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第一話 これが異世界転生?

挿絵(By みてみん)

「ルチア様、本日も本当にお美しくあらせられます」

高級な絹のドレスに身を包み、全身鏡の前に立つ私――ルチア・フォン・グランベルク。金髪縦ロールに澄んだ青い目、誰もが見惚れる完璧な「公爵家のお嬢様」だ。

侍女たちがうっとりと溜息をつく中、私は心の中で盛大に頭を抱えていた。

(いや、中身は48歳のおっさんニートなんだよなぁ……!)

トラックにはねられた事故で転生し、三日前に前世の記憶を取り戻した俺は、己の置かれた状況に絶望していた。48年間、部屋から出ずにネットサーフィンとゲームに没頭していた熟練ニートの俺が、なぜか異世界の美少女貴族として第二の人生をスタートさせてしまったのだ。

しかも、だ。

(ドレスの裾をめくれば分かる。俺、ついてるんだよ……! なんでお嬢様扱いされてんの!?)

どうやらこのグランベルク公爵家で「お嬢様」として育てられてきたらしい。つまり、外向きには可憐な令嬢だが、実態は男の娘。そして精神はアラフィフの無職。カオスにも程がある。

「ルチア様、アストルフォ王太子殿下がお見えになりました」

侍女の言葉に、俺の背筋に冷たい汗が走る。

「ルチア、今日の君も一輪の花のように美しいね」

現れたのは、光り輝く金髪と爽やかな笑顔を持つ、この国の第一王子アストルフォ(18歳)。全女子の憧れの的であり、そして――ルチアの婚約者候補筆頭だ。

アストルフォは優しく俺の手を取り、指先に軽く kiss を落とした。

(うおっ!? か、距離が近い! 距離感がバグってる!!)

前世で女子の手すら握ったことがない48歳ニートの心が、ドゴォンと音を立てて揺らぐ。見た目は美少女だが中身はおじさん、そして身体は男。それなのに、目の前のイケメン王子の距離感が近すぎて、無駄にドキドキしてしまうのだ。

「あ、あの……アストルフォ様。本日はどのようなご用件でしょうか……?」

必死で上目遣いの「お嬢様ボイス」を作り出す。ボロが出たら即アウト、あるいは国家を揺るがす不敬罪か変態扱いだ。

「君に会いたかっただけさ。それに……君のその照れた顔を見られるなら、いくらでも足を運ぶよ」

爽やかな笑顔で囁く王子。

(やめろ! そのイケメンビームをやめろ! 俺の中の48歳おじさんが『ウヒョー!』って歓声を上げそうになるだろ! っていうか俺、男だからな!? 騙してて本当にごめん!!)

勘違いと秘密、そしておじさんマインドが交錯する、命がけの異世界ラブコメディが幕を開けた――。

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