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アナザーストーリー・とある少年少女の物語。


 時は少しばかり遡る。それは瓦礫によって道が塞がれたとき 。

 

 「響君‼お願い、離して‼いかなきゃ響君が‼」

 

 「はなしなさい秀助‼早くしないと手遅れになる‼」

 

 その向こう側では、二人の少女が秀助と回復した慎吾によって羽交い締めにされて暴れ騒いでいた。

 

 「馬鹿か‼今いったところで無駄死にするだけだぞ‼落ち着くんだ‼」

 

 「どーだっていい‼私の命なんか、そんなものは響に比べれば‼響が死んだら私が生きてる意味なんてない‼」

 

 恵が狂ったようにそう叫ぶ。こうなってしまってはもう手がつかない。それは今までもそうだった(・・・・・・・・・)。

 

 「でも、でもわたしたちが行かないと、響君がッ!」

 

 「くそッ‼これじゃぁ拉致が明かない‼やむなしか……、慎吾‼」

 

 「あいよっと!!」

 

 このままでは逃げることができないため、しょうがなく二人の後頭部を柄で殴り気絶させる。

 

 「女にする行動ではないが、今回は勘弁してもらうぞ……、急げ‼」

 

 気絶しているふたりを、それぞれ秀助と慎吾で俵のように抱えて走っていく。大切な友が残してくれた道を。

 

        ◇

 

 どうにかして洞窟のそとに抜け出した一同は、解けた緊張感からか地面に座り込み、助かった安堵感と、友を失った悲しみに襲われている。

 

 5分ほどした頃で、気絶していた二人の目が覚めた。

 

 「ちょっと‼響は!?響は大丈夫なの!?ちゃんと助けられたのよね!?」

 

 だがしかし、その問に答えるものはおらず、皆目を伏せて沈黙を貫いており、それがことの真相を物語っていた。

 

 「そんな……。響君……」

 

 「うそ……でしょ……。何で助けにいかなかったの!?ねぇ、ねぇ‼」

 

 「バカ言うんじゃねぇ‼あのままだったら全滅してたんだぞ‼それをアイツが命をかけて道を作ってくれたんだ‼その覚悟を不意にしろってのか!!」

 

 「でも……‼」

 

 頭ではわかっている。これが最善の策だということを。でも、理屈ではすでに納得出来ない。

 それほどまでに幽香かそかの気持ちは、恵の思いは、返さなければならないそれは何よりも強い。

 

 「気になってることがある。」

 

 そこへ、ふとしたように秀助が呟いた。皆の目線が彼に集まる。注目の中、秀才と呼ばれたその男は続ける。

 

 「あいつはーー響は本当にドラゴンに気づいていなかったのか?」

 

 その言葉に皆ハッとする。確かに言われてみればおかしい。

 なぜ、索探の能力を持つ響が他になにもいないというのにあんなおおきな、しかもドラゴンという強力なモンスターを発見できなかったのだろうか?

 

 「仮にだ、これは仮定でしかないがーー」

 

 そう前置きをし、秀才は答えを導き出す。

 

 「もし、響はあえてドラゴンの所にいったとしたら?もし、俺達と別れることが目的だったとしたら?」

 

 それは全くもって根拠のない、机上の空論。

 しかしそれは、正しく真実を射ぬいていた。

 

 「でも、何で?それに霧村君じゃあどうしたって、一人じゃドラゴンに勝てないよ?」

 

 「それは俺達の知っているステータスでの話だ。あいつのことだから本当のステータスを隠していても不思議じゃない。」

 

 「あぁ、あいつならやりそうなことだ。」

 

 流石は幼馴染み二人、響のことをよくわかっている。

 本来ならそんな可能性、くだらないと一蹴するのが普通だ。だが、長い間作り上げてきた絆が、信頼があいつならと語りかけてくる。

 

 

 「でもどうしてそんなことを……。」

 

 「流石にそこまではわからない。でも、あいつは俺達、いやクラスの中の誰よりも異世界を熟知している男だ。」

 

 なら相応の理由があるのだろうと、肩をすくめながら秀助に続いて慎吾が語った。

 

 「つまり、響は生きてるってこと!?」

 

 「あくまでも仮定だ。だけどゼロじゃない。何せ、俺らはあいつの死体を確認してないからな。」

 

 その言葉に、つい先程まで取り乱していた二人の顔が明るくなる。可能性でもいい。奇跡だってなんだっていい。響が生きているのであれば、それを追いかけて探し出すまでだ。

 

 「とりあえず、俺たちのやることは決まったな。」

 

 「うん。響君を見つけ出す。」

 

 「もし霧村君がドラゴンを倒せる位強いんだったら、」

 

 「隣にたてるように見つけ出すまでに強くなる。」

 

 「あぁ、そして、見つけ出したら、俺達を置いていった罰として、一発ぶん殴ってやる‼」

 

 これは、可能性を捨てなかった少年少女の話である。

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