かみ合わない内容
1278年、……今から七年前だ。
俺、小さい頃の記憶が曖昧で、その頃のこと……ほとんど覚えてないや……。
もしかしたら荻野さんに会ったことがあるのかもしれないけど……。
でも、この本の著者の荻野さんもやっぱりナハネ族だった。
「はあ……」
過去に自分の民族でこんな酷い事件があったのに……そのことすら覚えてないなんて……なんだか悲しい……。
何で覚えていないんだろう……。
「あ、マサヤ。どうだった?収穫あったか?」
俺は談話室で本を読んでいた。なので、ニコル先生が歩いてくるところが見えた。
先生は俺を発見すると近づいてくる。
「本借りてきたのか。へー。なんかすげー内容の重そうな本だな……。『人類の発展・兵器編』だって」
ん……?あれ??なんか全然気にしてなかったけど……不自然じゃないか?
「先生、さっきなんて言いました?本の題名」
「え?『人類の発展・兵器編』だけど」
やっぱり不自然だ。この本には人類の発展については全く触れていない。
「ちょっと読んでみてください!題名と内容がかみ合っていないんです!」
俺は先生に本を渡した。
「ん?……ああ、本当だ。俺が題を付けるとすれば『ナハネ族・襲撃の真実』だな」
「ですよね?でも何でだろう……?」
「たぶんカムフラージュじゃないか?この本を書いた人はばれないようにこの本を出版して、真実を知ってもらおうと思ったんだ」
「真実……か」
「俺もすっかり忘れてたんだけど、そういえばあったなあ……」
「何がですか?」
「俺が高校生くらいの時だったかな……?詳しい民族名はさすがに覚えてないけど、確かに少数民族虐殺事件はあった」
「高校生……何年前ですか?」
「えーっと、十年くらい前かな」
十年前……そしてこの本が書かれたのは七年前だ。
荻野さんは三年間のうちに奥さんを亡くし、決死の覚悟で本拠地に潜入した。そして二人の子供を助けて、重傷を負い……消息を絶った。
「あ、そうだ。マサヤ今いくつだ?」
「え?……17です」
しまった。自分の年齢を一瞬思い出せなかった。
「と、なるとマサヤはそのとき7歳だな。覚えて……」
「ないです」
「そうか」
「ただでさえ小さいときの記憶は曖昧なんです。……もしかしたら俺はこの人に会ってるかもしれない。でも……覚えてないんです」
なんか、やっぱり覚えてないって悲しいことだな……。
「7歳なら多少は記憶に残っててもいいはずだけどな?結構衝撃的な出来事だし。……記憶障害?」
「違います」
「ほんとに?」
そう何度も聞かれると心配になる。
「そう言われても……わかんないです。……でも、昔のことを思い出すのって大変じゃないですか」
「まあそうだけどな」
とりあえず先生は納得してくれた。
「人の記憶なんて時間が経てば薄れるもんだしな」
ん?でも、俺の記憶はそれとは違う気がする。全体的にもやもやしたものが……俺の記憶を包んでいる感じがする。
「先生。俺、小さい頃のことは断片的にしか覚えてないんです。だから……由季と逃げていたことは思い出せるのに、その前や後のことは思い出せないんです」
「ユキ?」
「あ、妹です。双子なんですけど」
「妹か。いいなあ。身近に女の子がいたのか」
ニコル先生は由季に想いを馳せ始めてしまったようだ。
俺たち……もう少し真面目な話をしていたはずなんだけどな?




