第83話 『初詣で』
霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?
著者:ピラフドリア
第83話
『初詣で』
クリスマスパーティーを終えて数日。12月の最後の日を超えて、新たな年がやってきた。
「レイさ〜ん、まだですか〜?」
リエが黒猫と一緒に洗面所の前で暇そうに待つ。
「よし、終わった!! それじゃあ開くよ〜!!」
私は準備を終えると、洗面所と廊下を繋ぐ扉を開いた。扉が開くと、リエと黒猫はおーっと声を上げる。
「可愛いですね!!」
リエがそう言うと楓ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤くする。
「ほ、ほんと? …………師匠はどう思います?」
着替えた振袖を黒猫に見せつける。その姿に目を奪われていた黒猫だが、ふと我に帰り目線を逸らした。
「ま、まぁまぁ良いんじゃないか……」
「師匠!!」
「んぎゃぁ!? 抱きつくな!! や、やめろーー!!」
楓ちゃんに抱きつかれて必死に逃げようとする黒猫。二人が戯れ合う中、リエは私の姿を気にする。
「レイさんは着替えないんですか?」
「めんどくさい」
今日は1月1日。年が始まるめでたい日。今日は仕事をお休みして、私達は近くにある神社へ初詣へ向かった。
「レイさん、レイさん。私幽霊なんですけど、神社行って大丈夫でしょうか? 神社着いたら天に召されるとか嫌なんですけど」
神社へ向かう最中、リエがふわふわ浮きながら心配そうに尋ねてくる。
「天に召されるのは良いことじゃない。さっさとあの世へ行きなさい」
「嫌ですよ!! まだ漫画家になってないのに!! 意地でもこの世に留まってやります……」
「その意気込みがあるんなら、大丈夫なんじゃない?」
そんな話をしながらも、神社に到着する。街にある小さな神社であるが、意外と人が多く集まっている。
「結構混んでるのね……」
人混みの中を覗いていると、見慣れた頭を発見した。
「あ、スキンヘッド」
私が呟くとその声に反応して、その寒そうな頭が近づいてきた。
「霊宮寺さん!! あけおめだな」
予想通り、人混みの中から現れたのは、スキンヘッドとコトミちゃん、京子ちゃんの三人組。
「あけおめ〜スキンヘッド」
「スキンヘッドさん、あけましておめでとうございます!」
私と楓ちゃんが挨拶すると、それに乗ってすでに挨拶しているであろう京子ちゃんとコトミちゃんも乗っかる。
「スキンヘッドおめー」
「はげおめ〜」
「おい、なんで姉さん達もそこで俺の頭のことをいじるんだ!! 後、俺にはしっかり名前があってだなァァァァァ!!」
スキンヘッドが怒鳴る中、それを無視して私は京子ちゃん達と挨拶をする。
「あけおめ、京子ちゃん、コトミちゃん」
「あけましておめでとう。アンタらも初詣か?」
「そうなのよ。京子ちゃん達も一緒に回る?」
「そうだな、ご一緒させてもらうよ」
私は京子ちゃん達と一緒に神社の奥へと進んでいく。私達に置いて行かれていることにやっと気づいたスキンヘッドは、
「…………という俺には名前があって……。って、姉さん、霊宮寺さん、置いてかないでくれ!!」
京子ちゃん達と合流した私達は、一緒に神社を巡ることにした。私と京子ちゃんが先頭を歩き話している中、後ろでスキンヘッドと楓ちゃんの会話が聞こえてくる。
「なかなか……似合ってるじゃねぇか…………楓…………」
「そうですか? ありがとうございます!」
素直に喜んでいるが、黒猫の時とは明らかに反応に差がある。
後ろの会話を盗み聞きしていたら、コトミちゃんが先頭にいる私と京子ちゃんの間に割って入り込んでくる。
「霊宮寺さん。この前のスライムちゃんの様子はどうですか?」
私と京子ちゃんの肩の間に顔を出して、コトミちゃんは尋ねてくる。スライムと聞き、京子ちゃんの顔は暗くなる。この前のスライム事件で起こった片付けが大変だったため、軽くトラウマのようだ。
「元気よ。あれからは牛乳をあげないように遠ざけてるの」
「そうなんですね、良かった良かった〜!!」
そんな会話をしながら進んでいると、正面から巨体の男性二人組が歩いてくる。
「あ、パイセン。あれレイさんじゃないすか?」
「ん、ああ、レイさんじゃないか!!」
現れたのはマッチョの二人組。いつも通りの二人のマッチョ具合だが、私はマッチョ先輩の目の下にクマができていることに気づいた。
「あれ、目の下にクマができてるじゃない? 寝不足なの?」
「ああ、さっきまで仕事をしていたんだ。ここ三日、寝ずに仕事をしていた」
「寝ずに!? どんだけブラックなのよ、倒れるよ!?」
「ふ、俺の筋肉はこの程度でくたばらん!!」
「いや、アンタが倒れたら筋肉もギブよ……」
年が明けて早々、ヤバい連中に遭遇し少し引く。
「では、俺達は終わったんでこれで。パイセンがそろそろ壊れそうなので、家に帰って寝かせます」
「そうさせてあげて。もう半分壊れてる」
マッチョの後輩に連れられて、筋肉を数え始めたマッチョ先輩は神社を出ていった。
マッチョの二人組と別れて、神社の奥へと進んでいくと、屋台が並ぶエリアへ着いた。普段はこんな屋台は出ていないが、正月で人の多い時期だから出しているのだろう。
屋台から香ばしい香りが流れてきて、リエは鼻をクンクンさせる。
「レイさんレイさん。あそこの屋台のじゃがバター食べたいです!!」
「え〜」
私は否定的な返事をするが、実際のところ私の少しお腹が空いた。ここで軽く食事をとることにして、屋台へ近づく。
「いらっしゃい。何個ですか?」
店の前に立つと、店員は活気のある声で尋ねてくる。しかし、その声には聞き覚えがある。
「スコーピオン!?」
「あ、レイさん!!」
屋台の店員をやっていたのは、サソリの怪人スコーピオンだった。ハサミでどうやってじゃがバター作ってるのか疑問だ。
「何個にします?」
「あー、じゃあ、二つ」
私は自分の分と楓ちゃんの分を買う。私の後に京子ちゃん達も人数分、じゃがバターを買い、歩きながら食べることにした。
「早く早く!!」
リエが急かしてくる中、私は熱々のじゃがバターを冷ましてからリエに食わせる。幽霊であるリエは他の人には見えていないため、私の分を周りから目立たないようにして分ける。
食べながら神社の中を進み、神社の奥にたどり着く頃には食べ終わった。
お寺に続く列に並んで、数分後やっと賽銭箱の前に辿り着いた。
それぞれが好きなタイミングで賽銭を投げて、拝み始める。私も賽銭を投げて両手を合わせて目を瞑った。
報告と願い事を終えて、私はみんなを連れて列から外れる。
「何願ったんですか?」
列を出るとリエが何を願ったのか聞いてくる。
「そうね。健康的に過ごせるのと、お金持ちになるのと、その他諸々?」
「多いですね……」
初詣も終わり、私達は京子ちゃん達と別れて神社から帰ることにした。




