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第九十七話:聖域の歌姫たち! 賑やかなキッチンと、明かされる合体旋律の真実!

聖域の騒がしい朝。歌姫たちと語り合う中で浮かび上がったのは、伝説の「転生者アイドル」の存在だった。

謎に包まれた聖女の旋律。その正体とは?

聖域の朝は、いつものように戦場のような賑やかさで幕を開けた。

館の庭では、馬のクロとヤギのゴロが、庭園の芝生を「食い散らかし」という表現が相応しい勢いで刈り取っている。一方で、ルナ率いるオオカミの群れ、トラのキング、クマのグリズ、ワニのクロコ、オウギワシのオウギ、そしてオニヤンマのヤンマといった肉食・ハンター組は、朝食の獲物を求めて、精悍な顔つきで森の奥へと雄々しく出陣していった。

館の中では、レオとミケが追いかけっこをして絨毯を滑り回り、モグやハム、ラビといった小動物たちが、奏多の足元でピョンピョンと跳ね回っている。

そして、庭の象徴であるゴーレムのアイギスの上は、もはや「高級休憩所」と化していた。ヘラクレスオオカブトが頭頂部に陣取り、ゴング率いるゴリラたちが肩の上で筋トレをし、ピーとポポのハトやコウのコウモリたちは、その頑強な鋼鉄の肩を止まり木にして優雅に羽を休めている。

アイギスはといえば、そんな彼らを「異常なし」とでもいうように、微動だにせず、ただ静かに佇んでいた。

一方、聖域の主であるハルは、まだ館の敷地内にあるあの寝床で巨大な虹色の翼を広げて爆睡中だった。ヴィオラ曰く「基本的にドラゴンにとって、一日の大半は成長のための睡眠時間で、特に幼体から成長して大人へ近づこうとする若い個体のハルにとっては尚更必要」とのことだが、それにしてもその姿は豪快そのものだ。

館のキッチンでは、リリアとエルーラがエプロン姿で奏多の朝食を準備していた。慣れない館の調理器具に悪戦苦闘しながらも、彼女たちの表情は明るい。

そこへ、昨日絶景を見に行ったルミナが、熱心な眼差しで二人を見つめていた。

「ねえ、リリアさん、エルーラさん。昨日、あの絶景を前にして歌っていたあの歌……『ハーモニー・ブレイク』って、どうやってあんな不思議な力が生まれるんですか? ただの歌とは明らかに違った、何かが響いている感じがしました」

ルミナの純粋な問いかけに、リリアが手を止め、少し遠い目をした。

「……あの旋律ね。実は、私たち自身も全部を理解しているわけじゃないの。あれは、遥か昔にこの世界へ現れた、ある一人の『伝説のアイドル』が生み出した旋律だと言われているわ」

俺はコーヒーカップを手に取り、聞き耳を立てた。アイドル? この世界にそんな概念があるのか。

「アイドル……ですか? それで、その人はどんな……?」

エルーラが少しだけ寂しげに、しかし懐かしむように微笑む。

「彼女については謎が多いの。名前も記録に残っていないし、どんな容姿だったかも定かではない。ただ、伝説では『異世界からやってきた転生者』だったと言われているわ」

「転生者……?」

俺は思わずカップを置いた。またしても、その単語か。

シルヴィアが、古びた知識を掘り起こすように慎重に言葉を紡ぐ。

「ええ、私も聞いたことがあるわ。古い文献の隅に、かすかに『世界に癒しを与えた聖女』という記述があったはず。争いばかりが絶えなかった時代に、彼女が歌うだけで戦場が静まり返り、荒れ果てた大地に花が咲いた……という伝説ね。でも、彼女が今どこで何をしているのか、あるいはすでに死を迎えたのかさえ定かではないの。名前も、顔も、すべてが神秘のベールに包まれた謎多き人物よ」

リリアが頷く。

「そう。私たちは旅の途中で彼女の遺した楽譜の断片を拾い集め、それを繋ぎ合わせて『合体旋律』として再現しているに過ぎないの。でも、歌うたびに思うのよ。この歌の先には、彼女が見た景色が続いているんじゃないかって」

俺は静かにコーヒーを啜った。

転生者であり、聖女と呼ばれたアイドル。彼女の遺した旋律が、俺の聖域を平穏に保つための「防壁」の一部になっている。それは偶然なのだろうか。それとも、この世界が、俺と彼女のような存在を、最初から何らかの必然で呼び寄せているのか。

「……不思議だな。俺と同じ転生者が、そんな伝説を作っていたなんて」

キッチンに漂う焼きたてのパンの香りと、彼女たちの歌声の余韻。

レオの吠える声や、動物たちの騒がしさが、今の俺にはとても愛おしく感じられた。

伝説の聖女が癒やしを求めたように、俺もまた、ここで安らぎを見つけたのだから。

「……ま、名前も知らない伝説のアイドルか。いつか会えることがあったら、礼を言いたいもんだな」

俺の言葉に、シルヴィアが少しだけ意味深な笑みを浮かべた。

「その時は、彼女もきっとこの聖域の賑やかさを気に入ると思うわよ。何しろ、これだけ個性豊かな命が溢れているんですもの」

朝日を浴びたキッチンで、二人の歌姫と聖域の仲間たち。

俺の、そして彼女たちの新たな日常は、こうして伝説の旋律と共に、少しずつ色を変えていく。

第九十七話、いかがでしたでしょうか。

「伝説の転生者」というキーワードが出てきて、物語に深みが出てきました。歌姫たちとの生活も本格的にスタート! 次回、聖域に新たな変化が……?

次回:

「響け!伝説の旋律!聖域に響く歌姫たちのハーモニー!」

お楽しみに!

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