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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
妖精拠点と幻惑作戦

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メタルハンター(5)

 メタルハンターが乗ってきた走りトカゲに、荷物の中にあった毛布でくるんだ遺体を乗せて固定する。手綱をバイクに結わえて、ゆっくりと引いてキオーヌの街まで帰るのだ。スピードが出せず、途中で一度夜営を挟んで翌日に到着した。


「というわけで、俺が見つけたときにはもう、な」


 狩人ギルドに遺体を運び、森で自分たちで食べる分の狩りをしようとしていたらメタルハンターの男が入っていくところを見たと証言する。その後、悲鳴を聞いて駆けつけたときには死んでいたと。


「そりゃ、ありがとさん。弔ってやれるだけマシだろう」

 受付の担当が家族に伝えるという。

「ところで、あいつを殺ったのは?」

「小さめだったがメタルビーストだった。だから、あんな有り様に」

「そうか。お前さんは無事だったんだな」

 不審がられてしまう。

「実は俺、流しの装鎧戦士(エルフィンアーマー)なんだ。だからさ」

「じゃあ、それは?」

「俺の装鎧少女(エルフィン)。内緒だぜ。はるか彼方の俺の田舎じゃ普通なんだが、こっちは国に管理されてんだろ? バレると面倒なんだ。その代わりと言っちゃなんだが、あいつが卸すはずだったもんを渡しとく」


 気前よく革袋をカウンターに置く。見せ掛けだけで、本当はほんの一部でしかない。


「入荷が減ると困るんじゃね?」

 口止め代わりと匂わせる。

「まあな、ノルマがあったりするから」

「そりゃ、よかった。じゃあ、そういうことで」

「待ってくれ。あんた、あいつの代わりする気がないか?」

 持ち掛けてくる。

「代わり? 俺にメタルハンターをやれって?」

「そうだ。入荷が滞ると困る。かといって、やつの狩り場を聞きだして、他のメタルハンターに教えるのは連中の流儀に反するからな。引き継いでくれるとありがたい。あんたが装鎧戦士(エルフィンアーマー)なんだったら怖いものなしじゃねえか」

「悪くない話だな。しばらく稼げるなら都合がいい」


 あっさりと話を切ろうとしたのは、向こうから持ち掛けさせるためだ。そのために、狩り場の場所を一度たりとて口にしなかった。

 装鎧戦士(エルフィンアーマー)であると打ち明けたのも心理的効果を狙っている。持ち掛けやすくさせるためだ。受付は彼の誘導に引っ掛かった。


「実はあいつ、最近獲物が減ってきたってぼやいてた。ビーストがいるからスライムが減ってたんだな」

 内部情報も教えてくれる。

「他にもビーストがいるかもしれない。でも、装鎧戦士(エルフィンアーマー)のあんたなら問題ないな。他のハンターになんて頼めないし」

「そうすっか。しばらく狩ってたらあそこも落ち着くだろ。俺もいつ流れてくかわからないしな」

「契約成立だ。じゃあ、ギルドに登録してくれ。今日からあんたはメタルハンター」


 話は狙ったとおりにトントン拍子に進む。これで不審がられることなくキオーヌの街に出入りできるというもの。実際にはただの補給地点で、これからは疑われることなく狩り場深部のコバルト鉱床の探索に入るのだ。


「マサキ・コーノギか。これが狩人ギルド証だ。警備に見せれば通行税を免除になる」

 印章の掘られた木の札を預かる。

「助かる。こっちが俺の装鎧少女(エルフィン)で、こっちは妹だ。魔法が得意だからいろいろと手伝ってもらってる」

「そうか。よろしくな」

「よろしくする」


 目的どおりの手続きを終えて狩人ギルドを出る。宿に戻ったところで平謝りする。


「ごめん、勝手に装鎧少女(エルフィン)だってバラした。それっぽく扱ったのも申し訳ない」

 ひざまずいて詫びた。

「いいですよ。『俺の装鎧少女(エルフィン)』って響きが悪くなかったです」

「ぼくもそれがよかったかも」

「いや、事実でもあるし。ランゼは俺と契りを交わしてないだろ?」

 名案みたいな顔をしているランゼッタを諭す。

「する?」

「おい、子作りの次のネタはそれかい」

「本当にしてもいいのに」


 正輝と契りを交わして装鎧少女(エルフィン)になりたいという。しかし、彼はすべきじゃないと思っている。


「だって、一度契りを交わしたら最後、ランゼは俺に縛りつけられるようなもんなんだぞ? したいことができたってできなくなる。それはなんか違わね?」

 事情が許せば自由の道もあるのだ。

「んー、したいことないし、契ったらそれがしたいことになるかも」

「お試しでってわけにもいかないじゃん」

「子どもできることも?」

 彼女は役割を求める傾向がある。

「そっちはお試しもあるけど、俺の流儀じゃないから駄目」

「なんだ。じゃあ、妹で我慢する」

「なんだか一番深い結びつきを強要された気がする」


 上手く乗せられた気もするが気にしないことにした。当面は身分保障されたのはありがたい。


「マサキったら、よく見事に嘘ばっかり並べたものね」

 ティナレルザが皮肉ってくる。

「前に言ったろ? 俺は別の世界にいたって。そこじゃ演技をする仕事をしてたのさ。この程度の芝居、お手のもんだぜ」

「嘘、上手ぅー」

「うう、ロナに純粋に褒められると胸に刺さるもんがある」

 若干の後ろめたさがよぎる。

「ともあれ、ちょっとだけ土台ができました。明日からはもっと流体金属(メタル)集めに勤しみましょう。ほくほく」

「うう、女房に完全にコントロールされてる亭主の気分なのはなぜ?」

「そのとおりだからじゃない?」


 ティナレルザにとどめを刺されて床にうずくまる正輝であった。

次回『狩り場深部探索(1)』 「どっちかっていうときれいなほうだと思うぞ、ランゼ」

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