三通の手紙3
「でも、桃色の印なんて、あの女の髪みたいで私は好きじゃないです」
クルリの、とっても嫌そうな顔と、とっても嫌そうな声に、私も、皆も、とっても頷いてしまった。
「ねえスティング、あの女何者?あまりに自由すぎるわ」
カレンの、射抜くような瞳のその一言、一気に和やかさが無くなった。
それは、フィーもザンも同じように気になっている、と言うよりも心配している、と言う感情がとれた。
クルリとリューナイトにしては、昔は諦めるような顔をさせていたが、今は腹立たしいという、顔だった。
「前にも言ったでしょ?乳母の孫よ」
「それにしては、スティングにはドレスは作りもしないのに、あの女には作るの?おかしいでしょ!?」
「それは・・・私がそうしてしまったからよ。高等部からレインが来た、と言ったでしょう?それまではちゃんと私に作ってくれたわ」
「何をしたんだ?」
「レインが高等部に来てから、レインが殿下の誕生日パーティの時に、ドレスを欲しいと、殿下にお願いしに来たの。その時は、そんな馬鹿げた頼みが通ると思っていなかった。ところが、殿下も、王妃様も、私が許したから、と勝手に話を作ってしまった」
「何それ!?そんな馬鹿げた事がまかり・・・いや、あの親子ならするな」
変な1人納得に、私の心は急に重たくなってきた。
「だが、スティングが許せば通る話なのか?」
痛い言葉だ。
「作られた話の内容に問題があるの。私は公爵令嬢であり、殿下の婚約者。その私が強く望めば滞りなく許される。私が、国費を使わなくても十分作れる資産を持っているから必要ない、と言った、となっていたわ。勿論、お父様は反発したわ。でも・・・あの頃の私は、王妃様にも殿下にも逆らえなかった。お2人が、いいえ・・・殿下が私にそう言えと望めば、私の渇望になったわ」
殿下の言葉が全て。
殿下の思いが全て。
だから、殿下がレインの為だと分かっていても、私にお願いしてくれる事が、私に望んでくれる事が、至上の喜びだった。
相反するように王妃様の言葉があったとしても、殿下の願いを聞き入れるこそが、私の生きがいだった。
本当に滑稽だわ。
自嘲気味に笑う私に、皆の怒りの顔に、私の気持ちは救われ、そうして、
殿下への気持ちが無い自分を確認することができた。
だって、ひとっつも、後悔していないわ。
今こうやって昔の愚かな自分を冷静に判断できる。
あの時の、
私は、
おかしかった。
何もかもが閉ざされ、
何もかもを殿下に結び付け、
何もかも、私を貶めていた。
「でも、もういいの。逆にドレスを作って貰わなかったから、レインとお揃い、なんて恐ろしい目に会わなくても良かったもの」
「確かに!それは考えるだけでも最悪だわ」
「でしょう?あのときは殿下とお揃いは羨ましいと思ったよ。でも、今考えると、3人でお揃いなるなんて汚点にしかならないわ。クローゼットを開ける度に目に入るのよ。国費で頂いた物を捨てる訳にも、あげる訳にもいなかないから、滅入るだけよ。どうせなら、フィーとカレンとお揃いで着たいもの」
「本当にか!?」
「勿論よ。いつかお揃いを着ましょうよ」
「いつか、ねえ」
カレンがニヤニヤと笑いながら意味深にフィーを見ながら言った言葉に、何となくわかったがあえて聞かなかった。
「でも、レインが何者かは気になるわ。乳母の孫、だけではないと思う」
「正体を暴いて、あの女の泣きっ面を見てやるわ」
「俺はあのクソ王子の泣きっ面を見てやる」
「ふふっ。じゃあ私はその為に頑張るわ」
「私もお嬢様が悪女となるようにもっと頑張ります!」
いや・・・そこは頑張らなくてもいいよ。
クルリに意気込む顔がとても不安に思った。




