第七話
お待たせしました!
今回はやや短めです。
ではどうぞ
『トンネルを抜けると、そこは雪国だった』とか言う一文から始まる小説が会った気がする。
これは、読み手のインパクトがどうのこうのって高校の時の教師が話していた気がした。
確かに景色が一変するのは、目で見てもインパクトがある。ならもし出だしのインパクトを求めるなら崖の縁であろうと鳥居の上であろうと違いは無いわけだ。
…いや、ありすぎるか。全然違うか。
そもそも普通に生活していれば鳥居の上に登る人なんぞいるはずも無い。そんなとこに行くのはよっぽどの馬鹿か、酔っ払いぐらいのものだ。
まぁ何故この話を始めたかと言えば要するに僕がそんな状態になったわけで。
何か手足が落ち着かないと思って目を覚ますと、鳥居の上で仰向けに寝ていた。意味がわからん。
昨日の最後の記憶は、萃香さんにしこたま酒を飲まされたところだ。そこから何をどうしたら鳥居の上で寝る事に繋がるんだろう…
うーむ…分からん。
「イテテ!」
頭を動かすとズキズキと痛む。完璧な二日酔いだ。吐き気はそこまでしないが、頭が刺すように痛む。血管の動きだけでもズキズキするから困る。
「おはよう〜葉月。立派な二日酔いだね〜。」
酒の匂いと共に萃香さんが現れる。
アカン、今お酒の匂いを嗅ぐのはアカン。あぁ…気持ち悪くなってきた…
「あの程度で二日酔いなんて…情けないねぇ。」
「鬼と同じ基準で考えないでくれませんかねぇ?」
「霊夢を見て見なよ。元気に片付けてしてるじゃないか。」
あれと一緒にしないで欲しい。博麗は元気も元気。ブツクサ文句を言いつつ、散らばったものを片付けてる。八つ当たりのように参加者を蹴飛ばしながら。
紅魔館組、白玉楼組、八雲家、永遠亭一同などはすでに帰っている。慧音さん等の真面目な人達はしっかり自分で使った食器を片付けて帰っていった。
残っているのは白黒とか一部妖怪、妖精ぐらいだ。
蹴り飛ばされた霧雨が寝惚けたまま、博麗と素手で勝負しようとしていた。お前…弾幕ごっこで負け越してるのに、勝てるわけ無いだろう…
案の定、綺麗に関節を決められて、地面をタップしている。こっち見ないで。何?タ・ス・ケ・テ…無理ですね。アイコンタクトお疲れ様でした。あ、嘘嘘。睨まないで、今度なんか奢るから。
「萃香ー!葉月さーん!そこで見てないで手伝いなさーい!」
「イデデデデ!霊夢!折れる!腕折れちゃうんだぜ!」
「…対岸の火事とはいかんのか…行かないと関節、ヤられますよ…アレ。」
「それは嫌だねぇ…大人しく手伝おうか。」
お手伝い中…。
「終わった〜……」
最後の一枚だったお皿を洗い終わり、魂が抜けるようにヘタリ込む。情けないとは思うがこんなに食器を洗ったのは久し振りだ。
修行してた時いらいかな。腕イテェ。
歩くのも億劫なので、芋虫の様に這って縁側まで移動。片付けを終えた博麗がお茶を飲んでおり、萃香さんは寝ていた。
「終わったぞ〜。」
「お疲れ様、ハイ。」
お茶の入った湯のみを受け取りまず、一杯。うめぇ。
縁側で、まだ残っている桜を見ながらお茶を飲む。
春の陽気も相まっていい雰囲気を醸し出している。素晴らしいの一言に尽きる。
「ついでにお賽銭も入れてくれたらより嬉しいんだけど?」
「お前の言葉で全部台無しだ、この野郎。」
珍しくいいこと言ったと思ったらこれだよ…
いや、隣で萃香さんが腹ボリボリ掻いてる時点で台無しか…締まらないなぁ。
「そうだ。博麗、この後暇だろ?」
「決めつけられてる事に腹たつけど、確かに暇ね。」
「よし。じゃあ、髪切ってあげるよ。」
……
一度ブルーシートを取るために家に戻り、外に新聞紙を広げて、椅子を真ん中に置く。新聞紙は勿論『文々。新聞』ですね。ブルーシートは香霖堂から購入した奴。
「葉月さん散髪なんてした事あるの?」
「一応ね。手先は器用な方だし、友達の髪を切ったりしてたんだ。自分の髪も自分で切ってるし。」
「ふ〜ん。」
そこまで興味がないのか素っ気ない返事。
真ん中の椅子に座るとリボンを解く。ふわりと髪が腰まで下がった。
「ほんと伸びたなぁ。どれくらいまで切る?」
「肩までで良いわ。」
「ほいほい。じゃ、ブルーシート巻くぞー。」
髪の毛がつかないよう首から下をブルーシートで覆い。霧吹きで髪を濡らす。
この霧吹き。河童に頼んで作って貰ったもの。いや〜河城マジで有能。ホントは農業用に作って貰ったものだが、一応余りで作って貰った分を今回使っている。
農薬塗れの霧吹きなんぞ使って欲しくないだろ?
ショキショキと音を立てながら切って行く。
そういえば女性の髪を異性が切るのは、あんまりよろしくなかったような気が…いや。だったら外の世界の散髪屋とか美容院はどうなるって話か。
いかんいかん。集中しないと。
「葉月さん。」
「うん?どした。」
「…ありがとう。」
それは何に対してだ?髪を切る事か?それともさっきの片付け…?…まぁなんでも良いか。
「どういたしまして。」
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「あれ?そういえば霧雨は?」
「腕の骨と身体が離れたから、永遠亭に行ったわ。」
「おま…手加減…」
「してるわよ。失礼ね。」
「ハァ…そうか。で、永遠亭にはお前が運んだのか?」
「するわけ無いじゃない。めんどくさい。」
「…霧雨ェェ……(今度なんか美味いもん奢ってあげよう。)」