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第五話:ドラゴンの看病と、魔力に満ちた家庭菜園の恵み

瀕死の虹色ドラゴン「バハムート」の幼体を保護した奏多。

伝説の生物を前に戸惑いながらも、彼は自分を頼ってきた命を見捨てられず、懸命に看病を続ける。

名付けられた小さな龍「ハル」と奏多の絆が結ばれたその頃、庭では魔力を帯びた野菜が驚異的な成長を遂げていた。

管理人・奏多、そして魔獣たちの生活が、館に新たな光をもたらし始める!

「……頼む、目を覚ましてくれ。死ぬな」

屋敷の客間で、俺は震える手でドラゴンの身体を拭い続けていた。

虹色の鱗は見る影もなくくすみ、その砕けた箇所からは、死の気配を纏った黒い霧が絶えず立ち昇っている。俺の手持ちの知識、そして転生後に必死に詰め込んだ魔法の治療術を総動員して、消毒と魔力の注入を繰り返した。

その時、背後の空間が不自然に歪んだかと思うと、眩い光の粒子が集まり、マーリドの姿が形作られた。

『……愚かな管理者よ。森の争いに首を突っ込むとは。しかも、その個体は……』

マーリドは、ソファの上で苦しげに喘ぐドラゴンを冷徹な視線で見下ろした。

『この地域には本来存在せぬ、極めて希少な種。伝説の幻龍、『バハムート』の幼体だ。その血肉には濃厚な魔力が宿っており、森の獣たちが血眼になって探すのも道理。お前はとんでもない火種をこの館に持ち込んだものだ』

「バハムート……伝説の龍の、名前じゃないか」

俺は言葉を失った。この小さな命が、そんな途方もない歴史と重みを背負っているとは。だが、伝説だろうと希少種だろうと、今俺の目の前で、小さな呼吸を必死に繋いでいる事実に変わりはない。

『契約に従い、館の魔力で保護してやれ。ただし、森の連中がこの幼体の気配を嗅ぎつけるのは時間の問題だ。管理者として、その覚悟を以て守り抜くがいい』

マーリドは警告を残して消えた。俺は深く息を吐き、レオとミケに見守られながら、夜通しの看病を続けた。

冷え切った屋敷の夜。ドラゴンの鼓動が、俺の掌を通じて鼓膜に伝わってくる。

――そして、日付が変わる少し前。

『……ギ、ィ……?』

かすかな声と共に、ドラゴンの目蓋がゆっくりと震えた。

現れたのは、宝石のように深く、透き通るような翠緑の瞳だった。その瞳が俺の顔を捉えた瞬間、ドラゴンは驚いたように跳ね起きた。

『ギッ! ギャウッ!!』

警戒心剥き出しで、鋭い爪を立てる。まだ体は満足に動かないはずなのに、その威嚇は本能的で、かつ凄まじい気迫に満ちていた。

俺はあえてゆっくりと両手を広げ、敵意がないことを示した。

「落ち着け。大丈夫だ、傷つけた相手じゃない。……お前、バハムートっていうんだろ? ここは俺の家だ。もう、誰も襲ってこない」

俺は静かに、彼に寄り添うように座り込んだ。

しばらく俺を見つめていたドラゴンだったが、やがて力が抜けたようにへたり込んだ。俺が差し出した水を、小さな舌でゆっくりと舐める。その瞳から、少しずつ鋭い警戒心が消えていくのが分かった。

「名前が必要だな。……お前は虹色に輝いている。俺の、小さな家族として……今日からお前を『ハル』と呼ぶことにするよ。ハル、虹のように空を駆けるんだ」

『……クルゥ』

ハルは、俺の手の平に額を擦り付けた。

俺の心臓が、温かな衝撃に包まれる。伝説のドラゴンと、追放された俺。この奇妙な出会いが、俺の孤独な屋敷の歴史を大きく変えようとしている予感がした。

翌朝、俺はハルの容態が安定していることを確認し、レオたちに留守番を頼んで外へ出た。

庭の様子を見に行くと、そこには昨日とは比較にならないほどの驚くべき光景が広がっていた。

「なんだ、これは……」

昨日、モグとビーたちが整えた土壌に植えた野菜の芽が、たった一晩で驚くべき成長を遂げていたのだ。

本来なら数週間かかるはずのトマトやキュウリの芽が、すでに大人の膝丈ほどまで伸び、宝石のような艶を放つ果実を実らせている。ミツバチのビーたちが運んできた、森の魔力を濃縮した蜜が土壌に浸透し、かつてない栄養を与えた結果だろう。

同時に、館の内部も劇的な変化を遂げていた。

ハムやスパイたちがシャンデリアの細部まで磨き上げ、天井から床まで、館全体がまるで新築のような神々しい輝きを放ち始めている。大掃除も庭の開拓も、もはや完了目前だ。

「ハル……お前が来てくれたおかげで、この庭にも活気が戻ってきた気がするよ」

屋敷の庭に実った、魔力に満ちたトマトを一つ、もぎ取ってかじってみた。

口の中に濃厚な甘みと、全身を駆け巡るような爽快な魔力が広がる。この味、この力。これなら、どんな困難も乗り越えられる。

巨大な空き家の管理者として、そしてハルという相棒を得た保護者として。

俺の、誰も邪魔しない新しい生活は、もはや「隠居」ではなく、夢のような「開拓」の日々へと進化していた。

第五話、いかがでしたでしょうか。

ついにハルが目覚め、奏多との絆が結ばれました!

ドラゴンの「ギャウッ!」という威嚇も、今の奏多には愛おしい反応の一つでしょうね。

物語はさらに加速します!

次回:

「響く凱歌!大掃除完了と、庭に実った奇跡の収穫祭」

ついに館と庭の全貌が明らかに……!? お楽しみに!

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