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act5(前編:接触「一撃、のち出会いケース2」

やっと完成したact5、文で今回初登場した人物にK安T人さんの声を

ICVにした人がいます!…と思ってた時期が自分にもありました。

すみません、今actは前編、中編、後編に切らせて頂きます!

上記の人物の登場はCM、もとい次回以降で登場します!


◎読む前に:今回は人間の肉体を対象にしたグロテスクな描写があります。

それと共に性的描写を含む分も多分に含まれています。

そう言ったもの等が苦手な方はお勧めできません。予めご注意ください。

グロくないバージョンもいずれ書こうと思いますが…それはまた今度に


以上の内容が許容できる方は、今回もいい読書であります事を


話は校内の敷地にエルゼスとセルアが入る前にさかのぼる。


「で、実際にこれはどうするんだよ?」

エルゼスはしまった門を見上げる。

「うん、方法はあるよ」

セルアもしまった校門を見上げる。

当然だが、この学校にも学園の敷地と区を分ける門を閉める管理人と

門限は存在する。そしてその管理人が行う門閉めが終わった後に2人は

戻ってきたようだった。2人の目前にあるのは商業区と学園の敷地を分ける

一般人が持つ身長の5倍ほどの高さはある高い壁と門。どうにも機械で

管理されているからか、鉄と鉄の間にバチバチと音を立てて電流と磁力が

はしりつなげているのが見える。高い区分け用の壁を超え校内に入るしか

方法がない状態。それをできる方法があるとセルアは言うのだろう。


(こいつ、貴族の特権じゃ無く龍躁者―ドラグーンの適性の方でここに

入学したんじゃないか?)

エルゼスがそう思ってしまう程に、目の前の今日知り合った少女は無防備に

四つんばいのような格好で街道の門とは対称の位置へついたのを見届ける。

横からなので可愛いしりと一緒に下着が見えたが性知識が欠片もない

エルゼスは何の気持ちも欲情なども無く、セルアを見守る。そして


「せーのっ!!!」


それは恐らく助走をつけた走りなのだろう、文字通り街道のはしから

そびえたつ高い壁へ真正面から突っ込み―勢いを殺さずセルアは壁を

走り上る。勢いは壁を走り上る重力に逆らった状態でも落ちなかった。

それを見て

(へえ…)

エルゼスは内心で感嘆をもらした。これは恐らく長い間彼女がきたえてきた

ものの一つだろう。…使ってる場面が情けないとも思うが。そう思う間にも

彼女は壁の一番上をつかみ

「よいしょっ…と!」

学校の敷地へ見事降り立ったようだった。そして鉄格子の端からこちらを

見返した後に親指を立て、片方の目をつむった笑顔をエルゼスへ向けた。


(ここは俺も見せるか)

そうエルゼスは思い、彼女に背中を見せる。

「え?」

当然ながらキョトンとしたセルアに、横顔で笑みを見せる。そして


フォ…ッ


足元に相応の魔力を乗せる。もう少しであふれそうなギリギリを足と地面の

隙間内で調整し―それを解き放つ。


ファン…ッ


直後街道と軍高の敷地を区別する壁を軽々と越え、月という鏡の中に

いきなり現れ舞った影のように空中でクルリと回った後。エルゼスは

セルアのすぐとなりへストンと落ちてきた。

「これが10点だろ?」

「満点だね!さっき私の体に魔力まとわせたのも驚きはしたけどそれって

何でもありなの?」

「さあて、な。俺はその本から習ったことしか知らない」

「そう…えっと、さ」

「―?」


学生寮へと歩き出しながらセルアの言葉に耳を傾ける。部屋に戻った後で

エルゼスがここを聞き流すだけにしておけばよかったのでは?と思う

場面だったかもしれない。もっとも、性根が腐りきっていなかった

エルゼスだから、この言葉を受け止めたともいえるが。


「明日、予定とかは無い?無いなら明日の8時半、待ち合わせしない?」

「どこでと何のが抜けているんだが?」

「この学校の案内、私がさっき言った友達も連れて!待ち合わせ場所は

お互いの寮の入り口から真ん中に置かれたこの噴水だよ!それじゃ!」

その場所であるのだろう石造りの影がある場所をわざわざ通り、セルアは

女寮の入口へと駆けていった。エルゼスはそれを見送った。

エルゼスの立場で言うなら見送ってしまった、と言うべきだろうか。



ギシ…ギシ…

音が男子寮のとある部屋で響く。

「148…149…」

エルゼスは朝早くから半裸状態でいつも通りけんすいを昨晩あてがわれた

部屋で見つけた出っ張る木材で行っていた。そして両手でそれぞれ

150の懸垂を終わらせ、エルゼスは部屋の机に置かれている時計を見る。

7時を指していた。仮に、行くとしても約束の時間まで1時間半あった。


(次、腹筋かな。風呂は…今日はいらないだろ)

エルゼスの日課はそういうものである。風呂に入ったのは一昨日、

ヴァルガナウフへ行く日の前であり、エルゼスと少女の秘密基地へ

外出していく前に済ませた。この世界でも一般的には水浴びを最低でも

1日1回はするものだが、エルゼスは気分で3日か最悪でも1週間は

あける時さえある。


(キロメの風呂入れやって怒号をきかなくなるのも久しいか?)

―オンナがいる家で何日も風呂入らねえとか何様だクソがああああああ!―

「66…67…………88…89………………125…126…」

それを思い出しながらきっちり腹筋を150まで済ませ、エルゼスは制服を

着込む。暫らく荷物内に入っていた携帯食料―母が作ったものだ―を幾らか

ほおばる。いつも通りの美味しさだったと思いながら、一息付いて半ば

放心状態でぼーっとし…時計を見ると時刻は8時20分。


結局出した答えは

「行くしか選択肢が無いとか酷い話だよな」

本人に皮肉を言えないエルゼスは部屋を出、階段を下り、寮の受付を通過し

外に出る―前に帽子を目深に被る。男子寮の扉を出て女子寮との境、中央から

やや下に設置された噴水へ近づくと


「あの、やめて下さい…」

「これは明らかな嫌がらせだぞ。告発されたくなければ…」

「ヒヒ、ヒヒヒ。ロットの兄貴ぃ、我慢しなくていいんだろぉ?

ヤッちゃって良いんだろぉ?おで、我慢できねぇよぉ」

「へっへっへ、当然さ、ペール。なあ生徒会長様よぉ、そんな事言っても

無駄だって分かって言ってるかい?」


目に飛び込んできたのは、昨晩知り合ったセルアと―

頭の両端でまとめて伸ばした髪と目の両方に輝く黒い夜空を塗ったような

身長的に中学1年生程度にしか見えない少女。その2人が昨日、校門の

左端でクズ上等の行為をしていた冒険者の筈…の男2人組にナンパとも

表現できない酷さでからまれている。


(独特の黒一色…アカナチの民か?…どう見ても生徒会長とか先輩に

見えないわけだが…いや、それはどうでもいいか)

それはどう見ても女性の村人に襲いかかる前の賊にしか見えなかった。こんな

朝から堂々と…?しかも近くを通る人は皆見て見ぬふりをしている。事態を

ある程度理解し、ため息をついたエルゼスは【ただ彼女達の元へ向かうことに

した】。



ロット・アイハウトとペール・シップは貴族であり、この学園の生徒であり

冒険者である。生まれてから貴族として必要な事、ふと願った事ならば何でも

手に入る生活をしてきた。まずは算術を、そして剣を。そして薬草などの

知識を。そして遺跡等といった古代の歴史を。最後に学生ながら冒険者を

やれるというその理想を。いずれはこの世界中を旅し、欲しいと思ったもの

全てを手にしたい、そう望み、二人で成し遂げると誓ったからだ。二人が

望んだ夢は時が経つにすれ膨れ上がっていく。


そんな中で自分達の元には幸運にも【ある人】の後ろ盾がついたのだ。


どいつもこいつも権威と金の前では口を閉ざす。この世ではそれが全てで、

それは2人の内でも常識を弁えているロットも信じて疑わない持論だった。

それに、自分達は冒険者としてそれらに頼る必要もない荒事に対する強さも

持つ事が出来た。極めつけは【あの人】の後ろ盾と言う完全な追い風で、

どのように立ち回ろうが少しの事では揉み消せる。しかも―と考えながら

ロットはなめるような視線でセルアを見る。


生徒会長の隣にいる彼女は―そう思うだけでこれからどうしてやろうかと

考えると笑みが止まらなくなる。社会の裏も表も男さえも何も知らない

無垢にもかかわらず魅力的かつ母性溢れ現在もなお発育する体を自分達の

色で汚せると思うとそれだけで足の間にある性的部分が固くなる。


生徒会長のヒビキ・タカナシでさえ、自分達が物怖じする理由は無い。

見解ながら、彼女も男は知らないだろう。知識は持っているだろうが、浮いた

話もこの軍高には無い。余りに幼すぎる起伏のない体つきを犯すのに背徳感が

あるからとも考えたが、そんなものは汚れた時の絶望に花を添える美しい

はかなさだと分かっているだろうか。セルアと違いこう言った未成熟な体を

犯すのにも興奮する者が多いとも聞く。そして自分達はそんな生徒会長の

貞操を欲しいままに奪う権利すら持つ事ができる。何故ならば―


そう内心でいつも通りほくそ笑み―顔の笑みを隠すわけではないが―ロットは

悲鳴を上げるセルアを文字通り捕まえようと腕と体を少し傾ける。襲う

目標としたセルアとの距離は縮まりかけ―


ズグチャァ


そう聞こえた妙な音と共にロットは突如襲った左足に違和感を感じた。

何事かと後ろを振り返る。そしてロットが見た光景は


左足のアキレス健の中ほどから下が誰かの足に踏まれた状態で砕かれ地面に

埋没していた。その地面すら軽く丸く沈んだあとを作っている。その小さな

穴にある肉や骨は飛び散り筋肉の筋や神経すら千切れ赤い血と一緒くたになり

原形を留めていなかった。


ふと、何が起きたのか分からず呆けた後―無くなった足からあふれだした

血と激痛に


「げああああああああああああああああああああああああああああっ!?」


ロットは悲鳴を上げ無様に軍高の敷地に転がった。



「げああああああああああああああああああああああああああああっ!?」

「あ、兄貴ぃ!?」

エルゼスがその男のアキレス健辺りを何の造作も無しに踏みつけると同時に

ズグチャァと肉と骨が区別なく砕ける音がし、そのまま地面で弾け飛ぶ。

そしてその地面すら軽くヒビが入り、沈んだ穴ができた。呆けた顔で

こちらを振り向いた後に男が叫んだのが先程の声だが、うるさいだけだと

思いながらエルゼスは無視する。


どう見ても、公の場で止められないのがおかしいゲスのようだし、こんな

奴らの都合を考える必要もない。だからどう扱おうと非難される言われは

無いと考えたからだ。寮の前を通る教師らしい職員や生徒さえ無視を

していたのだから、問題はないはずだと。そしてただ単に目の前にいたのが

邪魔だった―それだけ。だからエルゼスはただ踏みつけて【彼女達の下に

ただ歩いて来た】。


満面の感激で腕に抱きついてきたのは当然セルアだった。美しい緑髪が動物の

尻尾を振るように揺れる。

「ゼス君っ!!!来てくれたんだね!」

「必ず来ると約束はしなかったが」

「信じてたもの!来てくれるって」

「…はぁ、そうかよ」

セルアは先程の怯えが嘘のように軽くウインクしながらエルゼスに抱きついた

片腕とは別の手をあげてハイタッチする。エルゼスも意味を知らなかったが、

ため息をつきながらそれに応じた。その後に2人は先程から何の反応も無い

ヒビキを見たが、何か考えや思う所があるのかそれとも助けが来るとは

思わなかったのか、半ば呆けたようにこちらを見ている。セルアは彼女の

名を呼んだ。

「ヒビキちゃん?」

その声にヒビキはハッとしたようにエルゼス達に目を向け

「すまない、私とした事が少し呆けていたようだ…初めまして、君が

エルゼス君だな?」

「…そうです」

(どう見ても年が下にしか見えない人に敬語ってのも違和感がありすぎる…

まあ、相手は仮にも生徒会長か)

そう思いながら先に行こうとした時

「て、てめぇらぁ!」

声にエルゼスやセルア、ヒビキがそちらを見る。ペールがいた。足を

ガクガクと無様に震わせながら。

「お、おめえぇら、俺の兄貴になな何したか分かってるかぁ?」

ペールは顔に汗をふきだしながらなおも言う。正直脂肪でふくらんだ体を

不自然な置き台とするなら、油水を自動で溢れ出す魔法ビンのようだった。

そんなペールの言い分にエルゼスはヒビキに目配せした後、何も思う所が

ないのか、無表情にこう言った。


「俺、何かしたかな?」

「あ…?」


エルゼスの口から洩れた余りに場違いな言い分にロットは唖然とした。そして

突如彼の頭にエルゼスが言った事の意味を理解し血が上る。エルゼスは

ロット自身、何をされても文句など言える権利はないだろうと推測されたのだ。

しかして事態はロットとペールにとってまずい方向へ流れ出す。次に口を

開いたのは生徒会長のヒビキだ。

「フム、何もしていないな」

「な―おいこらテメェらフザケ」

ロットが脂汗を流しながら苦しげに反論しようとするも


「な に も し て い な い な」


ロットが言う言葉をさえぎった有無を言わさぬ口調。ヒビキはロットと

ペールを雪山のような冷たい目で見下ろしながら言う。

「…ッ」

ロットでも分かる。分かるからこそ苦渋と今も無くなった足へひびいてくる

痛みに歯を食いしばる。つまりこれは始めロットが襲った事ごともみ消すと

いうおどしだった。


「さて、私達はようやく集合しだが…どうにもここでは場所が悪いようだ。

二人とも行くとしよう」

「うん、そうだね!ゼス君、いこいこ!」

そして3人の男女は何事も無かったように去っていく。ロットはペールに

肩を貸してもらいながら最後まで彼らをいつまでもにらみ続けていた。



しばらく寮から距離をとり私―ヒビキは二人を振り返る。

「ちなみに君、失礼ですまないが…風呂は?」

「…お風呂なんて3日に1回でも入ればいいんじゃ?」

エルゼス君の言い分が自然過ぎたので私は納得しようとし―余りにここ、

ティスフィーブルでの常識に外れていた内容にハッとしてこう返す。

「すまない、今の時間でも無料で借りれるから入ってきた方がいい。寮の

管理人さんに申告するのが朝風呂は手間だが、ね。セルアもこの調子だと

昨日風呂は…?」

「入って無いけど…」

良くも悪くも分かっていた事だった。昨晩の経緯はセルアから聞いている為

提案を続ける。

「2人とも入ってきたらいかがか?口うるさくてすまないがこの軍高に通う

生徒として悪い印象は持たれてほしくないからなのだが…」

「あー、えと、いいの?ヒビキちゃん」

「うん?」

何か、気を使わせる事があっただろうか?

「その、私達が言っている間、ヒビキちゃんは1人だし…」

その言葉に私は首を振る。流石に先程のような命知らずな輩はこの軍高には

そうはいない。…男ならば、だが。

「私も寮には戻ろう。女子寮の受付で待っているよ、セルア」

「あ、うん。じゃあ行ってくるね、ヒビキちゃん。ゼス君も後でね」

そういってセルアは駆けていく。それを見送った後私は

「さて」

と言いながら、帽子を被った先程大立ち回りした明日からわが校の

生徒となる少年の方へ振り向いた。


無感情そうな目が私を値踏みするように見下ろしてくる。そんな彼に対し

私はまず頭を下げた。

「まず、助けていただいた事に礼を言う。ああいうやから相手に実力行使を

ためらうのも甘いかと思ったが、色々込み入った事情があってな。多少

衝撃的でこそあったが、あれはありがたかった」

「いえ…俺は何もやって無いですよ。それよりすんません…学校の事とか

全く知らないんで…」

そういい言葉を1つ1つ選ぶように彼は言う。少し世間を斜に構えて

見ているからか、どう此方を見ていいのか迷っているようだった。


「私はヒビキだ。このような成りだが機龍軍高の生徒会長として君を

歓迎したく思う、エルゼス・クォーレ。そして、出来る事ならこの学校を

君に好きになって貰えたらと思う。…寮内の作りは分かるかい?」

「…一応、事前に送り付けられた教科書や資料には一通り目を通してるんで

問題はないです。…では、また後で」

「じゃあゆっくり入ってくるといい。今日はセルア共々宜しく頼むよ―と

すまない、最後にもう1つだけいいかな?」


この場を立ち去ろうとする彼にもう1つだけ言う。私自身が持つ

唯一無二の親友に関してだ。

「約束、できるかは分からないにしても考えておいてほしい事がある。

…セルアの事を出来る限りでいいから裏切らないでくれないか?彼女は

私がこの国に来て初めてできた親友なんだ。あの子は―帝国:カドラバ―に

いくつもある貴族の中でも危ういほど純粋で、彼女にあそこまで底抜けの

明るい笑顔で信頼を寄せられているのは君ぐらいなものだろう。彼女なら

君を偏見で見る事も無い筈だ。だから―頼む」

(当然ながら、私も君のような人物を偏見するつもりは余りないが―)

どうしても彼自身の気持ちや過去を考えてしまう部分があるし、他にも

思う所がある。そう思いつつ彼の背中を見送るが返事は返ってこなかった。


人の話は聞く人間のようだし、適当に考えるような真似はしないと願う。

…この世界そのものを―昏:くら―く見るような、それでいて鏡のように

あるがままを映し出す夜空色の目。帽子から覗いたその目がいずれセルアの

心を傷つけ、泣かしたりしないか心配ではあるが。


7年前、帝国へ友好同盟の印として私をつかわすと父は言った。

私は2つ返事で応じた。…既に両親には失望していたからだ。

帝国カドラバの侵略の手が間近に迫り、民達も戦々恐々とする中、私は

幸福と我が国固有の技術の隠ぺいを父上―国王に提案した。結果戦争は

避けられたわけだが―


父上の決断は友好同盟。そこは良かった。しかし、あろうことか、我が国の

新魔術的技術の最先端である魔導機龍―後に帝国があたかも自分達が

作りだしたように固有名詞でワイヴァーン等と名づける始末だ―の技術を

彼らに無償提供したのである。我が国の固有文化も引っさげてだ。これは

どう見ても我が国の全面的な奉仕に他ならない。完全な国務の委託と放棄。

仮にも、大きいとはいえただただ争いを広げ、支配を無計画にふくれている

国に対する態度ではなかった。


初めはこの国の内情を探り、決定的な秘密を握ろうとさえ意気込んだ。が、

ふとある町の外を散歩する内に出会ってしまった。ほっぺに可愛いらしく

スイーツのホイップクリームをつけ、それを肩にいる鳥につつかれながら

町外の林を駆け回っていた少女に。少女の名前はセルアと言った。


彼女の底抜けで何にでも自分の本音をぶつける性格が気に入った。軍高へ

私がある目的で入るといった際も、何の気も無しに後を追いかけて来た。

私はこんな1つ下でしかないのに何も知らない幼い少女だけは守ろうと、

心にそうちかっていた。


そんな彼女の許嫁として妙な虫が張り付いているのを昨日知った。しかも、

その相手は仮にも私が会長をしている生徒会や教師で容易に御しきれない

問題児達と来た。何とかしなければ。だがしかし、相手の裏にいる相当な

権力者相手に自分はただの友好国から送られた娘1人でしかない。私も

ドラグーン―としての適性があり、魔力を扱えるがそれを以てしても

無理だ。相手は場合によっては裁判で法的にこちらを裁き、処理する事さえ

できる一角の貴族集団。私の【専用機龍】が仮にこの都市へ配備されていても

帝国の機龍も馬鹿に出来た戦闘力ではまずない。そもそも私の―否、私が

乗れる専用機龍はここに無い。何か手はないか、そう思っていた矢先に。


そんな中でさっそうと現れたのが彼、エルゼスだった。冒険者と言うに

十分な強力な装備を持つ彼らを防具越しにすら足を砕いたあの怪力。異端、

嫌われた子とある彼が、編入報告書で示していた目茶苦茶な魔力数値。

あるいは彼さえいればあの冒険者まがいの貴族生徒のような帝国の

腐敗している部分に一矢報いる圧倒的な武器になるのではないかと。だから

私はそれを―独善と知りながらも自らの願いを彼に託したく思った。


あの親友だけは。私の親友だけは幸せであってほしいと心から改めて願いを

固める。先程の少年、エルゼスを利用してでもだ。今まで彼女の周りに

付いていた懸念に変化がもたらされる事ができるかもしれない。


(この青年には悪いが、サイをよりにもよって彼自身が投げたからな。

…可能なら私が君を、そして昨日見知ったとはいえ君が守った彼女を

救ってあげたいとは思ったが)

それ程に、初見で私は彼に妙な魅力があるよう感じた。もしかしたら私の

親友はそれに知らず知らずの内に惹かれたのかもしれないが。だがこんな

転機をもしかしたら来るかもしれないと思っていたとはいえ、すぐすがり

付いたのはあざといかもしれないな。それとも乙女の本能か?フフフ。

私とした事が、思考内で皮肉な冗談を言うとは久しぶりじゃないか?


少し暗い思いを巡らせながら私は女性寮の中に入り受付前で椅子に座る。

今度は別の事について少し考えた。先程2人に促した朝風呂は―

(…はて、その懸念が本当だった場合、色々あるのだが…それはいいか)

私はその時は気にしないようにした。しかし、それが後になって私達を

余りにもな名前で呼ばれるようになる始まりなのを私は知らなかった。



(…これは何かの罰か?いや、元々頼まれた事の重複だしまだ簡単か?)

浴室前にある着替え室の金属ロッカーに設置された籠の中に制服や

着ていた服と帽子や貴重品を投げ入れ、誕生日をパスワードにロックを

かける。ここでの学園での生活は自分にとって目立たずただ誰にも彼にも

無視され過ごす、通過事項だとばかり考えていたはずなのだが…そう

考えながら浴室に入り洗い石の泡をタオルにつけて洗おうとした瞬間


「だ~れだ♪」

「は?」

突如目の前が真っ暗になる。いや、誰かの手で覆われたのが分かった。

「…何してんだ?」

「えへへ、何してるんでしょう?」

妙に背中によく分からない弾力のある何かが当たっている。それに

何の感慨も無く邪魔な手をどかし振り返った先にいたのは生まれたままの

姿でタオルを持ったセルアだった。寮の管理人が湯を入れた風呂は

混浴場所だったのだ。少ないほうがいいと面倒に思ったのか、余計な空気を

読んだのか。はたまたそのどちらもだったのか。この2人とも知る事は

できるだろうがそもそも考えもしなかった。

「背中、洗いっこしない?」

そしてこの提案にエルゼスが断る理由は特になかった。


ごしごしごし

「どうかな?」

「肩から上、頼めるか?」

「頭まで洗っていいんだ?目、つむっててね」

ワシワシワシとリズミカルにタオルで髪を心地よくゆすられる感覚に

エルゼスは


ぴと


不意にセルア顔を自分の首と背の間くらいに

「ごめんね…しばらく、このままでお願い」

その声の後に、聞こえて来たのはおえつだった。

先程の、襲われかけた際のセルアの悲鳴とヒビキの声が思い起こされる。

恐らく―助けなかった場合どんな目に合う所だったかは理解できる。

身ぐるみを剥がされ、暴行で痛い思いをし、無残にどこかへ捨てられる。

エルゼスでも容易に想像はできた。かつて自分も本当に小さな子供の頃

そう言った扱いを同い年の奴らから受けたから。ただ、エルゼスが

想像する以上の最悪で酷い事を彼らが考えていたのは言わぬが花だろうが


彼女を裏切らないで上げてくれ


ヒビキのあの言葉は恐らく、難しい事なのでは?実際問題としてエルゼスは

セルアがどんな人生を歩いてきたのか。エルゼスは知らないし、エルゼスの

目的とは、彼女を助ける事は合致していない。知った事ではないと

はねのける事も出来るだろう。しかし


やくそくだよ


そんな事をした手前で、彼女に胸を張ったまま会えるのか?

「泣くんなら、短いほうがいいぞ」

「うん…ぇぐ…ふぇ…」

彼女の涙を背中で感じながら。少しだけでも、可能な限りなら綺麗で儚い

この少女を助けようと思うのだった。



「…フム?」

ヒビキは時計を確認すると示していたのは9時半。彼と話してから50分が

過ぎようとしていた。

「少し遅いか…?」

あんな事があった矢先なので心配ではある。ヒビキは颯爽と立ち、受付を

横切り浴室の前にある着替え室の扉が見える通路へ曲がろうとすると―

「うん?」

「あ」

「な…」

丁度、バッタリ。3人は出会った。


エルゼスとセルアは着替え室から出た所で。当然ながら並び同じ

着替え室から出てきた所だった。そんな姿を見たセルアはいらない妄想と

先程した懸念が爆発し―空いた口がふさがらず、顔を真っ赤にしパクパクと

はじめ意味も無く口を動かす。セルアはそんな奇行をする親友を気にせず

しゃべりかけ―ようとする前にヒビキの方から先に言葉が口からもれた。

「ひ、一つ聞いていいかい?セルア…」

「ヒビキちゃん、来てくれたんだ…って、どうしたの?」

半ば青くなり額を押さえながら、ヒビキは自分の親友に続けてたずねる。

「まさか君と彼は、もう男女の仲とか、色んな事をしているのか…?」

その言葉にセルアも顔をヒビキと同じように真っ赤にして

「え?そ、そそそんなのないよ!ゼス君に限って!でしょ!?ゼス君!」

「…?」

エルゼスの方はただ単に首をかしげるだけだった。ますます慌てる周囲に

エルゼスは疑問を投げる。


「先輩とお前は何を慌てているんだ?」


「だからな、エルゼス君。君はまさかセルアと…に、に肉体的関係を―」

「だから先輩、何ですかい?そのえーっと?ニクタイテキカンケイっての」

わけが分からないというようにエルゼスは言う。当然…ではある。学校すら

生まれて軍高が初めてのエルゼスに性の知識など皆無なのだ。元より

セルアのような女性の体を見ても発情とかそんなものを知らない彼は、

問題が起きる可能性は何か第3者が仕掛けた罠でもない限り、あり得ない。

知らない事をするエルゼスではない。だから恐らく、エルゼスに非は

無い筈であり、その後ヒビキが頭を抱え天井を見上げながら絶叫しても

戸惑うしかなかった。


「私の口からそんな言葉が言えるかぁああああ―!」

浴場前の通りからそんな悲痛な声がひびいた軍高学生寮だった。


【act5―中編へ】


さて、いかがだったでしょうか?次回である後編は可能な限り早く

お届けしたいと思いますが…それにしても予想以上に

メインヒロインの黒髪ツインテールロリ生徒会長、ヒビキの

描写が長くなりました


それでは出来れば次の話もよろしくお願いします!


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