出会いと突拍子過ぎる事実
冷たい風が頬をなでた。
「ここは…丘…なのか…?」
周りに広がっているのは夜の闇と唯一光を醸し出す満月だけ。
「なにが起きたんだ…?」
さっきまで、俺は自分の部屋にいたんだ。間違いなく。
だとすると、考えられる可能性は1つのみ。
夢であるという可能性のみだ。
寝た記憶はないが、疲れていて気がつくと寝てしまったのだろう。
それを確かめる方法と言えば…古典的なアレをやるべきだろう。
「ふぅ。それっ…って痛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
…やるんじゃなかった…。頬が痛ぇ…。
「ってことは…。これ、現実!?」
はぁ!?意味分かんねぇ!俺に部屋を出た記憶はねえぞ?
いやいや落ち着け落ち着け。そんな科学者ビックリの テレポート的なものなんてありえない。
そんなことを考えていると、視界が白に染まった。
まるで夜の闇をいきなり光がかき消したように…
光は徐々に一か所に集まり始め、人の形になった。周りは先ほどまでと同じ夜の風景。
そして次の瞬間、その光は四方に飛び散った。
そして光が消えると…
少女がいた。
見た目からすると俺と同い年くらい。
青い目、透き通るような肌、腰あたりまである白色のストレートヘアー。
まるでアニメから出てきたような外見を持つ少女は周りの風景に完全に溶け込んでいた。
「え…。えっ…。ええ?」
俺が驚きの声を上げているとその少女は少し笑いながら、
「『え』としか言えてないぞ?」
と話しかけてきた。もちろんここには俺と 少女しかいないので俺に話しかけているんだろう。
「えっと…。えー、その…君は…?」
「私?音葉。フルネームは叶=ヴェノ―ム=音葉」
叶…ヴェノーム…音葉…
ハーフか何かか。なら、この容姿も説明できる…ってそんなことよりも、
「えーっと、叶さん。さっきのって―――」
「音葉って呼ぶ!」
「え…。まぁ、音葉さんってい―――」
「だ・か・ら!音葉だって!さん付けはダメ!!」
要するに呼び捨てにしろと!?
俺、女子の名前を呼び捨てで呼ぶなんて今までなかったから無理だろ!
でも…、なんか音葉って呼ばないと話聴かないしなぁ…
はぁ、背に腹は代えられない、か…
「じゃあ音葉。お前は一体どこから出てきたんだ?俺の見間違いでな ければ光の中から…」
「ん。そうだけど?」
『何か疑問でもあるんですか?』と言いたげな顔で俺を見てくる音葉。
いや、何かってほとんど全部疑問だよ!
そんなことを目で訴えてみると、
「あっ、そうか…。彰はS側の人間なんだっけ」
「S…?何だそれ?それに何で俺の名前を知ってる?」
「名前知ってるのはパートナーだから。ってあれ、確か彰の所に王女からの手紙が届いてるはずなんだけど…、知らない?」
手紙?手紙…てがみ…TEGAMI…ってまさか…!
「ア、アレかぁぁぁぁぁぁ!!」
「っえ!?ええ!?ちょっ、ちょっと!?」
「ああ、すまん。驚かしたな…。クソっ、俺としたことが…。アレ以外に何があるんだよ…」
「あ…、えっと…。彰?」
突然頭を抱えうずくまった俺を見て、音葉 はオドオドしているらしい。
「ああ、いや…。あの手紙のこと忘れてた…」
ここに来たときのショックが強すぎてすっかり忘れてた…。
「ってことは、音葉が例の担当の者っていう」
「そう。で、ここまでなんか質問ある?」
「ええ、あるよ!ありますよいっぱいな!」
「っ…!大きい声出すな!」
「うるせぇ!」
「彰の方でしょ!!」
~閑話休題~
「とりあえず、ここは何処だ?」
「ここの丘に名前は無いけど?」
「名無し…ってことか?」
「そう、私たちは『始まりの場所』『例の丘』『新たな出会い』とか、かってに名前つけてるけど」
「適当だな…」
「ま、2つの世界の狭間っていう感じ。分かる?」
「2つの世界…?」
「じゃ、他には」
「さっきの『S側の人間』ってのは?」
「『S側の人間』のSってのは、『Science』の略。」
「Scienceって科学だろ?どういうことだ…?」
「この世には、2つの世界があって、彰がいた世界を私たちは科学世界と呼び、私たちの世界をあなたたちは空想世界って言ってる」
2つの世界…?科学世界と空想世界…?
突拍子過ぎて分からねぇ…
「で、空想世界のことを彰側は『Fantasy』って呼んで、それを略して『Fの世界』とか『F』って言ってる。私たちもその呼びかたを使ってるし」
「…はぁ」
「何?」
俺がため息をつくと、明らかにイラついた声で返された。
「いや…。なんか話が突拍子過ぎて信じらんねぇな、と」
「うっさい。事実なんだから認めろ」
「………」
くそ、完全に音葉ペースで話が進んでる…
「ま、詳しいことはいつか話すとして」
「今話せよ…」
「え~、めんどいし」
面倒だから説明省略かよ…
「とりあえず、彰をSに戻すから、なんか武器になるようなもの用意しといて」
「武器…?」
「じゃ、戻すから」
「ちょっ、まだ質問が―――」
言い終わる前に俺の視界はまた白い光に包まれてしまった…
なんとか2話目です。
新キャラ『音葉』登場です。
いまさらだけど…、なんでハーフにしたんだっけ…?
ああ、そうだ。白い髪なんて日本人が持ってるわけがないからだった。
なんか、音葉の話し方が、当初の予定とはかなり変わってしまった…
いやー、最初は『普通に優しいけど負けず嫌い』っていう予定だったのに、書いているうちに、『生意気なツンデレ』って言う設定に…。なんでだ…?
しかも『めんどくさがり屋&さびしがり屋&負けず嫌い』まで付くし…
音葉の話し方ですが、書いているうちに変わってしまっていたらすみません!
その場合は感想の方で報告していただけるとありがたいです。
では、3話目をお楽しみに!(3話目内容決まってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)