一、僕は何をみたんだ?
見慣れた自室の安全は、本当に本物でしょうか。
スマート家電の通知、静かな一人暮らし——ごく普通の日常が不協和音を奏で始める時、本当の恐怖はドアの向こうではなく「すぐそば」に潜んでいます。当たり前がゆっくりと崩れていく怪異を描く、ショートホラー短編集。
『僕は何を見たんだ —日常の歪み編—』
第一話:防犯カメラの夜
一人暮らしを始めて半年。防犯のために取り付けたスマートドアカメラのアプリが、深夜2時に通知を鳴らした。
『玄関前で動体を検知しました』
画面を開くと、画面越しに見える廊下は静まり返っている。誰もいない。だが、通知は鳴り止まない。
『動体を検知しました』『動体を検知しました』
アプリの緑色の検知枠が、何もない空間を捉えてカチカチと小さく動いている。枠はゆっくりとドアに近づき、やがてカメラのレンズそのものを覆うように画面全体へ広がった。
画面が真っ暗になる。不審に思い、ふとドアの覗き穴に目をやった。
外から、こちらを覗き込んでいる「目」とバッチリ合ってしまった。
その目は、ドアの外ではなく、ドアの内側(自分の部屋側)のスコープの枠に張り付いていた。
第1話をお読みいただき、ありがとうございます。
最も安全であるはずの「自室」で、いつも使っている家電が少しずつ狂い始めていく違和感をお届けしました。
画面の通知や微かな機械音に、ふと恐怖を感じていただけたなら幸いです。次のお話もどうぞお楽しみに




