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空色の魔女見習い  作者: アル
第一章 転生の魔女見習い
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いざ、魔導都市へ その二

それから間もなく馬車は停止する。大方の予想通りに休憩のようで前方を走っていた馬車から御者が降りてきてはこちらの御者に話しかけていて、会話が終わるとさらに後方に向かっていった。


「休憩ではなく何か別の問題があったようですね」

「そうなんだ。それなら中で待機してようか」


 進行側に座っていたリアには少しだけ会話が聞こえていたのだろう。どんな問題か緊急事態にせよこういう時は変に動かずに馬車内で待っているのが正解だろう。

 そう思ってずっと車窓から外を伺っていたのだけれど、突然前方の馬車の扉が開いては中に乗っていた人物が降りてきたのだ。


「ああ、やっぱり一度降りましょうか」

「畏まりました」


 私たちは短くそれだけを話して、リアが先に扉を開けて外へと出る。彼女は降りて周りの安全を確認してから私に手を差し伸べてくれ、私は一呼吸遅れてからその手を取って急ぎ目に降りては外の新鮮な空気を感じつつこちらへと近づいてくる人物に目を向けた。

 黒い貴族の礼服を纏った狐目のその男性は、優雅にこちらへと向かってきていて私が降りる頃には既に近くにいたみたいらしく、一礼をしてからこちらへと話しかけてきた。


「アイリスフィア殿下」

「どうかしたのですか、アルステラ公爵?」

「情けないことに少々問題が生じてしまいまして……荷馬車の馬が一頭駄目になってしまったようなのでございます」


 公爵は問題というにはそれほど気にしていないのか、特徴的な細い狐目を苦笑いするかのように軽く細めただけで、後は余裕綽々といった様子で立っている。


「問題ではないみたいですね?」

「おや、そう見えますか」

「公爵の様子を見る限りは問題がありそうには見えませんね」

「これでも狼狽えているつもりなのですが……まあいいでしょう」


 そんな軽口を言う余裕すらあるらしい公爵は最初からほとんど変わることのない笑みを浮かべたまま私に解決案を提示してきたのだった。


「荷物をここに放置するわけにもいけませんし、だからと言って殿下の護衛を外れるわけにもいけません。なのでこちらの馬車から馬を移して荷馬車は動かすとして、私自身は殿下の馬車に同乗させていただくのでは如何でしょうか」


 そんな提案をしてきたのだった。魔導都市までの距離を考えても今日中にはつく予定のであるのだし、私としては別に問題はなかった。


「私は問題ありませんけど、リアはどう?」

「姫様の判断に従います」

「では公爵の言う通りに行きましょう」


 リアにはそもそも私に従う以外の選択肢は持ち合わせていないようで、こちらも変わらずの硬い表情でそう答えただけだった。


「ではそのように致しましょう。私もこちらに同席させていただきます。お手を、」

「いえ、一人で乗れますから」

「それは残念」


 馬車の横に立ち手を差し伸べてきた公爵のその手を無視して乗ってみれば特に気分を害した様子もなく次はリアに手を差し伸べたのだった。だが一方のリアもその手を取ることはなく公爵に対して一礼をしてから馬車に乗っては私の傍に座ってきた。


 この人は本当に残念だと思っているのかな……レディファーストの気持ちだとでも言うのだろうけど、この人の何を考えているのかよくわからない態度を見ていると色々と勘繰ってしまうものがある。

 見事二人に断られてしまったにも関わらず笑みを浮かべたままで公爵は馬車の前方の席へと座るのだった。


 程なくして馬車の準備が出来たらしく三台から二台となりつつも魔道都市への残り短い距離を走りだしたのだった。


「到着まではあと二刻程でしょうか」

「そうみたいですね」


 再び馬車が走り出してからそれほどの時間も立たないうちに公爵が話しかけてきた。返事を返しつつも隣の従者を盗み見る。正直この人と会話をするのは気が重いのだけれど……リアは会話を邪魔するつもりはない、というよりは我関せずといった様子で目を閉じてしまってるし、いやそもそもリアと公爵で会話が始まるわけがないし、私が相手になるしかないんだろうなあ。


「せっかくなので改めて自己紹介をしておきましょう」


 出発前に挨拶は済ませたのだし必要ないと言う間もなく公爵は話し出すのだった。


「今回は陛下より魔導都市までの護衛、及び魔道都市内での生活の援助を承りました。アルステラ公爵家当主、ウルフレッドでございます」


 知っています。数日前に聞いたばかりなので。


「ご丁寧にありがとうございます。私はご存じの通りアイリスフィア、こちらはリアと言います」


 穏やかだと思ったこの馬車内、突然の参加者によってここは一時も油断ならない社交場へと様変わりしてしまったのだった。

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