第四十六話:地下に眠る動く要塞? 館が鳴動する時!
館の防衛強化を進める技術者たちだったが、突然の激震が館を襲う!
地震の原因は、館の地下に隠されていた「禁断の領域」の起動だった。
さらにマーリドの気まぐれ(?)で館の敷地は数倍に拡大!
技術者たちも言葉を失う、伝説の要塞の全貌とは?
「……ふう。これでようやく詳細な分析は完了した。構造解析の結果、この館の基礎構造は現代魔導工学の遥か先を行く……! では、陛下より預かった特注の防衛設備の設置作業、すぐに開始させていただきます!」
ギルバート・ヴォーダンが、王国の魔導技師団を統括する誇りと共にそう宣言した直後のことだった。
ゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォン……ッ!!!!
重厚な石の床が、まるで意思を持った巨大な獣が身震いするかのように、激しく波打った。地鳴りのような轟音が館の隅々にまで反響し、壁面に取り付けられた魔導灯が明滅を繰り返す。
「え、うわっ……!?」
俺は咄嗟に身構え、すぐそばにいたルミナの腕を支えた。ルミナが驚愕に目を見開き、エリスが即座に抜刀して周囲の警戒に回る。
「な、なんだ!? まさか、この地帯に地震など……!」
エリスが剣を構えながら周囲を注視するが、窓の外の風景は至って穏やかだ。森の木々は微動だにせず、鳥たちの鳴き声さえ聞こえてくる。つまり、揺れているのはこの『館』だけなのだ。
「自然の地震ではない……!? この魔力反応、まさか館の根幹を成す魔力炉の暴走か!?」
ヴィオラが青ざめた顔で杖を強く握りしめ、魔力探知を展開する。だが、その数値はあまりにも巨大すぎて、彼女の解析能力すらも飽和させていた。彼女の表情は、驚きを超えて、科学者としての戦慄に染まっていた。
庭のあちこちで、俺の相棒たちもパニックに陥っていた。
普段は威風堂々と振る舞うトラのキングやクマのグリズも、異変を感じ取ってか落ち着きなく咆哮を上げ、ウサギのラビやハムスターのハムたちは、パニックに陥ったビーやピーの喧騒の中で一箇所に固まって震えている。空を舞うインコのピーやハトのポポたちも、止まり木から飛び出し、館の周囲を旋回して異様な空気を撒き散らしていた。
一方、驚くべきことに、ゴーレムであるアイギスとドラゴンの幼体ハルだけは、まるで何事もなかったかのように平然としている。ハルなどは、揺れに身を任せて気持ちよさそうにうたた寝さえしていた。彼らにとって、この揺れは「日常の一部」なのかもしれない。
――いや、俺にとっては少し事情が違う。
現世において男子高校生として生きていた身だ。日本という地震大国で育った俺にとって、この程度の揺れは驚くには値しない。だが、これはプレートの変動ではない。明らかに「意志」を感じる鳴動だ。館そのものが、何かを呼び覚まそうとしている。
すると、俺の脳内に直接響くような、静謐でいてどこか傲慢な声が届いた。
『……騒がしい連中だ。防衛設備の設置など、そんな矮小な人間どもの工作など必要あるまい』
光の粒子が収束し、マーリドが俺たちの目の前に現れた。その顔には、隠しきれない愉悦と、子供のような無邪気さが混在している。
『防衛設備なら、もっといい場所があるぞ。たった今、私が自ら封じていた禁断の地下を起動させた! そして、それに合わせてこの館の敷地境界線を、元の数倍にまで一気に拡大しておいたぞ!』
「禁断の……地下? 敷地の拡大?」
俺が問い返すよりも早く、館の中央広場の床が、まるでパズルのピースが組み合わさるようにして沈み込んだ。そこから、巨大な石造りの「螺旋階段」が、重厚な音を立ててせり出してきた。
冷たく、しかし清廉な魔力を帯びた階段の先には、これまで存在さえ知られていなかった深遠なる地下空間へと続く通路が、口を開けていた。
技術者たちは、呆然と口を開けてその光景を見守っている。
「嘘だろ……。この館の下に、まだこれほどの広大な空間が眠っていたというのか? しかもこの魔力……何千、何万という魔獣を瞬時に制圧できる規模の結界装置が、今まさに起動しようとしているぞ!」
ギルバートが震える声で叫ぶ。
「我々が持ち込んだ防衛設備など、これに比べれば玩具同然……! これほどの遺産を、我々は知らずに分析していたのか!」
俺は、せり上がった地下通路の入り口を眺めた。そこからは、何者かが住まうような、あるいはかつて何かが守られていたような気配すら感じる。
マーリドは俺の方を向き、悪戯っぽく笑った。
『お前の管理者としての真価が試されるのは、ここからよ。奏多、お前が住んでいたこの「空き家」が、これからどんな役割を果たすことになるのか……自分の目で確かめるがいい。さあ、降りていくぞ』
館の地下で鳴り響く鼓動は、ますます激しさを増す。
それは要塞が深い眠りから目覚める音か、それとも、新たな脅威を呼び寄せる合図か。
俺たちの、管理者としての本当の物語が、ここから始まろうとしていた。
第四十六話、いかがでしたでしょうか。
ついに明らかになった地下空間、そして館の「真の姿」! 奏多の隠れ家ライフはもはや要塞管理ライフへと変貌しましたね。
次回、地下に降りた奏多たちを待っていたものとは――?
次回:
「賢者の遺産と管理者の覚悟! 地下要塞の深淵へ」
お楽しみに!




