三通の手紙4
「そうだ、サラの事をしらべてくれた?」
「はい、お嬢様。意外な事が分かりました」
すっと、クルリは真顔になり、声を落とした。
「サラは30年ほど前に没落したハシザラ男爵の孫であり、サラの祖母に当たるアリーナ様は、ガーフィー公爵家でメイドとして働いていました。それも、没落した後も働いていました」
やはりただの庶民、ではなかった。
「何故没落したの?それと、今もガーフィー公爵家で誰か働いているの?」
「その時の当主が賭事が好きで借金がかさみ没落したようです。それと、今はガーフィー公爵家では誰も働いていません。没落後は収入の為に働いていたようでうが、その、ガーフィー公爵様が手を出しただの出してないだの、と言う揉め事があり、やめてます。勿論結構な退職金を貰ったみたいですよ」
ああ、と誰もがため息をつき肩を竦めた。
「あの方、昔はかなり遊んでいたらしいものね。今は大人しくなっているらしいけど、女性好きは変わりないわね」
いつも若い女性に楽しそうに声をかけ、奥様に睨まれている姿を見る。
「ガーフィー公爵様が裏切り者?」
本気で思ってはいないが、カレンが口にした。
「そうかもしれないわね。サラを潜り込ませて、公爵派の情報を流している」
私の言葉に一瞬皆が固まったかと思うと、次の瞬間に笑いだした。
「ないない、あの男爵に喋ったら全部筒抜けだわ」
「でしょうね。それに、もしガーフィー公爵様が内通者なら公爵派に潜り込ませているわよ。自分の知らない情報が欲しいでしょうから。でも、ガーフィー公爵様は桃色の瞳をもっている。もしかしたら、レインと何か繋がりあるかも、という線が強いかもしれないわ」
「ないですね」
「それは有り得ません」
リューナイトとザンが揃って否定した。
「何故?」
「骨格が全く違います。外見は色々ありますから他人でも多少似ている所があるかもしれませんが、骨格は誤魔化せません。もし親族であれば必ず何処かは一致しますが、ガーフィー公爵様とレインは全く違います」
リューナイトの言葉にザンは同意するように頷いた。
「2人がそこまで言うなら違うわね。クルリ、サラはどこから来たの?」
「それが、分からないんです」
急に声が落ち、悔しそうに顔を歪めた。
「分からない?」
「はい。ホッリュウ男爵家の前がないんです。ホッリュウ男爵家で働くメイドに何人かに聞いたのですが、誰の紹介か、どこから来たのか全く分からないんです。まるで隠蔽されているかのように。そして、姿を消しました」
「家には帰ってるでしょ?」
カレンの疑問に私も同じだった。
「いいえ。家の方も大騒ぎしています。ともかくサラはメイドの養成所にも通っていない、メイド斡旋所にも登録はない。では、何故ホッリュウ男爵家に入れたのか、誰が斡旋したのか。奇妙すぎます。お嬢様が言わなければ、きっと気づかなかった」
「まさか、本当にガーフィー公爵様が内通者か?」
フィーの不穏な言葉に一気に部屋の空気が重たくなった。
「可能性が無いわけではないけど、思い込みも良くないわ。ともかく明日から忙しくなるから、私の手駒に動くように頼むわ。もしかしたら」
「私が探ります!」
クルリが必死な声と表情で断ってきた。
「私がやります。これは、私の仕事なんです!」
その瞳の強さと意志の強さから、私の為に動きたい、と気持ちがありありと分かり可愛らしかったし、手駒に嫉妬しているのだ。
「そうしたいけど、我慢して。あなたも忙しくなるし、下手に動いたら、私が何かしているとバレちゃうじゃない。誰もが知ってるでしょ?私の側に必ずあなたがいる、ということをね」
「あざとい!その顔狡いわよ。ねえ、フィー」
どういう意味よ。素直に言ったのに。
「・・・俺にも言って欲しい」
なんでそうなるの?
「えっへへ、私がお嬢様にとって一番なんです」
「私も、言って欲しいです」
ボソッ、とリューナイトが寂しそうに言ったその顔に、慌てて立ち上がった。
「違うわよ、リューナイト。あなたもクルリと一緒にいつも側にいてくれているわ。皆知ってるわ」
「そうですよ。私が1番でリューナイト様が2番なんですよ」
フォローのつもりで、元気に明るく言うクルリに、誰もが微妙な顔になり、リューナイトは更に寂しそうに微笑んだ・・・。
ごめん、リューナイト。




