成田賢太郎の日記(6) 六月十五日 (火)
今度こそ、有紀子さんの退院が決定したみたいだ。嬉しいけれど、どうしよう・・。退院してからも、有紀子さんはアピタで働けるみたいだ。でも・・、彼女の日記を読んで、本当にどうしようかと迷っている。職場は同じなんだから、努力すれば関わりは持てる。同じタクシーに乗って事故に遭ったわけだし、そもそもボクたちは恋人なんだから。
でも、中村課長のことを・・魅力的だとか言われてしまうなんて。やはり、ボクたちの関係を正直に明かすべきなのか。でも、そんなことをして大丈夫だろうか・・。怖い。目を覚ました有紀子さんに初めて会ったときのことを思い出すと。ボクを見て、不思議そうにしていたじゃないか。頭がぼんやりしているだけかと思ったのに、話し掛けても答えてもらえなかった。初対面の人と話すように受け答えされて、あんなに寂しい想いはもうゴメンだ。成田ですって名乗ったのに、誰だろうって顔をされるなんて。どうして思い出してもらえないんだろう。すぐに記憶が戻ると思ってたのに・・。このままじゃ、中村課長にとられてしまう。そんなこと考えるのは失礼かもしれないけれど、本当に怖い。
有紀子さんは素敵だから、彼女からアプローチされて断る男はいない。中村課長は独身だし、仕事は真面目だし、人当たりもいい。客観的に見て素敵な男性だと思う。でも、それはボクに影響のないところでの話だ。有紀子さんをとられてしまったら、ボクは・・。有紀子さんの気持ちが彼にいかないように、ボクから説明すべきなのか? 有紀子さんに言うのは怖いから中村課長に? ボクは有紀子さんの恋人ですって? 頭のおかしいやつだと思われるに決まってる。どうすればいいんだ。
いや、中村課長に伝えてみよう。それしかない。何もせず、有紀子さんとの関係が終わるくらいなら、おかしなやつだと思われるくらいなんてことない! もともと、中村課長とは職場が同じというだけ。向こうからは、ボクのことなんて眼中にもないはずだ。怖いものなんてない、失うものなんてない! 有紀子さんを失うくらいなら、死んだ方がマシだ!
頑張るぞ、覚悟を決めろ! 成田賢太郎!




