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9.『君の名は*』(1) ファンタジーの力

挿絵(By みてみん)


 タイトルのアスタリスク(*)はワイルドカードで、長さ0文字以上の任意の文字列にマッチします。ここでは*に句点が当てはまる場合と空白である場合、すなわち『君の名は。』と『君の名は』を比較したいと思います。


 前者は皆様のよく知るところかと思いますが、後者に関しては説明がいるかもしれません。


 『君の名は』は1953年から1954年まで三部に分けて公開され、大ヒットした映画です。原作はラジオドラマ(NHK:1952-1954)で、テレビドラマとしても何度かリメイクされています(フジ:1962-1963;日テレ:1966-1967;NET:1976;NHK:1991)。


 その大まかなあらすじは以下の通り[1]です。

 第二次大戦、東京大空襲の夜。焼夷弾が降り注ぐ中、たまたま一緒になった見知らぬ男女、氏家真知子と後宮春樹は助け合って戦火の中を逃げ惑ううちに、命からがら銀座の数寄屋橋までたどり着く。一夜が明けて、二人はここでようやくお互いの無事を確認する。

 お互いに生きていたら、半年後の11月24日、それがだめならまた半年後に、この橋で会おうと約束し、お互いの名も知らぬまま別れた。やがて、2人は戦後の渦に巻き込まれ、お互いに数寄屋橋で相手を待つも再会が叶わず、1年半後の3度目にやっと会えた時は真知子は、既に明日嫁に行くという身であった。しかし、夫との生活に悩む真知子、そんな彼女を気にかける春樹、2人をめぐるさまざまな人々の間で、運命はさらなる展開を迎えていく。

[1]wikipedia日本語版「君の名は」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%9B%E3%81%AE%E5%90%8D%E3%81%AF#.E3.83.86.E3.83.AC.E3.83.93.E3.83.89.E3.83.A9.E3.83.9E

(2017年5月20日閲覧)


 社会現象となるくらいの人気、男女のすれ違いを扱った内容と共通点が多い一方で、前前前世代といってもよいくらい古い作品ですから、『君の名は。』との比較を通じて現代のコンテンツの特徴をあぶりだすことができると考えます。



 さて、『君の名は。』について、様々な議論がなされているのを目にしましたが、その中でも印象に残っているのが、「通信手段の発達した現代で、伝統的なすれ違いを題材に扱うのは難しいが、ファンタジーにすることで解決している」という評価と、「直接は扱っていないものの東日本大震災が主題になっている」という解釈です。いずれも説得力の合う主張のように思われました。


 ところが、これを上に引いた『君の名は』のあらすじと比較することで、疑問が生じます。『君の名は』はまぎれもなく「容易にすれ違いを描けた時代」の作品のはずですが、すれ違いのきっかけとして東京大空襲というイレギュラーな出来事を提示しています。半年後に同じ場所で会おうという約束も作り物じみていますし、随分と窮屈な構成になっています。


 『君の名は。』に引き付けて考えれば、どうせ東日本大震災を扱っているわけですから、震災をきっかけにすれ違いを描けば良かったはずです。避難する過程で通信手段を失ったことにすれば、(少なくとも数寄屋橋程度の)リアリティは付与できました。


 では、どうしてわざわざファンタジー設定を用いたのでしょう。被災者感情への配慮かもしれません。しかし、より重要で積極的な理由としてこの数十年間でファンタジーがシリアスな話を語る力を獲得したことが挙げられます。設定自体は荒唐無稽で、時としてご都合主義的ですらあったとしても、その上に載っているドラマは子供騙しであるとは限らず、人間の真実が描くことができます。


 今や我々は、現実的な主題を描くためのアクセサリとしてファンタジー設定を用いることができるのです。これは便利です。プロットの自由度も高いですし、キャッチフレーズもつけやすいです。ですから、『君の名は。』はファンタジー設定()()()()描けないストーリーというよりは、ファンタジー設定()()()楽だったから用いたということになります。

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