ピアス
朝から降り続けた雨のせいで、グラウンドはぐちゃぐちゃだ。
そのせいで、今日の部活は中止になった。
「今日ヒマだなー」
俺が窓の外を見ながらボソリと呟けば、隣の席で漫画を読んでいた要が喋りかけてきた。
「え、お前ヒマなの?」
「今日部活無くなった」
「なら、ちょっと買い物付き合ってくれよ」
「いいけど、何買うんだよ」
「ピアッサーってやつ。ピアス開けてぇ」
要は耳たぶを触りながら、そう答えた。
「は!? お前マジで言ってんの?」
「この漫画読んでたら、ピアス開けたくなってさ」
要は読んでいる漫画を俺に見せてきた。
……確かに、かっこいいな。
俺は要を見て、溜め息を吐いた。
「……なんだよ」
「お前はすぐ漫画に影響されるよな」
「いいじゃん。かっけぇーじゃん」
「かっこいいけどさ……」
「ならいいだろ。湊、お前が開けてくれよ」
「嫌だよ! 怖いじゃん!」
「チッ、使えねぇーな……」
「おい、聞こえてるぞ」
「あっ、朝陽!」
無視かっ!
はぁー、マイペースというか、何というか……。
席に戻ってきた朝陽は、座りながら「何ー?」と聞いてきた。
「俺ピアス開けたいんだけどさ、朝陽がピアス開けてくんね? 湊は嫌だって言うんだよ」
朝陽が俺の方を見てきたので、俺は首をブンブンと横に振った。
「別にいいよ」
「本当か!? やったぁー! さっすが朝陽!」
「要が開けて、痛くなさそうなら俺も開けようかな……」
「俺は実験台かよ」
要のぼやきに朝陽はニッコリ笑った。
おい、無自覚にそんないい笑顔を振り撒くな!
周りの女子達がザワザワしてるだろ!
…… 俺も一回くらい、ああやってザワザワされてー。
俺がガックリ項垂れていると、朝陽が「どうした?」と聞いてきた。
この無自覚め……。
「はぁーー。ところで、何で朝陽はピアス開けたいんだ? このアホは漫画に影響されたらしいけど」
「誰がアホだよ。かっけぇーだろうが!」
はいはい、無視無視。
「無視かよ!」
「確かに要はピアス似合いそうだよな」
「だろ! 流石朝陽だ。俺もそう思ったんだ」
「俺も似合うとは思うけど……」
「思うけど、何だよ」
「……これ以上」
「あ?」
「……これ以上、カッコ良くなってどうすんだよ」
俺の絞り出した声に2人は顔を見合わせた。
「お前らは、更にモテようとしているのか!?」
「……なんか、褒められてる?」
「ぷっ、はははっ、何だよそれ。そんな訳ねーだろ。自己満だよ、自己満」
「……自己満?」
「俺がかっこいいと思うからしたいだけ。何でモテるためにするんだよ。本当に湊はアホ可愛いな」
そう言いながら、要は目に涙を浮かべて爆笑していた。
俺は本気の本気の本気で言ったのに……。
「湊はモテそうな事には敏感だから……。アホだけど……」
「モテたくて必死なアホだな」
2人して笑いながら、こっちを慈愛に満ちた目で見てくる。
「アホ、アホ言うなよ! 分かった……俺も開ける! そしたら対等だ!」
「うんうん、そうだな」
「……やっぱアホだな」
「おい、要! ボソっと言っても聞こえてるからな!」
「はいはい。じゃー、買いに行こーぜ」
要は適当に俺をあしらうと、漫画を机の中に仕舞った。
「どこに買いに行く?」
「あー、この前出来たショッピングモール行かね? 普通にピアスも見たいし」
「確かにどんなピアスあるのか見たいかも」
要と朝陽が色々決めている中、俺は後悔していた。
俺、何であんな事言ったんだろ……。
勢いとはいえ、何で……。
体に穴開けるなんて、普通に怖すぎるだろ!
でも今更「やっぱやめる」とかダサすぎて言えねぇー。
モテるため……。
そうだ、モテるためだ!
モテるために、俺、頑張る!




