面会と事実
「あれ?スギサキくんは?」
マサヤを見送ったすぐ後にロナさんが部屋に入ってきた。
部屋から出ようとしていた俺はソレルさんが言っていたことを思い出した。
「あ、そうだ。ロナさん、ユキちゃんって今どこにいますか?」
「あたしが先に聞いたのに……。まあ、いいわ。ユキちゃんならナースステーションにいるわ。カイくんと話してると思う」
「そうですか、ありがとうございます」
「で、スギサキくんは?」
「マサヤなら警察に行きましたよ。少し聞きたいことがあるらしいです」
「へー。そうだったんだ。スギサキくんて、思ったよりも行動派よね」
そう言われると……そうだな。意外と体力もあるし。
「あ、そうそう。ユキちゃんに伝えないといけないんだ」
さっき思い出したのにまた忘れるとこだった。
「なになに?なんか事件の香りとかしそう?」
マサヤの近くにいれば事件はすぐにやってくると思うけど……。
「昨日の立てこもり犯が自殺を図ったらしいです」
「自殺?」
「はい。それで、当事者っていうのも変ですけど、関係のあるマサヤとユキちゃんに伝えといてくれって警察の人に言われて」
ロナさんは腕を組むと頷いた。
「ああ、なるほど。それで伝えたらスギサキくんが行っちゃったわけだ」
「そーゆーことです」
「あんた、スギサキくんによく許可だしたわね。あんなに許可だすの嫌がってたのに」
「それは……状況によるんです。もう、あいつを狙ったヤツは捕まったし。むしろ捕まったからこそ今自殺未遂騒動が起こってるわけだし」
「ユキちゃんもここにいるし」
……ユキちゃんには俺よりもロナさんからの方がいいかも知れないな。それに……気になることができた。
「あ、すいません。ユキちゃんにはロナさんから伝えといてもらえませんか。俺、ちょっと急用思い出しちゃって」
「え、いいけど。どうしたの?」
「まあ、ちょっと、警察に伝えたいこと思い出して」
俺はロナさんにユキちゃんへの伝言を頼み、徒歩で警察に向かう。
チャリも貸しちゃったことだし、たまにはいいか。
警察署に行って、受付の人にかくかくしかじか説明する。
「お呼び出しいたしますので少々お待ちください」
少しの間待っていると、ソレルさんはすぐに来てくれた。
「スギサキくん。怪我は大丈夫なのかい?」
「ソレルさん。はい、大丈夫です。それより、あの男が自殺を図ったって……」
「ああ、ジャーナル先生に聞いたんだね。そうなんだ」
「何で、自殺なんかする必要があるんでしょうか?」
「それが、理由を聞いても黙ったままなんだ。話してみるかい?まあ、話すことなんてないだろうけどね」
ソレルさんはそう言いながらもその男の所に連れていってくれた。
「僕はここにいるからね、用が済んだら声をかけて」
部屋に入ると、首に包帯を巻いた男との間に透明な壁がある。
よくテレビで見る風景だ。
「MS……いや、杉崎雅也。なぜ来た」
意外にも、男の方から話しかけてきた。
「俺は……お前たちが何をしたいのかが知りたい。俺たちを……人を兵器に改造することって……人権の侵害とか、そういうもんじゃないのか」
「お前に言うことなど無い。言えばお前は俺たちを否定する」
「否定ならずっとしてる。お前たちなんか、俺は認めない。お前たちのせいで、俺がどんな気持ちだったか……お前たちにわかるわけない」
「……よく言うな。人殺しが」
……そんなこと……俺が一番よくわかってる。誰がどんなに俺のせいじゃないと言っても、体が、記憶が、俺の犯した罪を覚えてるんだ。
「……もういい。もう一個だけ聞く。何で死のうとしたんだ」
「捕まったからだよ。捕まってしまったらもう活動はできない」
活動……。俺や、由季のように人を道具みたいに扱う……。
「……帰る」
……なんか、無駄なことをした気がする。
俺は何が聞きたくてこいつの所に来たんだろう。
ソレルさんに話が終わったことを告げ、帰ろうとすると引き留められた。
「あ、スギサキくん」
「はい」
「……実は、君たちの民族であるナハネ族についてわかったことがあるんだけど……」
ソレルさんはとても困ったような顔をしている。
ナハネ族について……。これは聞かないわけにはいかない。
「聞いてくれるかい?」
「はい。是非、お願いします」




