第79話 『グルメなお店へご招待!!』
霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?
著者:ピラフドリア
第79話
『グルメなお店へご招待!!』
「レイさ〜ん、まだですか〜?」
「そろそろのはずなんだけど……」
薄暗い森を私とリエ、楓ちゃんの三人は進む。日が落ちて夜の森が怖いのか、リエが私の腕にひがみつく。そして唇を震わせる。
「本当にここなんですか? ただの森にしか見えないんですけど……」
私達は事務所のポストに入っていたチラシで、新しいレストランのセールの情報を手に入れて、そのレストランを目指していた。
リエが不安そうに聞いてきて、私まで不安になる。一応確認のため、持ってきたチラシを広げてみる。
「ここのはずよ、ほら?」
私はリエにチラシを見せてみる。リエは暗い中でよく見えないのか、目を細めてジッと見る。
「あ!? レイさん、ここ、よく見てください!!」
リエがチラシのある部分を指でなぞる。そこには、
「『当店は来年からのオープンです』……ふざけるな!!」
私はチラシをクシャクシャに丸めて放り投げた。来年オープンのお店の情報を宣伝するんじゃない!!
しかも、年が違うだけで日にちも同じだし、完全に罠だろ!!
「もう帰りますか……ここから帰るとかなりの時間になっちゃいそうですけど」
楓ちゃんが腹を鳴らしながら帰路に目線を向ける。
「そうね。そうしましょうか」
このまま森の中へ進んで行っても何もないため、私達は帰ることにした。来た時と同じ道を進んでいるはずなのに、違和感を感じる。
「ねぇ、こんな道通ったっけ?」
「でも、ここ一本道ですよ、間違えようがないですよ」
リエの言う通り、ここは一本道だった。どうやっても間違えるはずがない。しかし、
「なに、このお店……」
同じ道を戻れば、住宅街へと出るはずなのに私達がたどり着いたのは一軒のレストラン。
森の中に聳え立つ木製のお店は、自然に溶け込む形で私達を招く。
「こんなお店、来た時はなかったですよね」
「そうよね、でも…………」
店内から香ばしい香りが漂ってくる。今まで嗅いだことがないようなスパイスの香りで、ヨダレが口から溢れ出す。
「変わったお店だけど、ご飯だけ食べていきましょうか。こんなにいい香りは初めて嗅いだよ」
「そうですね!! どうせ戻ってから食べるんならここで食べてしまいましょう!!」
私とリエは香りに誘われるようにレストランへと這い寄る。そんな私達の後ろを楓ちゃんは目を細めてレストランを疑いながらついてくる。
「おかしいですよ、レイさんもリエちゃんも冷静になろ!! 突然レストランが現れるなんて、怪しすぎるよ!!」
楓ちゃんの言葉で私はハッと冷静さを取り戻す。だが、
「怪しい……かもだけど、この匂いに逆らえない!!」
私とリエは怪しいと感じながらも空腹と魅力的な匂いに誘われて、扉を開ける。
中は小さな部屋があり、奥には中に入るための扉が再びあった。そしてその扉には紙が貼られている。
「なにこれ? 手を石鹸で洗え?」
「当然ですね!! これからお食事ですし、手を綺麗にしないとです!!」
リエは早速部屋に用意された手洗い場で手を洗う。私と楓ちゃんもリエに続いて手を洗った。
「さぁ、早くいきましょ!!」
リエが早く開けろとばかりに扉の前で跳ねている。私もお腹がぺこぺこで早くご飯を食べたいため、扉を開ける。
扉を開けるとまた同じような小さな小部屋。またしても奥へとつながる扉がある。部屋と部屋が連結していて、不思議なレストランだ。
「また紙がありますね。今度はアルコール消毒と体温検査をしてくださいですか」
再び扉に紙が貼り付けられており、その文字をリエが読み上げた。読み上げたリエはうんうんと頷く。
「そうですよね。感染症対策はしないといけませんね!! 楽しい食事の後に風邪をひいて辛い思いなんてしたくはないですからね!」
紙の指示を守り、アルコール消毒と体温計で温度を測る。
「問題ないですね!! では行きましょう!!」
腹が減りすぎていつもよりもテンション高めのリエが先へ進むように急かす。
扉を開けると、今度は広い店内があった。外の外装からは考えられないくらい綺麗で、大きさも外から見た店内の倍くらい大きい。
テーブルと椅子が店内をズラッと並んでいるが、どこの席にもお客さんの姿はなかった。
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。三名様ですね!」
店内の右端にある厨房室からのれんを潜って店員が現れる。その店員は5メートル以上の身長をした長身の女性。
目の下には赤い化粧をしており、つり目の女性の容姿は可愛らしいというよりも美しいという言葉が似合う。
しかし、その姿を見た私は怖さで膝をつき、頬に手を当てて叫んだ。
「きょ、巨人だァァァァァ!!!!」
5メートル以上の人間が現れたのだ。私はその女性を化け物かと怯えて顔を青くする。
そんな私の反応を見て、女性は顔を両手で大き隠した。
「酷い!!」
顔を隠してシクシクと鳴き始めた女性。その様子に怯えていた私は、
「あ、いや、……ごめんなさい」
思わず謝ってしまった。私が謝ると長身の女性もオドオドし始める。
「わ、私こそ…………あ、あ、あ、ああ……」
女性は混乱しているのか、途中から「あ」しか言わなくなる。その様子で恐怖心も薄れてきて、私は楓ちゃんに引っ張ってもらい立ち上がった。
「ごめんなさいね。リエが見えてるってことはあなたも幽霊?」
「あ、ああ……」
女性は首を縦に振りながら返事をする。
身長に注目してしまったが、よく見れば身体は透けているし身体も浮いている。リエのように霊力の状態で伸び縮みする幽霊がいるのなら、このように巨大な幽霊がいるのも不思議ではない。
幽霊ということはこのお店も少し特殊な店なのだろうか。まぁ、考えても答えは出ないため置いておこう。
あーちゃん(仮名)の正体が分かったところで、あーちゃんは手で奥のテーブルへと案内してくる。
「あああああああ(こちらへどうぞ)」
「は、はぁ……」
テーブルへ案内してもらい、あーちゃんはメニュー表をテーブルの真ん中で広げる。
「あああああ、ああ〜あああああ(当店のメニューになります)。ああっああ(ごゆっくり)」
結局混乱が戻らないまま、あーあーという説明をした後厨房へ戻って行った。
「あの人、大丈夫でしょうか?」
リエはあーちゃんのことを心配しているが、まぁ、問題はないだろう。私はメニュー表に目を通す。
「さて、じゃあ何を食べましょうか!!」
メニューを見てみたが、そこには三つしかメニューが書いてなかった。
「霊力コースに、生命力コース、そして筋力コース…………。全然内容が分からないんだけど!?」
私がメニュー表を見て困惑していると、あーちゃんがブリッジした姿勢で這いずり近づいてくる。
「うわ!? ホラー映画みたい!?」
「怖いです!! この方怖いです!!」
私の隣でリエがガチビビりしてるが無視していく。
「えっと、このメニューってどういうことなの?」
「あ……これは……ですね…………」
混乱から復活したのか。逆立ちの体制からヌッと立ち上がったあーちゃんは、メニューの説明をする。
「私……特技で相手を見ただけで健康状態や精神状態、本人では分からないような情報までもオーラとして見ることができるんです」
そんなことができる幽霊がいるとは……。
霊感が強い人間であれば、相手の霊力の総量が把握できるというのをこの前タカヒロさんから聞いた。あーちゃんもそれに近いものなのだろう。
「霊力、生命力、筋力から選んでもらったお客さんの状態に合わせたお料理を提供する。それが私のレストランです」
「じゃあ、私が霊力コースなんて選んだら、私の凄い霊力に合わせた料理が運ばれてくるってことね!!」
私が胸に手を当てて威張るように言ってみると、あーちゃんは申し訳なさそうに目線を落とす。
「えっと、あなたの霊力だと……一般人から毛が生えた程度……」
「あーーーーー!!!!」
私は耳に手を当てて声を上げて聞かないことにした。
私と楓ちゃんは生命力コース、リエは霊力コースを選んで品がやってくるのを待つ。
しばらく待つと、あーちゃんは商品を運んできた。
「そちらの女の子には霊界サラダを、人間のお二人にはカボチャマン入りのサラダです」
リエの前に置かれたサラダには目玉みたいなものが乗っており、私と楓ちゃんのサラダにはウネウネ動くオレンジ色の物体が入っていた。
「なに、……これ?」
私達は運ばれてきた料理に口を開けて微妙な反応をする。一番ご飯を楽しみにしていたリエに関しては、白目を剥いて衝撃的な顔になっている。
「あ……あ、あ、あ、そうでした。あ……珍しいですよね。これはそれぞれの特性に合わせた料理なんです。毒とかはないんで大丈夫です!!」
「毒がないって言われても……」
見た目的に結構キツイ。一番ヤバいのはリエの目玉入りだが、あっちのコースにしなくて良かったとホッとする。
「私、食べてみます!!」
一番グロテスクな料理が運ばれてきたリエが、ついに空腹に耐えられず食べ始める。
「どう?」
「…………あ、普通に上手いです!」
一口食べて問題がなかったようでそれからはムシャムシャと食べ始める。私と楓ちゃんも顔を合わせると、お互い同時に動くカボチャを食べてみた。
「動いてて気持ち悪かったけど、思っていたより上手い!?」
「あ、ああ、あああ、満足してもらえて良かったです」
私達が食べ始めると、あーちゃんは胸に手を当ててホッと一息吐いて、調理場へと戻っていった。
次に運ばれてきたのはスープでリエにはグツグツの激辛スープ、楓ちゃんには一粒が人間の顔の大きなのコーンが入ったスープ、私には水面から笑い声が聞こえるスープが提供される。
変わったものばかりだが、いざ食べてみるとどれも美味しく、不思議なことに完食できた。
それからも同様であり、見たことがないようなものばかり出てきたが、全て美味しくいただくことができた。
「ふ〜食べた食べた〜」
ご飯を食べ終えた私達は満腹で腹を摩る。席を立ち上がると、伝票を持ったあーちゃんがやってきた。
「では会計になりますね。あ……財布は出さなくて良いですよ」
あーちゃんはそう言うと、私達の前に右手を突き出したそして手を広げると、
「料金として選んだコースの力をいただきます。霊力と生命力を吸い取らせてもらいますね」
「え!? ちょっ!?」
そう言って許可も取らずに右手に力を入れる。すると、全力で5分走り続けたような疲れがどっと出てきた。
「これは……本当に霊力を吸われました……」
ヨロヨロとリエが私にもたれかかる。私もふらっとはしたが倒れるほどじゃない。
「大丈夫? リエ」
「は、はい〜、霊力の半分くらいなくなりましたが、まだ霊体でいられます〜」
リエと私の状態を見て、楓ちゃんがあーちゃんを警戒して取り押さえようとする。しかし、あーちゃんは楓ちゃんが飛びかかってきた動きに反応して、あっさりと避けた。
「楓ちゃんよりも早い!?」
「待って、待ってください!!」
避けたあーちゃんだが、ヘコヘコと頭を下げ始める。
「怒らないで、これが私の商売なんです。本当です。だから攻撃しないで!!」
あーちゃんが頭を下げたことで楓ちゃんは飛びかかるのをやめて大人しくなる。そして楓ちゃんはあーちゃんに詰問をする。
「どういうことですか? 代金が力って!!」
「メニューに書いてあったじゃないですか!! 私は料理を提供する代わりに力を受け取り、このゴーストレストランを開いてるんです!!」
あーちゃんが近くにあったテーブルからメニュー表を持ってきて、説明書きを見せる。確かにそのようなことが書いてある。
「私の夢はゴーストレストランで人々に笑顔を届けるのが目的なんです。しかし、ゴーストレストランは多くのエネルギーを必要とする。だから代金はお金ではなく、力なんです!!」
あーちゃんに連れられてレストランの外に出る。するとここで初めて、レストランが半透明であったことに気づいた。それを見たリエがぽそりとつぶやく。
「これって霊力で作ったレストランだったんですね」
「はい。なのでいつでもどこでも開店できます。それが私のレストランの良さなのです」
まぁ、説明は聞いて事情はなんとなくわかった。
「そういうことね。じゃあ、騙したとかそういうわけじゃないのね」
「ないです、ないです!!」
高速で首を縦に振るあーちゃん。まぁ、騙されたわけじゃなければ、良いのか?
「私たちが説明をしっかり見なかったのが悪いしね。今度からはもっと大きく書くのよ。揉め事になったら大変だから」
「はい!!」
代金も払い終えて、腹も満腹になった私達は帰ることにした。帰り道で後ろを振り返るが、すでにレストランは消えており、どこかへ移動したのだろう。




