↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/51

お部屋で2人きり


3人の囚われの少女達を、職員に引き渡してサラに導かれるまま、お部屋について行く。お部屋の中で2人きり。



なにかを期待して部屋に入った愚かな彼は、後悔する。さっきまでの甘い雰囲気は、無い。


通されたのは、応接室。

長い4人掛けのソファーが向かい合って2つあり、その中央には、低いテーブル。


部屋に入って、ソファーに向かい合って座った。先程までの甘い空気が無い真剣な顔に変わったサラの質問に対し、手紙と鍵を受け取った経緯を話す。


『そう。見つけたのね。届けてくれてありがとう。きっとダグラスも悔いは無いわ』

「後悔?」

鎮痛な重い空気になる。

回答の代わりに、その場を支配するのは、受付嬢サラのカサカサと手紙のページを捲る音だけ。

受付嬢にとって冒険者という観客のいないこの場所は、言うなれば、演劇の舞台裏。主演女優は、余裕という化粧を落とし、目の前には、自然体の弱さを見せる彼女がいる。そこにいるのは、年相応の女性。悲痛な顔が、ただただ、美しい。視線を手紙から外さず、静かに語りだす。


『新しい自分になるという高額な偽薬の噂は、知っている?』

「いえ、」

『カレには妹さんがいたの。少し身体の弱い。血も繋がってないし、もう結婚しちゃえっていうぐらい可愛いがってた娘さん。魔がさす事ってあるじゃない?使っちゃったの、その娘、それを』

「どう、なったんですか?」

『化け物になって死んだわ。カレは、許せなかったの。この薬は、莫大なお金が動いてる。だからきっと裏には勇者がいる。覚悟は出来ていたはずよ』

「覚悟?」

『鍵は、多分。ぼくへの運賃ね。手紙にないから。念のため全てが終わるまでは預からせてちょうだい。』

答え辛いのか、会話を変えてきた。

重苦しく静かな時間が流れる。


ゴンゴン

と、荒く応接室をノックする音、

『どうぞ、』

ギルドマスターのエッケンハイムが、怒りに燃えた顔で入ってきた。入るやいなや、

『ダグラスが殺されたぞ!』


「え!?」

『そう。早かったわね。』

驚くハヤトと違い、まるで知っていたという反応のサラ。


『カレは仕事を成したわ。』

サラの健康的な手から、手紙を受け取り、ぐっと拳を握りしめるギルドマスター

『そうか、責任をもって焼き尽くしてやる!その炎を手向けとする。』


『ところで、君は何でそこにいるんだ?』

「?」

ハヤトに気付いて、困惑するギルマス。

ギルマスの頼りになる決意表明に、普段の余裕を取り戻した彼女は、やれやれと言った態度で、こう言った。

『ヘマしたの。お馬鹿さんだから』

『あー、ギルドで匿うか?』

『手紙を知らずに運んだだけだから、見逃して貰えるかも。まだ様子見ね。』

『ダグラスにしては、抜けてたな。まぁ、いい。怪しい影を見たら、ギルドで匿うから遠慮せず、来い。』

「あ、はい。」


『お姉さんの部屋も空いてるわよ。ぼくぅ?』

「か、考えておきます。」

((雌狐が!))


ローズも調子が出てきたようだ。抜けていたのは、ダグラスではなく、このヒョロい青年ハヤト。




応接室を出て、戻ると

3人組の少女達と、付き添いの人達がいた。皆、一様に感謝の目でこちらを見てくる。その瞳には尊敬の気持ちが混じる。英雄、まるで絵本の勇者を見るような憧憬の瞳。


『あっ出てきた。』『もう帰る』『キャハハ』


親子さんと一緒に待っていてくれたらしい。


「良かったね。お母さんに会えて」

『ほんと、この度は、娘がどうもお世話になり、ありがとうございます。是非、宜しければ食事でも』×3

『来て来て』『約束ー』『絶対だよ』

「では、お言葉に甘えて」


これで飯代が浮く。いや他にも目的があるし、これは有り難い提案だった。

約束をして、見送る。


『バイバイ』『またね』『キャハハ』


あぁ良かった。

終わった。と安堵した。



偽薬の製造工場を焼却破壊するため、ギルドは最優先の忙しい仕事モードへと切り替わる。

なにか出来る事は?と聞いたが、この仕事には、安全のためハヤトは参加を認めないとクギを刺された。


少ししょんぼりした顔で、ギルドを出ようとする青年。

『良くやったなハヤト!』

力強くそして優しく、肩を掴まれた。

「あー、ゼオン。」

『しょぼしょぼすんな。代わりに皆で暴れてくるぜ!ダグラスのおっちゃんには昔、世話になったからな』

「頼むよ。」

『それと今回の件で狙われるかもしれない。その時は、頼ってくれ』

「ありがとう。」

拳と拳をガツンと合わせて、帰路につく。

随分と情報の広がり方が早いようだ。ツイッターよろしくお喋りな人がいるらしい。侮れない。



久しぶりの我が家、娘娘亭に帰ってきた。

1階の飯屋から、食欲をそそるいい香りが、ハラを刺激する。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ええ人や……!(なるべく裏切らないといいな)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。