部長の威厳
俺はニコルにマサヤから聞いたことを俺の考えも交えて詳しく話した。
「アイツ……何で一番にお前に話したんだろうな。俺だって、ロナだって、部長だっていたのに」
「さあ、何でだろう……?」
「そっか……多分、お前はアイツに信頼されてるんだよ。俺なんか、マサヤをいじって遊んでたから」
「そうか……」
会話がなくなり、沈黙が部屋を支配する。
「マサヤ……大丈夫かなぁ。ちょっと俺、見てくる」
なんだかじっとしていられなくなって、俺は立ち上がった。
「あ、おい。大丈夫か?一応お前けが人なんだからな」
「ああ。わかってる」
マサヤの病室の前までやってきた。だが、そこには部長がいた。この先に進むことは出来ない。そんな感じがした。
「ウィンストン……大丈夫か?」
「はい……。あの、ご迷惑かけてすみませんでした!」
「いやいや、いいんだよ。それより……君はスギサキ君から何か重要なことを聞かなかったか?」
「重要なこと?俺が聞いたのは、マサヤの事情と最近見た夢についてだけです」
「そうか……。じゃあもうひとつ」
「はい」
部長は真剣な声で言う。
「ウィンストン、……君は、彼を助けたいと、心から思うかい?」
「当たり前じゃないですか。たとえ、アイツの過去になにがあったとしても、俺はマサヤの味方です。」
俺の言葉を聞いて、部長は微笑んだ。
「……やっぱり、スギサキ君が信頼しただけはあるな。とても君らしい」
「……どういうことですか?」
「スギサキ君は君を信頼し、君に言えることのすべてを話したはずだ。しかし、話したことで君が巻き込まれ、彼はそのことの負い目で苦しむかもしれない。でも君は彼を見捨てることは絶対にしない。むしろ、力になってやりたいと、そう思ってるはずだ。ここまではわかるかな?」
いや、俺には全く理解不能だ。
「わからなければ考えてみるといい。抽象的だけどすぐにわかるはずだよ」
そのあと、俺は部長に促され、帰ってしまうことにした。
頭も瞼も出血量の割に軽傷だったし、気を失ってたのだってただ脳震盪を起こしてただけだった。
でも、マサヤが心配ではあるが、仮にも俺はけが人だ。前日までインフルエンザで休んでたのもある。
一回家に帰り、部長の問いを考えてみることにした。
「うっ……ううぅ……」
痛い。なんか、ヤバい感じがする。
どくどくと脈打つように傷が痛む。俺の意識はあるのか、それともないのか。それすらもわからない。ただ傷の痛みだけが今生きていることの証になっている。
この痛みすら感じなくなったら、俺は死ぬのか……。
(俺……もう少し、生きていたいよ……。謝らなきゃ……いけないのに……)
ごめんなさい……俺が巻き込んでしまったばかりに……ウィン先生まで標的になってしまいました……。
今ここで謝っていても無駄なことはわかっている。でも、今しかない、そんな気がした。




