できなかった……!どれだけ抵抗しても、止まらないんです……!すべてが終わってから……俺は体を、取り戻しました……でも、もう……遅すぎた……!ほかのことは、わかりません……。そこだけが……鮮明に……残ってるんです……!」

……ダメだ、もう無理……!


俺は先生の承諾も無しに部屋を出ていった。

たぶん、先生ならわかってくれる、と思いたい……。

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