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ロストメモリー  作者: 島山 平
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交換日記(1) 五月三十一日 (日)

 今日も、お客さんから声を掛けられた。嬉しいような、複雑な気分。昔からそうだったのに、なかなか慣れるものではない。どうせ、みんなボクの顔を見て声を掛けてきているわけだし。

 今日の人なんて『こんなとこで掃除してる場合じゃないわよ』って、とんでもなく失礼なことを言ってきた。相手がお客さんだから無視するわけにもいかないし、ひたすら我慢しなくちゃいけない。ボクが掃除をしなければ、みんな買い物に来ようって気もなくなるくせに、清掃員をバカにしている発言じゃないか。低く見られるのは慣れているはずだけれど、どうにも納得できない。


 それにしても、山岡さんはなんて素敵なんだろう。サービスカウンターの中で輝く彼女を見ている間は、嫌なことも忘れられる。外見が美しいのも関係しているはずだけれど、彼女の仕草やキビキビした動き、お客さんに接する態度が他の人とは違うからだと思う。言葉にはしにくい。でも、彼女を見ていればわかる。山岡さんが他のパートさんとは違うということは、紛れもない事実だ。実際、彼女の評判の良さはボクのところまで聞こえてくる。山岡さん目当てというか、彼女と何分間も話しているおじいさんもいるし、惹かれてしまうのは当然のことだ。美しいだけではない。彼女の不思議な魅力が輝いているのだから。接客業には、ある意味で最も必要となる才能かもしれない。

 明日になれば、また山岡さんを見られる。ストーカーみたいな発言だけれど、この日記が誰かに読まれることもないし、正直に気持ちを書いてしまおう。態度や言葉として伝えられない分、ここに本音を書いて、気持ちをリフレッシュさせておきたい。むかしから、ずっとこれでうまくいってきたんだ。

 いつか、山岡さんに話し掛けられるといいな。勇気を持て、成田賢太郎(なりたけんたろう)

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