第41話 『神々』
霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?
著者:ピラフドリア
第41話
『神々』
五人の男女が集まり、円になって中央にある焚き火に力を注ぐ。
それぞれの力が炎と融合し、煙となると上空へと舞い、空を裂き暗闇を取り出した。
暗闇から紅瞳が覗き込むが、煙が覆い被さりその視線を遮る。煙は暗闇に侵入すると紅瞳に見送られながら、少女を一人取り戻した。
コートを羽織った男性は上空から落ちてくる少女を受け止める。
「よっと……。手間かけさせやがって」
男性は少女は近くの草原に寝かせると、四人の元に戻った。
男性が座ると、その隣に座っているつり目で高く筋の通った鼻した女性が揶揄うように笑いかける。
「しっかし、月兎。お前に呼ばれることがあるなんてな〜」
「ッチ、てめーらの力を借りるなんてしたくなかった」
嫌そうな顔をする月兎の背中を女性は勢いよく叩く。
「そぉ言うな、言うな。本当は会いたかったんだろ、オレに」
「誰がお前に会いたいか!! 狐!!」
睨みつける月兎に目を細めて笑う狐。そんな二人を見ながら、首から紐で笛をぶら下げている少年が尋ねた。
「それで。月兎君、その霊体はなんなんだい? 僕には普通の霊体にしか見えないけど、特別な何かがあるのかい?」
「ん、ああ。ねぇよ」
月兎はキッパリと答えた。それを聞いた者達は呆れたり、笑ったり、それぞれの反応をする。
目を細めて女性は笑うと、
「やっぱりオレに会いたかったか」
「んなわけねぇって言ってるだろ!」
月兎が怒鳴ると女性は寂しそうに指を咥えた。
「ちぇ〜、揶揄い甲斐がないなぁ。ま、久しぶりにあんたのそういう反応見れて、満足だけど」
寂しそうにしながらもどこか満足げな女性は、あることを聞いた。
「特別な何かじゃないなら。なんか契約でもした? 消滅する前に」
「いや、そういうことは……」
月兎は焚き火に目線を向ける。そして思い出を語るように、
「強いて言えば、ソイツの知り合いに恩がある」
月兎が告げると、女性は呆れた顔で注意した。
「あんまり人間に深入りしない方が、良いと思うぞ」
「神器まで貸してるお前には言われたくない」
月兎が目線を女性に戻すと、女性は胸を張って自慢げに言う。
「オレのは信頼と友情があっての取引だ。あの子なら必ずやり遂げてくれるからな!」
「信頼してようが裏切られる時は裏切られるんだよ!」
月兎と女性が睨み合う中、刀を持った男性が立ち上がると背を向ける。
「用は済んだみたいだしな。帰るぞ」
帰っていく男性に月兎は手を挙げて礼を伝える。
一人帰り、それを合図に一人、また一人と帰って行き、いつの間にか解散していた。
事件から数週間後。楓は退院した。
怪我は三日で治り、医者からは驚かれていたが様子見ということで退院は許してもらえず、やっと退院ができた。
「だいぶ身体も鈍っちゃったなぁ」
楓は病院を出ると腕を振って身体の調子を確かめる。
入院中に友人に筋トレ道具を持ってきてもらったりしたが、没収されてしまい、簡単なトレーニングしかできなかった。
長い入院中、色々と考えていた。そして答えを出した楓はある目的地に向かって歩き出した。
学校を超え、事務所を超え、たどり着いたのは一軒の家。
インターホンを押すと中から出てきたのか、ピンク色の可愛い服を着た金髪の女性。
「あなたは……」
女性に案内されて楓は和風の家にたどり着いた。敷地は広く蔵や道場が中にありそうな家だ。
「私はここまでで良いかな? 姉さんきっと怒ると思うんだ。私、怖いから」
「はい。ありがとうございました。沢谷さん」
手を振って女性は帰っていく。楓はお辞儀をした後、家にある門を叩いた。
しばらくして門が開くとジャージを着た黒髪の女性が姿を現す。
「お前、霊宮寺さんのところの美少年……」
「早乙女さん、お願いがあって来ました」
真剣な顔で頭を下げる楓。その姿を見た京子は頭を掻きながら少し困った後、
「ここじゃなんだ、上がれよ」
長い廊下を歩き、客間で京子を待つ。しばらくしてスポーツドリンクを持った京子がやって来た。
京子はスポーツドリンクを楓に投げ渡す。
「茶を切らしてるんだ。これで我慢してくれ」
「ありがとうございます」
障子扉を閉めて京子は楓の向かいに正座で座った。
「んで、何の用だ? 退院したばっかりなんだろ、先に霊宮寺さんに会いに行くべきだろ。なんでうちに来た」
「え、なんで僕の退院が今日って知ってるんですか?」
「あのスキンヘッドが毎日見舞いに行ったんだろ。毎回、お前が元気そうだったって聞かされてんだよ。そんなことはどうでも良いんだ、答えろよ」
楓は足を少し動かし、答えるのを一度躊躇したが、息を吐いて心を落ち着かせる。そして
「僕は守れなかった。だから、次は同じようにならないために、守る力が欲しいんです!!」
楓が答えると、京子は顔を動かさずに目線を逸らし、
「思ってたより、しっかりしてんだな……」
そう呟くと、楓に目線を戻してテーブルを勢いよく叩いた。
「舐めてんじゃないよ!!」
怒鳴る京子だが、楓はピクリとも動かずその場で座り続ける。その姿を見て怒鳴っても意味がないと判断した京子は、冷静になり姿勢を正して座り直した。
「確かに失ったものは戻らない。過去を見ず未来のために動くのは立派だ。だが、まだ甘い!!」
京子は楓を睨みつける。
「例え努力した時でも、絶対に失わないということはあり得ない」
そして楓に向けて宣言する。
脅す意味もあるが彼女にとっては本心を伝えており、楓がどこまでの意思を持ち、訪ねて来たのか。それを試す意味も含んでいた、
「だとしてもです。僕にもう少し力があれば、助けられたかもしれないんです。絶対じゃなくても良い、僕の一歩で届くのならそれで良いんです」
「…………それで。だからってなんで私のところに?」
「スキンヘッドさんから聞きました。早乙女さんは関西の方で霊能力者として活動してたって。それも悪霊も祓ったことがある凄い霊能力者だって」
京子は困ったように頭に手を置くと、深くため息を吐いた。
「あいつ…………」
そして立ち上がると、楓に手を伸ばした。
「さっきはああは言ったが、私だって同じさ。自分に力があればって今でも後悔してる。教えるっていうよりも、一緒に歩んでいこうぜ」
楓は京子の手を取って立ち上がり、熱い握手をした。
「はい!!」




