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目覚めた公爵令嬢は、悪事を許しません  作者: トモブー
あなたを愛するのに疲れました
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陛下との会話

「陛下、遅くなり申し訳ございません」

案内された執務室に入ると、座りもせず陛下は私を待っていたようで、私の顔を見るなり顔を綻ばせた。

グレースは私を案内すると、そそくさと離れていった。

「構わん。皆、下がれ」

「はい」

陛下の言葉に、何人もの召使いと兵士が、直ぐに返事をし一礼し部屋を出ていった。

誰もが出ていく中、クルリが出て行こうとした所を止めた。

「陛下。恐れ入りますがクルリは私側の者でございますので、このまま留まらせるようお願い致します」

「スティング殿がそう言うのなら構わん。では、お茶でも淹れてもらおうか」

微笑む陛下に、私よりもクルリがとても嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます。クルリ、お願いね」

「はい、陛下、お嬢様」

クルリの気持ちの良い返事を受け止め、陛下と私は向かい合わせにソファに座った。

王宮でのお茶の準備は初めてだったが、クルリは手際よく準備してくれた。

「スティング殿には、良い、召使いがいるのだな」

まるで私の気持ちを代弁するかのように陛下は、クルリを褒めてくれた。

「ありがとうございます。私もそう思います。幼き頃から私の心の支えであり、心許せる数少ない召使いでございます」

うわあああ!!

と言う歓喜の顔で私を見るクルリに、胸が熱くなった。

「スティング殿、私は、これからどうすればいい」

素直な陛下の気持が伝わった。

「陛下の気持ちのまま、行動すれば宜しいかと存じます」

もう、隠さなくてもよろしいのです。

「私の?」

「はい。私は、帝国にてあの方と落ち合う約束にしております」

私のその内容がどれだけ、陛下に驚愕を与えたか、陛下の顔でわかった。

理解しております。

あの時から諦め、

その熱く苦しい想いを封印してしまい、

振り返る事も、

思い出す事も、

罪だと思い捨て去った、

悲しく辛い想いを、

私は、知っています。

でも、

「陛下。私が戻してみせます」

人の気持ちは、消せない。

「国を守るために、犠牲となった陛下の想いは、過去の思い出、ではありません」

「スティング殿?」

ほら。

その期待の顔は、諦めていないのでしょう?

「これまで陛下は、中立と言う立場の為、あえて傍観をされていた。そうして、ずっと我慢されていた。グリニッジ伯爵様と王妃様が表立って言えない何かをしている事を探って欲しいと言われたのは、陛下でしたよね?」

陛下の瞳が、乾わきった土地に恵みの雨が降り注いだかのようか、生気が生まれた。

公爵派に密かに頼まれた願いは、1つ。

グリニッジ伯爵家の悪事を暴き、かの方と愛を貫きたかった。

「その願いを叶えること無く十数年経ってしまいました。ですが、私が、私が、叶えて差し上げます!」

「スティング殿・・・が・・・?」

疑念の言葉でありながら、瞳はとても前を向いている。

「陛下の想いを叶え、それがこの国の行く末が、明るい未来となる事をお約束致します」

この私の言葉の意味が、どれだけ重く責任あるものかを、

分かっている。

「陛下。私に二言はありません。公爵派ではなく、私が、陛下を、この国を変えてみせます」

それでも、

今の私は、

誰の気持ちにも左右されない、

私の意思だ。

だから、

「ですから陛下。私の手駒となって下さい」

陛下を真っ直ぐに見つめ、言ったら、とても豪快に笑われた。

「頼もしい事を言ってくれるな。わかった、私は公爵達ではなく、そなたの味方となり、手駒となろう。たが、あまり無理はするな。期待はしているが過度の期待は、自身も、そして他のものも潰してしまう」

目線を逸らし、物悲しく言いながら1口お茶を飲まれる姿が急に小さく見えた。

きっとこれまで幾度となく、期待をし、叶わないと夢物語だと諦め、ため息をついたのだろう。

「いいえ、期待して下さい。人の期待が大きければ大きい程、人智を超えた力を発揮します。そんな中途半端な気持ち等いりません。私の手駒となるなら、覚悟をお決め下さい」

普段なら絶対にしない、足組みをし、私は悠然と微笑んだ。

「・・・変わったな・・・」

「いいえ、陛下も今変わってくれましたわ」

その肩の荷がおりたような晴れやかな顔と、前進を決めた強い瞳の輝きに、私は一気にお茶を飲んだ。

喉がとても潤った。

お嬢様。

クルリが目配せした。

そうね、長居しては行けないわ。

「陛下、時間がありません。私はすぐに帝国へと参ります。その間、御自身の身の安全だけを優先して下さい」

「私の命が危ない、か」

「その通りでございます。私が、王妃様と殿下を離れた、と決定的になった今、もう誤魔化しはききません。これまで殿下の心を繋げるために奇怪な行動をしてきた、と思っておいでのようでしたが、もう騙される事は無いでしょう」

「そうなれば、私は邪魔、だろうな。そなたを上手く動かし、ガナッシュと婚儀を上げ、レインを置く。誰もがそうなると思っていたが、そなたが離れれば、公爵殿達が黙ってはいないだろう。これまで、そなたがいたからこそ、公爵殿達は口を閉ざしていた」

「・・・はい、仰る通りでございます。ですが、公爵派と王妃派は表立った争いは避けたいと思っているのも事実。実際、帝国からお2人が留学でおられるのが、一番の原因です。誰もが、国の権力争いを見せたくありません」

「そうなれば、私が死ねば、何の問題もなくガナッシュが王座につき、王妃達が好きなように動ける」

「その通りですが、その通りにするつもりはありません。陛下、毒見の人を増やし、全て銀食器にし、私が帰るまで生きて下さい。陛下の側には、私の信頼おける者をよこします」

「わかった」

「それと、桃色の飾りを持つ物には、絶対に気を許さないで下さい」

「桃色の飾り?」

「はい。中立派とは、名ばかりの裏切り者でございます。これは父にもまだ報告しておりません。ご存知のように公爵派の中に内通者がおります。私の情報を下手に父に伝えることは得策ではないと思い、黙っております」

「成程、それはその通りだな」

「陛下には王宮で誰がその桃色の飾りを持っているのかを私に教えて欲しいのです」

「わかった」

「それと、私が帝国に行った後、誰が頻繁に王妃様に会いに来ているのか、王妃様が誰に会いたいのかを教えて欲しいのです」

「わかった。王妃にはこれからは別宮にて暫く過ごしてもらうつもりだ。帝国のお2人に対しての非礼は許せるものでは無い。何も罰しないのは国としてのあり方を問われる」

「そうでございますね。それならば、より王妃様を監視出来ます。お願い致します。それと」

「・・・まだ、あるのか?始めにこれからどうしたらいいのだ?と質問した時は、何もしなくても良い、と言った筈だが・・・」

「そうでしたか?私、覚えておりませんわ」

にっこり、ハッキリ答えると、苦笑いされた。

「わかった。私はそなたの手駒となったのだから、文句は言うまい。他は、何をすればいい?」

「そんなに身構えなくても結構ですよ。これで最後です。テレリナ子爵様の嫡男である、コリュ様の廃嫡をお願い致します」

ふふっと笑い言うと、クルリが、ほっと顔をしたのが見えて、私もほっとした。

「テレリナ?確か、ガナッシュと同じくお2人に無礼を働いた者か?」

「そうでございます。あまり詳細を今は御説明出来ませんが、出来るだけ早くお願い致します」

「わかった。これからすぐに対処しよう」

「有難うございます。陛下、どうか、どうか、私が戻るまでご無事でいて下さい。お願いなど本当にはどうでも宜しいです。陛下が、ご無事でいる事が大切なのです」

「・・・スティング殿、それはそなたの計画にとって必要なのだろう?」

あら?何故そんなに微妙な、というか、怖がるような顔をされるのかしら?

あら?何故クルリも顔をひきつらせているのかしら?

んん???

「陛下、それは当然ではありませんか?死んでしまわれたらなんの意味もありません。あら?でももし、死んでしまいましたら、私は楽になります。そうなれば思いっきり、動けますね」

それもいいかも?

護るべき人が少なくなれ・・・ば・・・。

んんん???

「じ、冗談ですわ、陛下。私は、陛下の幸せも望んでおりますよ」

陛下の悲しそうな顔に慌てて首を振ったが、また、小さくなってしまった。

「・・・いや、いいのだ。私は何の力もない。せめて役に立つために、生き長えるように努力する。いや、分かっているのだ。私はいつも人任せにし、何の役にも立たない。そうだ、私はあの時から逃げていたのだ」

うわあああ。

陛下が、見た事も無いほど凄い凹んでます。

そうして、クルリが、可哀想に、と私を睨んでいる。

「あ、あの陛下、私、少し冗談が言えるようになりまして、和やかな空気にしたくて言ったのです。本気ではありません。その、まだ言い慣れていないので少し顔が真面目だったのかもしれません」

必死に言うと、安心した顔になり、そうだな、そうだな、と言ってくれた。

「あの、陛下、私はこれで失礼致します。屋敷でフィー皇子とカレン皇女がお待ちですし、これからの事を父と相談しなければいけません」

すっくと立ちあがり、さっさと扉へと向かかった。

「では、陛下。帝国より戻り次第ご報告に参ります」

「楽しみに報告を待とう」

「ご期待に添える報告をお持ち致します。では」

扉を背に、すっと背筋を伸ばし、ドレスの裾を持ち上げ頭を下げた。

「これにて失礼致します」

頭をあげると、陛下は幸せそうにソファで座り微笑んだ。

そう言えば、と思い出す。

お父様が言っていた。

この執務室にしても他の部屋にしても、昔から、調度品も何一つ変えずあの時のままだ、と。

あの方と過ごした日々を陛下は忘れないように、と調度品が傷んでも補修し、壊れても新たな物を入れること無く、そのままにしていると言っていた。

「陛下、私は生きている陛下を望んでおります。どうぞご無事で」

「・・・お嬢様、少ししつこいですよ」

ええ????

しつこい????

「・・・わかった。私は足を引っ張らないように努力しよう・・・」

「お嬢様、もう帰りましょう。陛下がお可哀想ですよ」

どういう意味???

訳が分からなかったが、クルリに引っ張り出されるように執務室を出た。


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