鷹と修羅場
顔を上げた。一羽の鷹が真っ直ぐに飛び込んできて、私の頭上を旋回した。鋭く甲高い鳴き声が響き渡る。やがて肩に降り立ち、羽毛で頬をすりすりと擦りつけてきた。
「アクィラ? まずい、もうこんなに早く来たのか」
「この鷹は……あなたが飼ってるの?」チェルシーが突然の来訪者に目を見張り、反射的に指先を伸ばそうとした。——途端にアクィラがゆっくりと首を回し、ガッガッと威嚇音を発して、鋭い眼光でチェルシーを睨みつけた。
「俺が飼ってるんじゃない。別の人間だ。——先に奥へ行ってくれないか」
「へえ?」チェルシーが顎に手を当て、何か思案するような目をした。
「やだ。ここにいる。あなたが困ってる顔を見ていたいもの」
「な——」
「小安! ガヴェリア妹ちゃんが使いをよこしてくれたの、帰ってきたんだって! 嬉しくて、二人で育ててる鷹を連れてきちゃった。森で狩りに行こう!」
予想はしていた。だがチェルシーにまた拒否されたことへの嘆息すら完遂できなかった。フレディの声が城の外から飛んできたかと思えば、すぐさま階段を駆け上がる足音と走る音が追いかけてくる。——くそ。
「おやおや。一つだけ聞いていい? 純粋な質問として。お姉さんが言ってたあの件だけど、あなたの本当の幼馴染は誰だと思う? 誰を選ぶの? それとも、もしフレディ女爵のお父様とあなたの政治的見解が対立したら、彼も殺す?」チェルシーがまた淡く笑った。唇の端がかすかに持ち上がり、指先で自分の首筋をすっとなぞる。
「ああ……」私は手で顔を覆った。答えようがない。遠くからフレディの興奮した叫び声が近づいてくる。——階段の上り口に差しかかったところで、ぴたりと止まった。
再び、無音の静寂。気まずさが空気を満たす。アクィラが私の肩から再び飛び立ち、フレディの周囲を旋回し始めた。それがようやく、この沈黙を破った。
「ああああああああ!」鋭く耳を劈く絶叫が城中に轟いた。——鷹の声ではない。フレディだ。
「小安、あなた! あなた! あなた! ああああ! ありえない! 嘘! この女は誰! 侍女じゃないって言って! どう見ても貴族の装いじゃない!」フレディは叫びながら猛烈な突進を開始した。その速度はまさに手綱の切れた馬。瞬く間に私の前に辿り着いた。アクィラが急降下の姿勢を取り、獲物を狙うかのような構えを見せる。
最終的に——フレディの両手が私の肩を掴み、激しく前後に揺さぶり始めた。アクィラは正確に私を避け、髪の上を掠めて通過し、その爪を椅子の肘掛けにがっちりと突き立てた。
「小安! ああああ! 答えて、どういうこと! この女は誰なの! なんで! 目を離したら裏切ったの!!!」
抵抗しなかった。頭を掴まれるまま、前後に激しく揺さぶられる。世界が目の前でぼやけ始めた。眩暈。吐き気。
「ぷっ」チェルシーが口を押さえて、笑い声を漏らした。
「大声で喚いて。品性の欠片もない。貴族とはとても思えないわ」
「はぁ?」フレディが私をぱっと放し、チェルシーへ振り返った。激しく走ったせいで顔に張り付いていた栗色の髪を払いのけ、殺意の籠もった目でチェルシーを睨みつけた。
「まだこっちから追及してもいないのに自分から挑発? ちょうどいいわ。小安が言わないなら、あなた自身の口から言いなさい。あなたは何者」
「ふふ、私はアンビティの幼馴染よ」
「この女、何を出鱈目言ってるの? 小安の幼馴染は私一人だけ。小安に会いたくて興奮しすぎて剣を侍女たちに預けてこなかったら、今すぐ抜いて真っ二つにしてたわよ」
「傲慢な上に自惚れ屋。周りの人間はみんなあなたを甘やかしてきたんでしょうね。幼馴染は幼馴染よ。あなたがどれだけ否定しても変わらない。それに、私の方があなたよりアンビティのことを知ってると思うわ。あなたは本当のアンビティがどんな人間か、わかってる? 彼の本当の姿を受け入れられる? それとも、自分を甘やかしてくれる姿しか受け入れられないの?」
「小安のことは当然わかってる。あなたの口は本当に卑しいわね。躾けてあげなきゃ」そう言って、フレディが平手を振り上げた。——これは傍観できない。咄嗟に手を伸ばし、フレディの手首を掴んで止めた。
「嘘! 小安、私の手を止めるの! そんなにこの女を庇うの? 前は絶対こんなことしなかったのに!」
「もし俺を殴るなら止めない。だがチェルシーを殴るのは、黙って見ていられない」
「なら、あなたを殴る」
そう言い放った瞬間、掴まれていない方の手を固く握り、私に向かって振りかぶってきた。——戦場で鍛えた反射が勝手に働き、頭を下に沈めて拳をかわした。
「止めないって言ったじゃない!」
「止めないとは言ったけど、避けないとは言ってない。噛みつきや引っ掻きなら耐えられるが、その拳を喰らったら顔が潰れかねない。俺の見栄えに関わる」
「小安の怪我した顔も好きだから、私は気にしないわ」
「俺が気にする」
フレディの手を離し、後ろに下がった。両腕を広げて、チェルシーを背中に庇った。
「アンビティ、こっちを向いて」
「何だ」
チェルシーの声に応じて振り返った。——パァン、と乾いた音が響いた。頬がひりひりと焼けるように熱い。
「ああああ! この女、よくもわたしの小安を!」
「別に。フレディ女爵の攻撃方法が面白かったから、試しただけ。——あなたはフレディ女爵の攻撃は避けたのに、私のは避けなかった。それって、私の方が大切ってこと? ふふ」
「でたらめ言わないで! 間に合わなかっただけに決まってる。くっ……絶対に思い知らせてやるんだから!」
フレディが再び突進態勢に入った。拳を固く握り、駆け出す。アクィラは椅子の上でそっと首を傾け、静かに眺めている。時折、コッコッと小さな声を漏らしながら。
「何度でも言う。チェルシーを殴ろうとするなら、許さない」
私も逆方向に走り出し、フレディの腰に腕を回してがっちりと抱え込んだ。前進を完全に阻止する。
「ああああ、小安、なんでそんなにあの女を庇うの! 離してよ離して!」フレディの腕がめちゃくちゃに振り回される。不満の限りを叩きつけるように。
「あいつのことが大切だからだ。おまえだって同じだぞ。誰かがおまえを傷つけようとしたら、俺は必ず守る」
「なら小安は、もうとっくに心の方でわたしをめちゃくちゃに傷つけてるじゃない! 傷つけるのは肉体だけじゃないのよ、ああああ!」
「あなたが受けた心の傷より、アンビティに負わされた私の傷の方がずっと深いわ。"守る"なんて言ってるけど、実際には物理的に自分の歪んだ欲求を満たしてるだけで、人の内面は無視してるのよ」
「この女、自慢してるの! それから小安のことをそんな風に言わないで!」
「こんなことまで誤解できるなら、もう好きにすれば。私は事実を述べてるだけ」
「チェルシーの言う通りだ。俺は自分勝手な人間だ。大切な人間のことを気にかけはする。だが、それは常に自分の目線からだ。もし俺の利益と合致するなら——躊躇なく傷つけることもあり得る」
チェルシーの言葉が、客観的な事実として心に突き刺さった。——確かに、俺は本質的に自分のことしか考えていない。そうでなければ、宮相が新皇の件で危険だと判断しただけで寝返り、殺したりはしなかった。チェルシーがこれまでやってきたことは、所詮じゃれ合いの範囲だ。本気ではないと、わかっている。
だがもし、本当に俺を脅かすようなことがあれば——。




