ショッピングモール
放課後、3人でショピングモールに来た。
デカすぎて、どこに何のお店があるのか全く分からない。
「要は店の場所知ってるのか?」
「いや、知らね」
「え?」
「適当に歩いてたら、その内見つかるだろ」
そう言って要は辺りを見回しながら、1人で歩きだした。
「本当、適当だな……」
「まっ、別に急いでないからいいじゃん。適当に見て回ろ」
朝陽も興味津々に辺りの店を見ながら、要の後に続いた。
「ちょっと待てよ!」
俺も急いで2人の後を追った。
少し歩くと目当ての店を見つけた。
要はピアッサーを手に取ると、俺達の方を向いた。
「お前らも買うの?」
「お、おぉ……買うに決まってんだろ」
口ではそう言うが、やっぱり怖い。
モテるため、モテるため、モテるため。
俺はグッと拳を握りしめた。
「湊……お前、ビビってんだろ?」
要はニヤニヤしながらも、俺の様子をじっと見ている。
「ビビってない!」
「そんな無理しなくても……」
横から朝陽の呆れたような声が聞こえる。
「無理してない!」
俺は自分言い聞かせるためにも、そう言った。
「ほんとかよ……」
要は怪訝そうな顔をして、俺にピアッサーを渡してきた。
俺は無理矢理笑顔を作って受け取った。
「朝陽は、どうする?」
「2人が開けるなら、俺も一緒に開けようかな」
朝陽はそう言って、ピアッサーを手に取った。
「そういえば、何で朝陽はピアス開けようと思ったのか聞いてない」
朝陽はそれを聞いてビクッと肩を揺らした。
「せっかく流したのに……」
ボソリと呟いているが、距離的に全部聞こえている。
「で、何で?」
要の援護射撃が入った。
これで今度は逃げられない。
「……良いなと思ったから」
「え?」
「親のお揃いのピアスが良いなって思ったからだよ」
朝陽は照れているのか、視線を逸らした。
「あぁー、そういえば愛子さん達、結婚指輪の代わりにピアスだったな」
要が思い出したように言った。
そういえばそうだった。
前に愛子さんが嬉しそうに話していた。
朝陽はまだ視線を逸らしたまま、小さく頷いた。
「なんか……いいよな」
「何が?」
「……好きな人と、同じ物つけてるって」
朝陽はぽつりとそう言った。
その言葉に、一瞬だけ空気が止まる。
「……あー」
要がニヤッと笑った。
「なるほどな」
「うるさい」
朝陽は少しだけ眉をひそめる。
「いやいや、いいじゃん。ロマンあって」
要は面白がるように言いながら、肩をすくめた。
俺はそのやり取りを見ながら、少しだけ胸の奥がざわつくのを感じた。
──好きな人と、お揃い。
さっきまでモテるためだったはずなのに、その言葉を聞いた途端、意味が変わった気がした。
「……じゃあ尚更、今開けとくか」
俺はピアッサーを握り直した。
「いつでも出来るように、な」
「お前、それ絶対今考えただろ」
要が呆れたように言う。
「うるせぇ!」
「……ふっ」
朝陽が小さく笑った。
結局、俺達はそのままピアッサーを買った。
ついでに色々なピアスも見て回って、気付けば3人で同じようなデザインのものを手に取っていた。
「これ……俺らがお揃いにならない?」
「別にいいんじゃね? 好きな物買えば」
要は気にしてないようだけど、俺は気にする。
「初めては好きな人とがいい……」
しょげてる俺に朝陽は言った。
「湊、俺たちの事好きでしょ?」
……確かに。
友達として好きだ。
え? そういうのもありなのか?
「じゃ、これ買ってくる」
「俺もこれ買お」
2人は当たり前みたいにそう言って、さっさとレジに向かっていった。
「……は?」
俺は一人、取り残される。
さっきまで悩んでたのが、なんかバカみたいだ。
3人でお揃いも──悪くないか。
俺も気に入ったピアスを手に取り、レジに向かった。
その後流石に歩き疲れて、俺達は近くのベンチに腰を下ろした。
「はぁー、疲れた……動きたくねー」
要はドカッと座って天を仰いだ。
「なぁ、男気ジャンケンしねぇ?」
「何だよ急に……」
「いや、喉乾いたけど動きたくねぇなって」
「確かにな……」
「いいね、それ。やろう!」
朝陽は乗り気なようだ。
俺達はジャンケンをした。
勝ったのは朝陽だった。
「……最悪」
「おい、男気ジャンケンだぞ。男気だせよ」
「……分かってるよ。で、何買ってくればいい?」
「俺、コーラがいい」
「俺もコーラで」
「分かった。おしるこ買って来るよ」
「おい! お前、ふざけんなよっ!」
「大丈夫、大丈夫。ふざけないって」
朝陽はニヤニヤしながら、ジュースを買いに行った。
大丈夫だよな?
流石にふざけないよな?
こんな暑い中、おしるこ買って来たら全部朝陽に飲ませてやるからな。
そんな時「おいっ!」と声をかけられた。
上を見上げると、全く知らない男が立っていた。
「……うわぁ、めんどくせっ」
要の一言で分かった。
また要の知り合いかよ……。
「こんな所で会うのは運命か?」
「嫌な運命だな」
「ちょっとツラ貸せよ」
「嫌に決まってんだろ」
男はそれを聞いて、クイッと顎で後ろを差した。
あぁー、なんかこの人の仲間みたいな奴が結構居るんだが……。
俺は要を見る。
「今度は人数揃えて来たのかよ……上等だ!」
要は立ち上がって、男を睨みつけた。
えっ!?
喧嘩するの?
さっきまで動きたくないって言ってたのに!?
そう思ってる内に、俺も誰かに肩を掴まれた。
「お前も天童のダチなんだろ? 来いよ」
あ、これ、俺も巻き込まれる感じ?
女の子なら大歓迎だけど、男に肩掴まれるの嫌すぎるんですけど……。
要は先に意気揚々と行ってるし……。
この人数だと、要の事も心配だし……。
しょうがない、付き合うか。




