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お姉ちゃんと呼ばぬ罰

3日前に更新を再開しましたが、一昨日に母方の祖父が亡くなりました。辛いため、再び更新頻度が下がります。

「もう成人ですから、何と呼ぶかは自分の権利でしょう。それに聖女陛下は女神のこの世における代行者です。あのような呼び方は僭越に過ぎる。基本的な礼節を守っているだけです」


「……」


聖女は沈黙した。だが視線は私の全身をくまなく巡り、隅から隅まで走査するように舐め回している。


エダの眼差しが毒蛇ならば——獲物として見定められる感覚——聖女の眼差しは炎だ。皮膚を焼いてくる。エダは帝国の皇帝であっても、私に手を下すには理由と罪状が要る。だが聖女が象徴する神権は、教会全体に命じて私を敵とすることができる。感覚がこうも異なるのは、そのためだろう。


だがそれでも——何年もかけて勝ち取った成果を教会に横取りされた怒りは、抑えきれなかった。エダに対してはどうにか耐えられた。突き飛ばしてしまったことはあったが。しかし聖女を前にして、理性がついに軋み始めた。


「ご用件があるなら、聖女陛下、はっきり仰ってください。そんな奇妙な目で見つめるのはやめていただきたい」


「アンビティ弟、自分が火遊びしてるってわかってる? お姉ちゃんの機嫌を損ねたら、ただじゃ済まないわよ。最後の警告。お姉ちゃんと呼びなさい」


「お断りします、聖女陛下。それに危険なのはそちらでしょう。鎧を着て武器を帯びた相手に、そんな口を利く人がいますか」


聖女の笑みが徐々に消えた。ゆっくりと立ち上がる。表情が次第に陰りを帯びていく。——これまで感じたことのない圧迫感が押し寄せてきた。夢の中のあの人影のように。無意識に手が剣の柄にかかり、極めて不敬な言葉が口をついた。


「ふふ。アンビティ弟は本当に可愛いわねえ。お姉ちゃんは女神のこの世の代弁者よ? ただの刀剣でお姉ちゃんを傷つけられると、本気で思ってるの?」


「伏兵か。そうだとしても、その前に貴女を制圧できる。俺に何かあれば、部下が報復する」


「ふふ。やっぱり、どれだけ大きくなっても、変わらず可愛い。お姉ちゃんの中ではいつまでも子どもね。お姉ちゃんがあなたを傷つけるわけないでしょう。ただ——この先はお姉ちゃんとは限らない、というだけ」


「俺は子どもじゃない。何人もの王の首を自分の手で刎ねた。内乱を鎮めたのは俺の軍だ。政変を起こし、宮相を殺した。権力の頂点に立つべきは俺だ。あなたでも、エダでもない!」


「あら……お姉ちゃんとエダ妹のことを、そんなふうに見てたのね。道理で政変の後、あなた全体がどこかおかしかったわけだわ。本当に、女神もお姉ちゃんに教えてくれなかったんだから」


聖女の表情は依然として暗く沈んでいた。時折、小さな笑い声が漏れる。だが最初の笑みとはまるで別物だった。背筋が凍る。聖女ではなく——魔女だ。


しかもそのまま、私に向かって歩み寄ってくる。私が脅威になり得ることなど、微塵も気にしていない。


「警告する。近づくな」


「あら? ならば——まだ動けるかどうか、試してみる?」


幻覚か。聖女の身体が一瞬、光を帯びた。声色が完全に変わった。——頭痛の時に脳裏で響いていた、あの声に。


只事ではないと悟り、剣を抜こうとした。だが手を伸ばそうとした刹那——全身の筋肉が硬直した。その場に縫いつけられたように、一歩も動けない。


「どういうことだ。何の薬を盛った」


「曼陀羅草とて、かような効は成し得ぬ。さりとて毒薬ならば、薇尔佳ヴィエルヤもまた動けぬはず。違うか」


「ふざけるな。なぜ急に別人のふりをする」


「吾が愛しき者よ。歳月の長河に迷い、吾の顔すら忘れたか」


「俺に愛人などいたことはない」


「否。汝には在りし。しかも最初の者は吾にあらず。汝は吾に誓うたのだ——吾より先に婚姻を結ぶことなかれ、と。されど汝は情を以て逃れんとした。これもまた、誓約への背きなり」


「そんな記憶はない。俺に色恋の経験などない」


「無論、覚えておるまい。吾がその記憶を消し去り、理解を書き換えた。罰として」


聖女——いや、聖女に憑いたその存在が指先をくいと曲げた。硬直していたはずの身体が、意思に反して勝手に歩み出す。夢の中と同じだった。


「まさか……伝説の女神だとでもいうのか。ありえない。神話が本当だったというのか」


「ようやく吾と知ったか。吾が愛しき者よ」


女神が手を伸ばし、私の顔をそっと撫でた。何か途方もなく貴重なものを慈しむように。


「正体を知ったところで、あなたに対する記憶は何もない。それに俺はただの人間だ。あなたとの接点があるはずがない」


「吾が愛しき者よ。汝の心の奥底は、真にただの凡人で終わることを望んでおるのか。されど、今わからずとも構わぬ。いずれ汝は悟る。今は——夢の中で果たせなかったことを、成し遂げるのみ」


「何だと。ヴィエルヤの身体でそんなことをするつもりか」


「そのようなことは致さぬ。吾が愛しき者よ。吾と汝の交わりは、吾の神体を以てなすもの。吾の初めてを以て汝の初めてと換える。薇尔佳の初を先に奪わせるなど、あってはならぬ」


そう告げると、女神が唇をそっと近づけ、私の唇に重ねた。——その瞬間、聖女の身体が弾かれたように後方へ飛び、椅子に座り直した。両目はぴたりと閉じられている。眠りについたかのように。


聖女に宿っていた光が剥離し、人の輪郭へと凝縮していった。ゆっくりと、形が顕れる。古典的な美の極致とでも言うべき容貌。彫像の女神ですら十分な美女だったが、真の姿はその十倍では足りなかった。


口づけたまま顔を寄せ合っているから、至近距離でその一点の瑕疵もない完璧な顔を見つめることになった。——一瞬にして、心の中の怒火が跡形もなく消え去った。心臓が激しく打ち始める。長い間抑え込まれていた情欲が堰を切って溢れ出し、権力への渇望を完全に押し流した。


「あとは身を委ねるがよい。吾は汝の妻として誓おう。汝が求めるもの、すべて得られよう」


聖光が私と女神を包み込んだ。衣服が光に溶かされるように消えていく。夢の中と同じように、身体が操られるまま、ゆっくりと横たわった。女神が跨った。鮮血が流れ出し、私の肌に沁み込んでいった。


——封じられた記憶が、軋みを上げて動き始めた。

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