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霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?  作者: ピラフドリア


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第85話 『核を破壊せよ』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第85話

『核を破壊せよ』





 私と黒猫だけという最悪な戦況。




「これは……」




 真っ白ににもない空間。そこに移動してから黒猫は耳を立ててキョロキョロと周りを見渡している。




「どうしたのよ、さっきから」




「この霊力の感じ。前にもあった」




「前にも?」




 私が頭にハテナを浮かべていると、先生は脇に教科書を挟んで拍手をした。




「正解だよ、黒猫君。君達は前にランランのゲームに招待されたことがあるね」




「ランランのゲーム……」




 それを聞き、黒猫はハッと思い出したように、身体を起き上がらせる。




「鬼ごっこか!!」




「そう、またしても正解だ。あの時は僕の能力で視聴者を隔離していた。しかし、この特殊隔離空間に気づけるとは、君以外と霊感強いね?」




「…………そりゃ〜どうも」




 あの時のゲームの舞台はこの先生が作ったものだったのか。しかし、前に比べると空間は狭いし、何もない。配置物やデザイン、広さなどはその時によって変更できるということなのか。




 しかし、そんなことが分かったとしても、私達だけでこの先生をどうするか。




「おい、レイ。どうする? 体力持つなら助けが来るまで逃げ切るか?」




 黒猫は逃げるという選択肢を選ぶつもりだ。しかし、この狭い空間で逃げ切れるか。いや、長い時間は持たない。

 それに私達がやられれば、次に狙われるのは楓ちゃん達だ。向こうの坊主の方が明らかに強そうだった。ここは、




 私は背負っていたバッグを勢いよく地面に叩き下ろす。




「タカヒロさん、ミーちゃん。ここは私達でなんとかするよ!!」









 そう意気込んで宣言した私だったが、




「何が私達でなんとかするだ!! 全然ダメじゃんかァーーー!!!!」




 黒猫を頭を乗せて、全力で走り回っていた。




「イヤァァァ!! なんなのよあれ!!」




「知るか!! 空間生成とは別の能力なのか!?」




 先生は国語の教科書を開き、開いた教科書の上に半透明の斬撃を作り出して、それを私達に飛ばして攻撃してきていた。




「黒猫君、それは不正解だ。これも同じ力さ。僕の術で作り上げた異空間の塊、それを発射して斬りつける。カマイタチ……」




 一つ一つの斬撃で地面が抉れるほどの切れ味を持つ。連続で放つことはできないようで、一発撃った後に5秒ほどのチャージ時間がかかる。だが、その5秒で距離を詰められるほど、私の身体能力は高くない。




「おい、このままだとジリ貧だぞ!!」




「分かってるよ。だから今準備してるんじゃない!!」




 私はリュックを前に背負って、中身を漁る。そしてある物を取り出した。




「とりあえず、今は時間稼ぎよ!!」




 私は取り出した物を、先生に向かって投げつけた。




 投げた物体は先生の元まで届かず、私のすぐ前にゴトンと音を鳴らして落下した。その後、コロコロと転がっていくが、それでも先生と私達の中間当たりまでしか行かず、それは動きを止めた。




「おい!! なんなんだよ!! 何がしたいんだお前だ!!」




 黒猫が肉球で頭を叩いてくる。だが、私の作戦はこれで良かった。




 私が投げた物はダンベル。




 ダンベルが地面を転がり、先生は不思議な顔でダンベルを見つめる。そして首を傾げて動きを止めた。




「何が時間稼ぎだ、戸惑ってるだけじゃねーか!!」




「違うよ、よく見なさい!!」




 私が投げたダンベルは普通のダンベルではない。前にマッチョ達を苦しめた呪いのアイテム。




「まさか、あれは呪いのダンベルか!!」




 夏目さんの作ってしまった呪いアイテム。呪いのダンベルだ。




 あのダンベルの効果は使ったものの筋肉を死滅させるという効果がある。しかし、この戦闘において時間のかかるその効果は意味を成さない。

 私が狙ったのはもう一つの効果。




「なんでしょう、あのダンベルは……。なぜか、無性に使いたくなる……」




 先生は誘惑に負けてダンベルを持ち上げる。そして戦闘中だというのに、教科書を閉じてダンベルを上下させ始めた。




 あのダンベルには多くの人を魅了する不思議な呪いもある。呪いを多くの人へとばら撒くために、人から人へと宿主を変える呪い。

 前にあったジムから移動して新しいジムへ移動していたのも、その呪いが影響している。




 私の狙いはその誘惑で先生の動きを一瞬止めること。




「な、何やってんだ、アイツは……」




「さぁ、今のうちよ」




 私はリュックの中から次なるアイテムを取り出した。それはDVDプレイヤー。折りたたみ式で開くと画面があり、電源がつく。




 中にはすでに例のディスクを入れてある。




「私達で先生を倒すの。なら、邪魔をされないように、まずは逃げ場をなくすよ」




 画面に砂嵐が現れると、陽気な音楽が流れ始める。そしてマッチョな男が画面に映った。




「コイツって確か……」




「夏目さんからもらった、逃げられないエクササイズDVDよ!!」




 それは夏目さん家に行った時に、部屋に閉じ込められそうになった呪いのDVD。この空間が見室ならば、この呪いの効果はあるはずだ。




「これで彼がもしこの空間を解除しても逃げられない」




「それはそうだが、どうやって倒すんだよ!?」




 DVDが流れ始めたあたりで、ダンベルの呪いの効果が薄れたのか、先生は正気に戻りダンベルを投げ捨てる。




「変わったアイテムを持っているようだね」




「まだまだこれからよ。存分に楽しんでいきなさい」




 私は今度はリュックの中から、ぷにぷにした物体を取り出した。




「うぉ!? お前、そのスライム持ってきてたのか!?」




「スライムじゃないダイフクって呼びなさい」




 私は数日前に名付けたばっかりのダイフクを地面に優しく置くと、次にリュックから牛乳パックを取り出した。




「おい…………まさか」




「さぁ、暴れ狂うのよ、ダイフクの分裂体達よ!!」




 私は牛乳をダイフクにかけ始める。すると、ダイフクの身体から次々と赤いスライムが分裂して増殖を始める。

 その様子に黒猫は連続猫パンチで私の頭を叩く。




「なぉぁにやってんだ!! あのスライムの凶暴さは知ってんだろ!! コイツに勝てても、俺達も食われちまう!!」




 赤いスライムを30匹ほど増やした後。私は大事にリュックの中にダイフクを戻す。




「さぁ、やりなさい!! ダイフクの分裂体!!」




 私は赤いスライムに戦うように命令を出す。しかし、私の命令を赤いスライム達が聞くはずもなく。




「………………こっち来たァァァァァ!!」




「だから言っただろうが!!」





 飛びついてくる赤いスライム達を掻い潜って、闘争劇を始める。




「ヤバイヤバイヤバイ」




「お前のせいでやばいんだよ!!」




 黒猫が頭を何度も何度も叩いてくる。




「分かってるよ!! なら、こうすれば良いじゃない!!」




 私は赤いスライムに追われながらも、進行方向を変えてある人物の方へと向かう。




「パスよ!!」




「え?」




 私は先生の近くまで走って途中で直角に曲がる。そうやって赤いスライムの標的を、私から先生へと移した。




「よし、上手く標的を変えたぞ!!」




 赤いスライム達は先生に向かって飛び上がる。




「こんなスライムに僕が苦戦するとでも?」




 先生は教科書を開き、再びあのカマイタチで赤いスライムを攻撃する。赤いスライムの集団は、斬撃で真っ二つに切断される。




「赤スラーー!!!!」




「略すな、てか、あの程度じゃ……」




 そう、切られてもあの赤いスライムは、




「僕のカマイタチでも無傷だと…………」




 先生は顔を青くして驚きの表情を浮かべる。そう、あの赤いスライムは斬られた程度では、ダメージを受けない。

 切断されても分裂して増殖スライムに、先生の顔は引きずる。




「…………こんな生き物、見たことない…………」




 先生が怯える中、赤いスライムは一斉に先生へと飛びつく。そして身体中を覆い尽くして、スライムの中へと取り込んだ。

 半透明な赤い液体の中に、先生の姿が滲み見える。




 まだ意識があるようだが、時期に窒息して吸収されるだろう。黒猫は目を逸らして、先生のことを見ないようにしている。

 そんな中、私は




「私は残虐な人だから、この程度じゃ許してあげない」




 もう一つのアイテムをリュックの中から取り出した。それは紙をくるくる巻いた巻き物。




「さぁ、これでトドメよ!! 火遁の術!!」




 私が巻き物を広げると、巻き物から炎の弾が出現して前方へと発射された。炎の弾は赤いスライムに包まれている先生に接触すると、真っ赤な爆炎となった。




 弱点である熱を浴びたことで、赤いスライムはドロドロに溶けて消滅する。吸収されそうになっていた先生だが、全身大火傷で一命を取り留めた。




「お前、そんな巻物持ってたのか」




「忍者からもらったのよ」




 巻物をリュックの中へとしまい、私は倒れている先生の元へと向かう。腹が上下していることから呼吸はしているし、意識はあるようで寝っ転がりながらこちらに目線を向けた。




「この僕が負けるなんて……」




「さてあなたは倒したことだし、元の場所に戻してもらおうかしら?」




「はぁはぁ、それは簡単なことだ。そこに光を放ってる球体があるだろう」




 先生はそう言って寝た状態で、空間の端にある光る物体に目線を向ける。




「あれを破壊すれば、僕の術は解ける。……まぁ、戻ったところで彼がいるけど……ね」




「彼って、あの坊主のこと?」




「そうだよ。彼は霊能者を集めた闘技大会で、準決勝まで勝ち進んだと言っていた。僕は元々、霊能とかには興味はなかったけど、あの人の実力は本物だよ……」




 先生は坊主の話をしながら、ニヤリと笑った。そして




「早乙女 京子。彼女じゃ、勝て……ない」




 そう言葉を残して気を失った。気を失っただけのため、生きてはいる。全身火傷だけど、生死に関わるレベルではない。

 私は先生に背を向けると、彼の言っていた光へ向かって歩き出す。




「そんなに強いんだ、あの坊主……。でもね、京子ちゃんだけじゃないんだよ、あそこにいるのは」









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