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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
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得るもの失うもの(2)

 敵する二人の装鎧戦士(エルフィンアーマー)は慌てて倒れている誰かの剣を拾いに行っている。しかし、何本揃えたところで正輝のサイコブレードに抗するのは無理だ。事実、必死に念動をまとわせた剣でも、プロテクタに当たると砕けてしまっている。


「無駄だって。降参してくれ」

「できるか! したら、お前は俺を国に突きだすだろうが!」

「そりゃするよ。でも、自分の罪なんだから自分で贖え。死ぬよりマシじゃん」


 当たり前の道理を説く。しかし、盗賊連中にとっては綺麗事にしか聞こえないらしい。性懲りもなく攻撃してくる。


「変身できるようになって気が大きくなってたのか。もう少し謙虚さが残ってれば、ここで逃げるって決断もできただろうにな。逃さないけど」

「うひぇあー!」

 頭目戦士の掛け声もほぼ悲鳴に近い。


 斬るまでもなく打ち払う。地面を転がって痛みでもがくだけだ。もう、気力も失われていて抵抗する意思が尽きかけていると思われる。


「っても、どうしたもんか。装鎧少女(エルフィン)を剥ぎとらないといけないってのに」

(それは難しくありません)

 エメルキアが提言してくる。

「ほんと?」

(斬り殺してください)

「物騒だな!」

 装着者が死ねば離れるのだろうか。

(致命傷を負ったら解除せざるを得ません。そのとき、装鎧少女(エルフィン)は装着者の身体を再生させます。実際に死ぬことはありません)

「そうなのか。だったら問題ないな」

(ええ、遠慮は不要です。それに、一度経路が閉じてしまうと、その装着者は二度と開かなくなります。つまり、再び装鎧戦士(エルフィンアーマー)になることも適わなくなるのです。わたしたちにも一つだけリスクはありますけど)


 閉じるというのは表現のあやで、実際には損傷してしまうという。その傷が癒えることはないのだそうだ。


「ちょっと怖さはあるけど、ひと思いにやっちまうのが正解か」

(はい。誰も命まで失うことはありません)


 どうにか立ちあがった盗賊戦士を斬り伏せる。袈裟に落としたサイコブレードは肩口から入り、深く脇腹へと抜けていく。派手に血がしぶいた。


「んぎゃああー!」

 痛みだけはある。


 倒れた男から光の粒子が舞いあがる。徐々に露わになっていく中身は見る間に傷が修復されていくところだった。


「間違いないな。だったら!」

「やめてくれぇー!」


 頭目戦士も薙ぎ払いつつ走り抜ける。心臓のラインからは少し下だが十分に致命傷になるだろう。少なくとも出血が止まらなければ数分の命ということろ。

 頭目からも光が剥がれていく。最初は無惨な斬り傷がさらされるものの、それはすぐに修復されていく。内蔵まで見事に治っていくのだから驚くべき現象だ。


(これで、こいつらは捕まるうえに二度と変身はできないわけか)

 正輝にとっては非常に都合のいい結果である。


「え、ちょっと……」

装鎧少女(エルフィン)はほとんどの力を失ってしまいますけれど)


 舞いおどる光の粒子が集合して一つの形をなす。ただし、それは装鎧少女ではなく小妖精(リトルエルフィン)であった。


「そんな、つもりじゃ……。ごめん」

(いえ、これは解放なのです。この子たちの様子を見てください)

 ふらふらとしながらも苦しそうではない。

(繁殖形態であることが喜びではありません。わたしたちの喜びは契りを結ぶ相手が素敵なパートナーであるか否かだけ。強制された契りこそが苦しみなのです)

「そう……だったのか」

(マサキが解放したのです。どうか恵みを)


 意識もせずに小妖精たちに手を差しだした。彼女たちは安堵の表情で近づいてくる。仮面までたどり着くと感謝のキスが捧げられた。


「君たちは」


 叶うかぎりの精気を渡す。少し身悶えしたかと思うと一気に元気になった。嬉しそうに舞いおどった二人は感謝のあまり抱きついてきた。


「よかった」

 そっと支える。

「南へ。海に出たらパムール島ってのがある。そこには君たちが自由に生きていくすべがある。仲間もいる。行けば、すぐにわかるから」


 飛んでいくに十分であろう精気を追加で与える。上気した頬を見せた小妖精たちはもう一度キスをして飛びたっていった。きっと島までたどり着けるだろう。


「これでいい」

(はい、同族に代わってマサキに感謝を)

 エメルキアの心からの喜びが伝わってくる。

「強いー」

「素敵な光景だったわ。マサキ、その、本当にありがとう」

「いや……、うん、いい」


 ジノグラフにおいて自分の行いが正しいのかどうかはわからない。ただ、妖精種(エルフィン)にとっては最高の施しであるのは理解できた。今はそれで構わないと思う。


「マサキ、やってくれたな! ありがとう!」

 自警団長のトラコが肩をどやしつけてくる。

「ああ、そうだった。興奮して忘れてた。誰も怪我してないよな」

「当たり前だ。マサキが全員ぶちのめしてくれたからな。家は少しばかり壊れたがなんてことはない」

「あ! さらわれた若い娘たちっていうのは?」

 いろいろとよみがえってくる。

「今からこいつらを絞りあげてアジトを吐かせる。すぐに救助に向かわせるから心配するな」

「そうか。万事上手くいったんだな」

「そうだ。全部お前のお陰だよ。誇れ。でも、装鎧戦士(エルフィンアーマー)なのを黙ってやがったのはちょっと苛立たしいぞ」


 単なる軽口であるのは表情を見ていればわかる。皆に感謝の言葉を投げ掛けられながら変身を解除した。残っていた娘たちは憧れの視線を向けてくる。


(正解、なのか? 俺は正義をやれたのか?)


 正輝は照れながら手を挙げて応えた。

次回エピソード最終回『得るもの失うもの(3)』 「なに言ってんだい?」

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