意識していなかった罪
あの日……あの男が自殺を図った日以来、ウィン先生の様子がおかしかった。
ウィン先生がおかしい場合、だいたい寝坊せずに病院にやってくる。そして最近これが多い。
「なあ」
ウィン先生は急に聞いた。
「はい?」
「お前、チップが体の中にあっただろ?それって、自分の意識があるときってどうなってんだ?」
「えっ?どうなってるって……わからないですよそんなこと」
「そうか、そうだよな。あとさ、お前は……あれなわけだけど」
ウィン先生は目を少しずつ逸らしていく。
この話の流れで行くと、たぶん……。
「……兵器、ですか」
「ああ。……辛い記憶だってことはわかってるんだ。でも……まだこのことは終わってない」
俺はあの日、警察から帰ってきた先生にソレルさんがまとめてくれた資料を見せた。
……それからだったかもしれない。ウィン先生の様子が変わったのは……。
「……まだ、あと7人もいるんだ……。お前みたいに、欲しくもない能力で人殺しをさせられる、そんな少年少女たちが……」
「わかってます……。それで、何が聞きたいんですか?」
「……お前は、兵器に意識を乗っ取られていた時、意識が少しあったんだよな?」
「はい」
「攻撃方法はわかるか?」
攻撃方法……?
蘇る記憶と、思い出したくもない手に残る感触。
「うっ……!」
……気持ち、悪い……なんか……なんかだめだ……。覚えてるんだ、覚えてるんだけど……。
「マサヤ?大丈夫か!?」
「は、はい……。でも」
ぼろぼろの体と血で真っ赤に汚れた手……。自分に主導権が戻ってきたとき、その姿をしていた。
「やっぱ、きついか……。悪かった。さすがにそんなこと言わせられねえよ……」
「すいません……」
……俺は、自分が怖い。
今は病院に入院していて、周りにいろんな人がいるからそれほど思い詰めたりはしない。
でも、一人になるととてつもなく不安になる時があるんだ。
最近、また自分の犯してしまったことについて考えてしまう。誰も、俺を責めはしない。でも、それだからこそ……俺は、余計に考えてしまうんだ。
もしかしたら、おかしいのは俺のほうなのかもしれない……。
「まずったぁ……」
俺が一人でナースステーションに入り浸っているとロナさんが声をかけてきた。
「ウィンストン、どうしたの?」
「ちょっと……マサヤにまずいこと聞いちゃったんですよ……」
「何を?」
「俺も、ちょっと焦ってたんだと思うんです。マサヤに関連する事件についてソレルさんに聞いて、まだ解明されていない部分を俺なりに調べようと思ったんです。とりあえず、本人から聞けることをと思って、一応大丈夫かどうか確かめてから聞いたんですけど……」
「それで大失敗ってわけね。何を聞いたの?」
「それは、言えません。でも、マサヤに精神的ダメージを与えてしまったことは確かです」
「……スギサキくんてさ、気丈に振る舞ってるけど、やっぱり心に大きな傷があるのよ……」
確かに俺は考え無しだった。
「ホント、俺……あいつに悪いことしちゃったな……。なんか、少しでも気晴らしになるようなことないかな……?」
「だったら、お友達に頼みましょうよ。あの子たちが一緒ならスギサキくんも、少しは気持ちが楽になると思うよ」
やっぱりロナさんは頼りになる。
よし、早速三人に頼んでみるか。




