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第十二話:管理人の日常は続く! 補強される外壁と、新しい庭仕事の計画

帝国軍の襲撃を退け、奏多は館の更なる防衛強化を決意する。

ルミナの植物魔法を借り、庭園を美しい花園へと改造する中で、奏多は自分の過去と「家族」への想いを彼女に語る。

かつて人間関係に疲弊し、最期まで誰にも理解されなかった少年が、この異世界で見つけた「本当の居場所」とは。日常の中に芽生えた絆と、堅固になる防壁。防衛戦の先にある、新たな希望の物語!

帝国軍先遣隊の蹂躙劇から一夜が明け、館は再び静寂に包まれていた。

だが、その静寂は以前のような「忘れ去られた死の沈黙」ではない。生き物たちの息吹と、いつか来るかもしれない「再戦」に備える、張り詰めた決意に満ちた静けさだった。

翌朝、俺は朝食を終えるや否や、全員を庭へと招集した。

「昨日の戦いで分かった。この館は、帝国にとって『排除すべき対象』になった。次は先遣隊のような小規模な偵察部隊じゃない。本格的な攻城部隊が来るだろう。だから……防壁を作る」

俺の言葉に、レオが力強く吠え、スパイが天井付近で糸を準備する。

今のままでは、館の境界線はあまりに脆い。俺はルミナとマーリドの助言を受け、敷地全域を囲う「防衛ライン」の構築を指示した。モグラのモグが地中深くで地盤を突き固め、ヤギのゴロが硬い岩石を運ぶ。スパイが織りなす特殊な糸で外壁を強固に補強し、そこに俺の魔力で魔導回路を幾重にも刻み込んでいく。

「それから、庭だ」

荒れ果てていた庭を、ただの菜園から「美しい癒やしの空間」へと変える。それが俺の密かな、しかし譲れない願いだった。

「ルミナ、手伝ってくれないか。君の植物魔法で、見たこともないような花を咲かせてみたいんだ」

ルミナは目を輝かせた。「はい、喜んで! 私の魔法は、植物の生命力を引き出し、その成長を促すことに特化しています。この館に、アルカディア王国でも見たことのないような、鮮やかで力強い花園を作りましょう」

その日から、館は巨大な建設現場兼、庭園化計画の真っ只中となった。

花が咲き乱れる庭を歩きながら、ふと、ルミナが不思議そうに俺の横顔を覗き込んできた。

「奏多様。ずっと気になっていたのですが……奏多様は、どうしてあんなにも魔物……いいえ、『動物』たちと深く心を通わせることができるのですか? 奏多様の故郷は、どのような場所だったのですか?」

俺は剪定バサミを動かす手を止め、遠い記憶の扉をゆっくりと開いた。

「俺のいた場所は……そうだな、今のここよりもずっと、生きることそのものに必死な場所だったかもしれない」

俺は語り始めた。実家の小さな農家での日々。母親が働く動物園で、獣たちの温もりに触れた瞬間の安らぎ。

「俺は、人間が苦手だった。蓮や凛みたいに、平気で他人の心を傷つける連中ばかりじゃないが、結局『自分と違うもの』を徹底的に排除したがる世界だったんだ。唯一、俺を必要としてくれたのが、実家の家畜たちと、動物園の動物たちだけだった」

ルミナは黙って聞いてくれている。俺は、ずっと胸に突き刺さっていた棘を吐き出すように続けた。

修学旅行の事故。そして、自分だけが「選別」という名目でこの森に捨てられたこと。

「俺は、クラスのみんなから馬鹿にされ、嘲笑われ、最期まで誰にも必要とされなかった。だから、この世界に来て、神様だか何だかから『英雄になれ』なんて言われた時、心底笑えたよ。俺が求めていたのは、そんな眩しい世界じゃない。……ただ、誰かを傷つける必要のない場所で、誰かと温もりを分かち合いたかっただけなんだ」

俺は足元にいたミケを抱き上げた。ミケは喉を鳴らして俺の腕に頬を寄せる。その小さな体温が、俺の冷え切っていた心を救い上げてくれる。

「ここが俺の理想郷だ。誰も俺を馬鹿にしない。誰も俺を嘲笑わない。……ここにいれば、俺は俺のままでいい」

ルミナは静かに微笑み、俺の横に並んで一輪の花に優しく触れた。

「奏多様。私は、あなたのその孤独と強さを知っています。あなたの故郷の動物たちも、きっとあなたを愛していたはずです。……私の故郷も、争いで失われました。だからこそ分かります。あなたが築こうとしているこの場所が、どれほどかけがえのないものか」

その言葉に、胸の奥が熱くなった。

帝国がいつ攻めてこようと、構わない。この庭を守るために、俺は戦う。

ただ生き延びるためじゃない。この温もりを、この場所を、俺たちの城を、何よりも大切にするために。

庭の土は、今日も新しい命の鼓動を伝えてくる。

防壁は少しずつ高くなり、花園は色彩を増していく。

管理人の日常は、今日も穏やかで、そして強く続いている。

第十二話、いかがでしたでしょうか。

ルミナの前で初めて自分の過去と、今の生活に対する想いを語りましたね。

「英雄」ではなく「管理者」として生きることを選んだ奏多の決意。庭作りという日常が、物語の休息と準備の場として機能していく様子を描きました。

次回:

「魔力の共鳴!ルミナの魔法と、館の心臓部に宿る力」

お楽しみに!

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