神は悪魔、信徒もまた
この感覚を、どう形容すればいい。重力に叩き潰される鈍痛か。灼かれるような刺痛か。刃物に少しずつ裂かれる鋭い痛みか。腐食されるような悶えか。
いいや、どれでもない。——麻痺だ。空虚。身体機能はまだ動いている。なのにそれを支えるべき臓器が奪われた。血液も気流も、本来処理されるべき要所に辿り着いた瞬間に消失する。何かに呑み込まれたかのように。そして名状しがたいものが代わりに据わっている。その動きは感じ取れる。だが知覚できない。壊死した部位を突いているような——触れているのに、触れていない。
「吾が愛しき者の意識が、吾の身体から逸れておるのう。せっかく心を頂いたというのに。じー……♡」
この比類なき美貌を持つ悪魔が、まだ血の滴る私の心臓を片手にぶら下げながら、わざとらしく小首を傾けて可愛げを装った。「じー」と効果音まで自分で口にして、真っ直ぐに見つめてくる。
「何千年生きてるか知らん人喰い婆が、俺の血肉を貪りながら歪んだ戯言を吐いて、不自然な力を笠に着てやりたい放題か。愛だと? なら何故こんな目に遭わせる。俺は愛する者をこんなふうには傷つけない」
「吾が愛しき者、真にそうであろうか。チェルシーという娘はどうだ。吾が愛しき者が己の利のためにあの子の父を殺めた時、あの子のことを思うたか」
「す、少なくとも生きている。宮相と一緒に死なせはしなかった。そ、それだけでは足りないのか」
「ならば吾が愛しき者も生きておろう。何を嘆くことがある」
「苦しいんだ」
「チェルシーは苦しくないとでも? 最も愛する者に父を殺されたのだぞ」
「そ、それはおまえには関係ない」
「吾が愛しき者のことは、すべて吾のことでもある。それにな、吾が愛しき者は本質的にとても自分勝手なのだ。汝の言う"傷つけない"とは、己の利が保たれている場合に限る。一たび気に入らぬことがあれば、すぐさま恨みを抱き、面を引き裂く。今、小さきエダと薇尔佳を恨んでおるように。彼女らが汝の権力を奪ったと思い込んでおるだけではないか。傷つけておらぬのは、ただ彼女らが汝の怒りの線を踏んでおらぬだけのこと」
「あれは本来、俺のものだ。俺の! 宮相の時代、馬に乗って街を行けば、並の貴族は俺の権威を恐れて道を譲った」
「今も大方の羊どもは吾が愛しき者に刃向かえぬであろう。それに、もしその状態を永く保てたなら、吾が愛しき者はなにゆえ躊躇なくマイオルを裏切ったのだ。認めよ、吾が愛しき者。マイオルがピラタの羊群の長ブリヌスを引き入れようとして大多数の貴族の反発を招いた時、汝にはもうわかっておったであろう。再び不確実な内戦に陥ることは、汝の利にもならぬと」
「き、詭弁だ。それに今おまえが俺を折檻する理由にはならない」
「されど薇尔佳とエダが約束したものは、すべて汝に与えたではないか。望みの封地も、象徴たる聖遺物も。宮相の地位は、そもそも約束されておらぬのだぞ」
「知らない。聞きたくない」
「よかろう。吾が愛しき者が聞かぬと言うなら、吾も語らぬ。——では、続けるとしよう」
「何を——ああああっ」
対話が途切れた瞬間、強烈な引き裂く力が両足を掴んだ。激しい牽引の痛みとともに、両足が消え去った。
「畜生! 畜生にも劣る化け物が!」
再び痛みが襲来した。動けぬ身体のまま、それでも精神を振り絞り、殺意を込めた目で黛娅を睨みつけようとした。
「吾が愛しき者よ。汝の罵りは、吾の耳には蜂蜜の如く甘美に響く。案ずるな、もうすぐ終わる」
血の匂いの染みついた手が頬を撫でた。そのまま真っ直ぐ眼窩に向かう。異物感が瞬時に走り、爪が隙間に食い込んで、眼球を抉り出した。残っていた右手も折られた。
「よし、吾が愛しき者。これでおおむね終わりだ。名残惜しいのう。また会おう」
暗闇が一瞬にして押し寄せ、私を呑み込んだ。光が消えた。このまま闇の中に沈み、死を待つのかと思った時——華麗な大広間が再び視界に広がった。胸の空虚感を除いて、四肢の欠損も全身の拘束も消えていた。私は弾かれたように起き上がった。
「ふぅっ——はぁっ」
九死に一生を得たかのように、荒い呼吸を貪った。頭を下げて自分の足を見る。ある。両手を見る。ある。首を触る。無傷。——安堵の息が漏れた。
「幻覚剤だ。さっきのは全部幻覚に決まっている。そうだ、間違いない。幻覚だ」
両腕で自分の身体を抱きしめ、先ほどの全てが嘘だったと言い聞かせようとした。だが自分の心音を聞き取ろうと耳を澄ませた時——何も聞こえなかった。胸の奥が、空洞だった。恐怖が嘔気とともに全身を這い上がってきた。
「ふぁ……よく寝たわ。アンビティ弟、どうしたの? 女神とはうまくいった? なんで丸まっちゃってるの」
必死に自己暗示を続けていた最中、ヴィエルヤがふと目を覚ました。彼女の口から出た言葉が、冷水のように全身にかかった。
「違う、違う。教えてくれ。この近くに幻覚を起こす薬草を仕込んだんだろう。さっきのは全部幻覚だと言ってくれ」
立ち上がった。一時的に失われていた手足がまだ噛み合わず、酔っ払いのようによろめきながらヴィエルヤの前に歩み寄った。胸ぐらを掴んで問い詰めようとして、バランスを崩し、ヴィエルヤの胸に倒れ込んだ。
「よしよし。アンビティ弟ったら、どうして幻覚だなんて思うの? 全部、本当のことよ」
薫香の匂いが鼻先を満たした。——だがそれが、先ほど充満していた血の臭いを思い起こさせた。嘔気が再び鼻腔を突き上げ、喉が締まった。込み上げるものを堪える。
「おぇ……っ、おぇ……っ」
かろうじて深く息を吸い込み、喉で嗚咽を噛み殺した。吐くまいと耐えた。
「アンビティ弟、一体どうしたの。全身震えてるわよ?」
「この嘘つきめ。とぼけるな。あの悪魔が俺に何をしたか、おまえは全部知ってるはずだ。心配してるふりをするな」
「アンビティ弟、そんなに興奮しないで。お姉ちゃんは、女神があなたに会いたがっていて、あなたを手に入れたがっていたことしか知らないの。それに女神はあなたのことをとてもとても愛しているのよ。悪魔だなんて言っちゃだめ」
「あの忌々しい女。悪魔。魔物。化け物。それからおまえも! おまえもエダも同じだ。おまえたちを恨んでやる! 俺は、俺は——」
身体が徐々に再適応し、足元が安定してきた。理性を失い、ヴィエルヤの腕から身をもぎ離すと、怒りの全てをぶつけるように、ヴィエルヤを突き飛ばした。エダを最初に突き飛ばしたのが無意識の反射だったとすれば、今回は明確な主観を伴っている。しかも遥かに強い力で。
——だがヴィエルヤは微動だにしなかった。逆に、突き出した手に激しい灼熱感が走った。
「アンビティ弟ったら、またやんちゃして。そんなこと言われたら、お姉ちゃん悲しいわ」
「ああああっ! 手が、手が。何をした」
「何でもないわ。精神的な罰だけよ。実際の傷は一切残らないから」
「神は悪魔だ。信徒も悪魔だ」
「そんなこと言うと、お姉ちゃんまた怒っちゃうわよ。——ほら、言って。"お姉ちゃん大好き"、"お姉ちゃんがいちばん"、"いつもわがま




