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過去ゆく未来

「つまり……おまえたちはこの問題を考えていなかったのか? 俺を独り占めしたいと喚いている時に、もう一人の存在を計算に入れてなかったのか」


今更のように気づいた二人の反応を見て、呆れて手で顔を叩いた。


「あ、お姉ちゃんはもちろん計算に入れてたわよ。エダ妹、あの……さっき言ってた"他の人"の中に、お姉ちゃんは入ってないわよね? ね? ね?」


「……」


「ちょっと、なんで黙るの。返事してよ、エダ妹! 誰がここまで導いてあげたと思ってるの!」


「アンビティが」


エダは私をさらにきつく抱きしめ、胸板に頬を狂ったように擦りつけた。


「は? あなたを育てたのはお姉ちゃんなのに。お姉ちゃんを差し置いて、一人占めするなんて!」


「わたしとアンビティは運命の夫婦よ。たとえわたしの祖先が帝都を攻め落とさなかったとしても、それは変わらない。ヴィエルヤお姉さまは女神の意志に従っているだけ。それに、神の代行者であるなら、貞潔を守るべきではないの?」


「うぅぅ……エダ妹がそんなに薄情だなんて。お姉ちゃん、すっごく悲しい」


「ぷっ。あはははは、あはははは。じゃあまず皇権と教権の戦争でも始めたらどうだ。俺はただの領主だから、この戦いには関わらないぞ」


目の前の光景を見て、あれだけ重く圧し掛かっていた陰鬱な空気が一気に吹き飛んだ。堪えきれずに大笑いした。


「エダ妹、見て。アンビティ弟がまだ笑ってるわ。これは離間よ、離間! エダ妹、騙されちゃだめ!」


「確かにアンビティは少し調子に乗ってる。でもわたしだって他の誰とも共有したくない。たとえヴィエルヤお姉さまでも。こういうことは一歩も譲れない。もしお姉さまが言霊みたいなことをしたらどうするの」


「そう? それなら仕方ないわね。本当はエダ妹に先を譲ろうと思ってたけど——お姉ちゃんが先にいただくわ」


「まさか」


嫌な予感が走った。——的中した。


言い終わる前に、覚えのある力が一瞬にして私の身体に張りついていたエダを引き剥がし、そっと寝台の上に押し戻した。


「やめて! アンビティと離されたくない! 嫌! わたしは皇帝よ。アンビティはわたしのもの。たとえ女神が直接降臨しようと許さない。そんなことをするなら、旧神の加護を求めてやる!」


「アンビティ弟にそっくり。興奮した時の台詞まで瓜二つ。凶々しい顔して、とんでもない不敬発言。これが"夫婦相"っていうのかしらね。残念だけど、女神様は本当に降臨なさったのよ。それにアンビティ弟はみんなのものであって、エダ妹一人のものじゃないの」


ヴィエルヤは蝋燭をそのまま横に倒して立ち上がり、歩み寄ってきた。エダの姿勢を真似るように私の胸に頭を預け、身体中をまさぐり始めた。


「"みんなの"って何だ。"誰が先"って何だ。俺は人間だ、物じゃない。離せ」


「あら、でもお姉ちゃんはアンビティ弟を拘束してないわよ? アンビティ弟はずっと自由に動けるのよ」


ヴィエルヤが小首を傾げ、わざとらしく不思議そうな顔で瞬きした。指先をそっと動かしてみると、確かに拘束されていなかった。


「この嘘つき! 悪女! 処刑してやる、処刑してやる! アンビティに触るな! 触るな! 処刑する、処刑する、処刑する!」


「お姉ちゃんがエダ妹に見せたアンビティ弟と他の女の触れ合いの方がもっとひどかったでしょう。お姉ちゃんが自分でやったくらいでそんなに興奮するの?」


「目の前でやられるのと同じわけないでしょう! あの売女たちだって憎い! なぜ、なぜわたしじゃないの!」


「陛下、少し落ち着いてくれないか。あなたがそう思っている時、向こうだってあなたのことを同じように思っているかもしれない。それに陛下の兵力の大半は教会頼みだろう。王領は長年の内戦で消耗し切っている」


暴走するエダを見て、ヴィエルヤを押し退けようと手を伸ばした。エダのところへ行って叫ぶのをやめさせたかった。だが身体はしっかりと抱きとめられていた。神力ではない。純粋な腕力で。


「情緒がないのね。お姉ちゃんはもう十何年も我慢してきたの。もう限界よ。エダ妹がうるさいなら、とりあえず静かにしてもらいましょう」


「子どもの頃の俺にも欲情してたのか。このロリコン変態め」


「お姉ちゃんが好きなのはアンビティ弟であって、子どもという属性じゃないわ。アンビティ弟なら何歳でも好き。他の人間には微塵も興味がないの」


ヴィエルヤがそう言いながら顔を寄せた。清涼な吐息が鼻先にかかる。寝台の上のエダはまだ口を大きく開けて罵り続けていたが、もう一切の音が出なくなっていた。


「おまえは一体、俺の何が好きなんだ。なぜ初めて会った日から、あんなに俺のことを知っているかのように好意を示した」


「だって、お姉ちゃんはアンビティ弟のことを知っていたから。未来の記憶をたくさん見ていたの。アンビティ弟と過ごす美しい日々の記憶を」


「それが本物だとどうしてわかる。いわゆる"未来の神託"は必ず実現するのか。未来は必ず定まっているのか。それが本当に未来だと、どうして言い切れる」


「だって、一部はもう起きたもの。起きたことだけで、もう十分。——たとえば、聖タク暦一七六三年のこと」


——


一七六二年。父が戦死した年。私は軍と戦事を引き継いだ。当時の自分は、父の死の悲しみを紛らわすためか、あるいは恐怖からか——自分が死んだ後、権威が封臣を抑えられなくなることへの怯え。狂ったように戦場で騎兵を率い、何度も自ら先頭に立って突撃した。戦争で己の権威を固めようとしていた。


今にして思えば、黛娅のあの化け物が裏で干渉していた可能性もある。もっとも、鎧の防護力のおかげだと信じたいが。数度の突撃を生き延び、敵将を斬り、敵軍を撃ち破った。若くして宮相から一軍を任されるまでになった。チェルシーとの親密な縁故の力もあったかもしれない。だが黛娅に折檻される以前の、自信に満ちた自分は、そんな可能性を考えたこともなかった。


一七六三年。私は軍を率いてアムニス公爵エンタレスを打ち破り、後者を山城リスブルクへの籠城に追い込んだ末に、寝返りと講和を余儀なくさせた。


戦後、功績を賞するため、宮相は南方の広大な荘園を下賜し、祝宴を催した。——だが宴が終わった後、宮相は私だけを残し、部屋に引き入れて話し始めた。


「セナトール伯爵、少し相談したいことがある」


「なんです、マイオル宮相。また俺にチェルシーとの結婚を勧めるんですか。あの、そういう話は戦争が片付いてからにしたいんですが」


「いや、その件ではない」


「では何の件です」


「聖教の指導者——歴代の聖女の中で最も若い聖女。君もよく知っているだろう」


宮相の目には躊躇いが滲み、かすかな恐怖すら宿っていた。口調は極めて厳粛だった。


「聖女殿下? マイオル宮相、どうして急に教会の話を。教会はこの戦争で中立を宣言したはずでは」


「それこそが問題なのだ、セナトール伯爵。皇帝陛下が幼く、聖女が総教会堂に居座って中立を宣し、陛下に戴冠しようとしない。だからこそ反逆者どもに付け入る隙を与えてしまった」


宮相の声が上ずり、怒りすら滲んだ。だが瞳の奥の恐怖は消えないまま、手がそっと私の肩に置かれた。


「マイオル宮相、落ち着いてください。聖教と開戦するなど、聖教世界全体を敵に回すに等しい。鎮めたばかりの各地が再び反乱を起こすだけでなく、外国の干渉すら招きかねません」


「聖教全体と事を構えるなら、その通りだ。だが——聖女だけを標的にするなら? 実際のところ、地方教会の中にも総教会堂のやり方に不満を抱く勢力がいる。特に今期の聖女選出の後、総教会堂は極まりなく児戯に堕したと考える反対派がな。彼らはすでに私と連絡を取っている」


「叔父はこの件を知っていますか」


「知らない」


その言葉を聞いて、当時の私はほっと胸を撫で下ろした。脳裏に、いつも無理やり「お姉ちゃん」と呼ばせ、子ども扱いして頬をつねったり頭を撫でたりしてきた、あの聖女の姿が浮かんだ。


「つまりマイオル宮相、まさか俺に総教会堂で政変を起こせと」


「見抜かれたか。その通りだ。地方教派が反対者と連携し、私の支援のもと、裏表から挟撃して政変を起こそうとしている。前任聖女の姪、プリミ・グネイアを新たな聖女に擁立するために」


「グネイア家? 初代聖女にして最後の祭司ティフィカと、俺の祖先"建城者"レクスの末裔か。反対派が彼女を聖女に据えようと」


「そうだ。何代にもわたって聖女を輩出してきたグネイア家だ。彼女らは私に約束した——擁立が成れば、聖教権力を掌握した後すぐさま皇帝陛下を支持し、叛乱者の教籍を剥奪すると。君は総教会堂に頻繁に出入りしているから——」


「マイオル宮相、率直に申し上げます。地方教会の反乱に加担するのは愚策の極みです」


理性であれ感性であれ、私は宮相の発言を即座に遮った。あの時、聖女の顔がなぜか脳裏から離れなかった。そしてその傍らにいるエダの姿も。もし本当に政変が起きたら、彼女たちは——。


そう思い至った瞬間、当時の私の顔色はいくらか陰ったが、努めて平静を装った。


「わかっている、セナトール伯爵。私も迷っているのだ。この件は今のところ君にしか相談していない」


「であれば、宮相閣下。政変に協力してはなりません。逆に、政変を粉砕する側に回るべきです。総教会堂の地形が攻めにくく守りやすいことは置くとしても、この件が漏洩した場合の帰結は火を見るより明らか。密謀に参加する者は誰ですか。名簿をください。彼らを一箇所に招き寄せてください。そうすれば、聖女陛下に皇帝陛下への戴冠を承諾させる自信があります」


「アンビティ、まさかおまえ——」


「どうせ刃を交えるなら、より有利な側を助けた方が楽でしょう」


腰の剣を揺らしてみせた。

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