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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第5章・知らなかった現実、芽生える友情
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かみ合わない内容

1278年、……今から七年前だ。

俺、小さい頃の記憶が曖昧で、その頃のこと……ほとんど覚えてないや……。

もしかしたら荻野さんに会ったことがあるのかもしれないけど……。


でも、この本の著者の荻野さんもやっぱりナハネ族だった。

「はあ……」

過去に自分の民族でこんな酷い事件があったのに……そのことすら覚えてないなんて……なんだか悲しい……。

何で覚えていないんだろう……。


「あ、マサヤ。どうだった?収穫あったか?」

俺は談話室で本を読んでいた。なので、ニコル先生が歩いてくるところが見えた。

先生は俺を発見すると近づいてくる。

「本借りてきたのか。へー。なんかすげー内容の重そうな本だな……。『人類の発展・兵器編』だって」

ん……?あれ??なんか全然気にしてなかったけど……不自然じゃないか?

「先生、さっきなんて言いました?本の題名」

「え?『人類の発展・兵器編』だけど」

やっぱり不自然だ。この本には人類の発展については全く触れていない。

「ちょっと読んでみてください!題名と内容がかみ合っていないんです!」

俺は先生に本を渡した。

「ん?……ああ、本当だ。俺が題を付けるとすれば『ナハネ族・襲撃の真実』だな」

「ですよね?でも何でだろう……?」

「たぶんカムフラージュじゃないか?この本を書いた人はばれないようにこの本を出版して、真実を知ってもらおうと思ったんだ」

「真実……か」

「俺もすっかり忘れてたんだけど、そういえばあったなあ……」

「何がですか?」

「俺が高校生くらいの時だったかな……?詳しい民族名はさすがに覚えてないけど、確かに少数民族虐殺事件はあった」

「高校生……何年前ですか?」

「えーっと、十年くらい前かな」

十年前……そしてこの本が書かれたのは七年前だ。

荻野さんは三年間のうちに奥さんを亡くし、決死の覚悟で本拠地に潜入した。そして二人の子供を助けて、重傷を負い……消息を絶った。

「あ、そうだ。マサヤ今いくつだ?」

「え?……17です」

しまった。自分の年齢を一瞬思い出せなかった。

「と、なるとマサヤはそのとき7歳だな。覚えて……」

「ないです」

「そうか」

「ただでさえ小さいときの記憶は曖昧なんです。……もしかしたら俺はこの人に会ってるかもしれない。でも……覚えてないんです」

なんか、やっぱり覚えてないって悲しいことだな……。

「7歳なら多少は記憶に残っててもいいはずだけどな?結構衝撃的な出来事だし。……記憶障害?」

「違います」

「ほんとに?」

そう何度も聞かれると心配になる。

「そう言われても……わかんないです。……でも、昔のことを思い出すのって大変じゃないですか」

「まあそうだけどな」

とりあえず先生は納得してくれた。

「人の記憶なんて時間が経てば薄れるもんだしな」

ん?でも、俺の記憶はそれとは違う気がする。全体的にもやもやしたものが……俺の記憶を包んでいる感じがする。

「先生。俺、小さい頃のことは断片的にしか覚えてないんです。だから……由季と逃げていたことは思い出せるのに、その前や後のことは思い出せないんです」

「ユキ?」

「あ、妹です。双子なんですけど」

「妹か。いいなあ。身近に女の子がいたのか」

ニコル先生は由季に想いを馳せ始めてしまったようだ。

俺たち……もう少し真面目な話をしていたはずなんだけどな?

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