act11(前編:それぞれの空で「彼らの美学と」
今回、話に少し矛盾が出てきましたので世界観に1つ足すものが出来ました。
そしてこのエネミーサイドの話である…!!!あ、アスカレナさんはお察しの
通りですハイ。そんなこんなで今回は彼らの見せ場を楽しんでいって下さい。
…今作切ってのおっぱい分が少ない今話!!アスカレナさんが揺らしていたと
思いねえ(何
セヴァルを抱きかかえベッドに寝かせたエアリシドは扉を叩く音に思わず
ふり返る。ノックは何回か続くのを幸いとセヴァルに毛布をかぶせたのと
ほぼ同時に、エアリシドは自らを霧散化させ気体となって部屋を出て行く。
―央都:ヴァルガナウフ―にある王城の執務室に残されたのは寝かせられた
セヴァルと決算用書類、その他に必要最低限置かれた家具だけとなった。
そんな部屋の中へ入ってきたニアテルスは入るなり辺りを見回す。今誰かが
この執務室内で動いていた。それを感じ取ったのだが、誰もいない。代わりに
感じるのは普通とは格段に違う濃厚な魔力の漂流だけだった。
「セヴァル、いるか…と…まさか、寝ているのか…?」
ニアテルスは彼が眠っていると言う事におどろく。長らく政務で会う事が
何度もあるニアテルスでさえ、セヴァルが寝ている所を見た事は一切無い。
また、彼が普段全く眠る事すらせずに業務へ―勤:いそ―しんでいるという
噂が真である事を知っていた。何故なら、いついかなる時間でも寝ている
様子がセヴァルには無い。それはニアテルスの業務に数日期間で共にしても
この男は寝る事も無くニアテルスの指示に従い作業を続けていた。その様は
ただ作業をこなす人形のようだった。王城の噂に聞く、政務の人形とは正に
彼の事を的確にさす言葉となっていた。そんなセヴァルの寝姿を見ながら
ニアテルスは思考する。
(殺すなら今か…?嫌、下手に今央都内でさわぎを起こすのは下策だ。しかも
こんな魔力の濃密な存在感では作為的にこいつを眠らせたものがいるのは
明白だ。そいつの思う通りに動いていい理由がない。…あの老人がこいつを
どうにかしたのでない限りは、な)
机の方へ投げ出されている書類に目を落とす。その書類の内容に目を通しつつ
ニアテルスは別の方向へ思案する。
(西の方はほぼ完了か…1つ抵抗の強い街があるようだが、そこについては
文字通り包囲制圧及びせん滅してしまえば問題にはなるまい。後は…)
「あの切り捨てた食い太りの豚どもがどこにいるか…北東の方に出向かせた
奴らにつかまっていたら即刻確保を考えねばならないが…」
ニアテルスは懐から取り出したもう一方の書類を見て深くため息をついた。
「中々、ままならないものだな…だが、仮に奴らにさらされた所で時は既に
動き出しているのだ…最早止められる者もありはしない…クク」
セヴァルの執務室へ近づきながら言うニアテルスはそこで、ふとゴミ箱に
何かが投げいれられているのへ目が向いた。乱暴に握り壊されるかのように
丸まっていた事だ。ニアテルスは不要な書類は片手でシャッと音を立てながら
数秒で折り畳んだ上で捨てている。これ程乱暴に捨てられているのを見たのは
初めてだった。
(余り優雅で無いのは承知の上だがな)
そのクシャクシャとなった書類に興味を持ったニアテルスはごみ箱からその
書類を取り出し広げてみる。そうして現れた紙の内容に首をかしげた。
「これは…?」
それは【ある航空兵器の完成図】だった。翼の作りと搭載された弾薬の変更や
装着する武装が非常特殊で一見そこに目が行くだろう。しかし、ニアテルスが
目を引いたのは完成した容姿だった。それはまるで本の中に出てくる複数の
動物を組み合わせた怪物のそれだった。その姿は合成獣とよばれる架空の
魔導生物だった。
元来、魔物が魔力から構成されたものだったとしたら、魔力の源である魔玉を
核に、生物兵器を作り出す事も理論上は可能だと。技術研究区の者やこの
央都にあるー機龍軍高:ティスフィーブル―の一部教師も論文として央都へ
提出している。しかし、その実物がなければ論文も机上の空論に過ぎない。
だが、ニアテルスは知っている。不本意ながらそれがもしや真なのでは?と
言えるそれを。
ニアテルスに向けて挑発する前のエルゼスが突然変異した軍高量産機とまるで
話をするかのように顔を見合わせたり、頭をなでていた事を。他にもそれを
研究しているのは自身が頼りとしている組織、―灼蛇:しゃくじゃ―にも
心のありかなどの観点から研究している者がいた。もっとも、その方向の話は
【その男】にとって副産物的なものでしかなかったようだが。
「もしや…これは…このようなものをこの男が…?しかし、それこそこれを
作る予算は―金貨数枚:数百万ロム―でさえ足らんぞ?そのような代物を一体
どこから…」
ニアテルスはセヴァルが執務時に使用している机に投げ出されている書類へ
目を通す。そして口端を釣り上げながら書類を何事も無かったように机へ
置き直し、言った。
「フッ…よもやこのような男にこんな部分があるとは、な。下手したら当の
本人でさえも承知することなくやっている節がありそうだぞ」
そんなニアテルスの皮肉が実は的を獲ているとは誰も知らずに。
ニアテルスは執務室を後にした。
*
場と時は変わり央都から西部へ数ヴェント離れた上空。上層部指揮官機である
ワイヴァーンが1機だけ飛んでいた。ニアテルスが乗る上層部機龍である。
「フッ…」
空をゆくニアテルスの口から笑みがこぼれる。そんな彼を見とがめる者は
その場に誰1人としていない。彼の眼下にはワイヴァーンの行く先へ向けて
―追随:ついずい―する指揮下の軍勢が隊列を一切の乱れ無く異常事態が
発生したらしい現場へ行軍している。そんな彼らの従順さにニアテルスは
打ち震えた。
(いいぞ…素晴しい…!!この私が指揮する軍勢は文字通り芸術のごとく
栄光の如く輝き敵を―屠る:なぎはらう―部隊でなくてはならない…!!)
逃げまどう愚鈍な存在共をけ散らしながら勇気ある自身が持つ軍に指示と
―激励:げきれい―を飛ばす。そんな夢と願った光景がいち早く見れる事に
ニアテルスは感動が隠し切れない。ニアテルスはこの感動を神に感謝した。
こうなった理由こそ妙な話なのだが。時はエルゼス達が央都を出て1日経った
日の晩までさかのぼる。
「スミス少佐が手間取っている相手がいる、だと?確かに西方面の被害報告が
非常に多く出ているようだが…」
「その通りであります。アナファルジャ残党軍の討滅中に巨大な」
「中佐には?また他の―上層部の者達:幹部及び隊長―には?」
「中佐と少将は南広域方面の管轄に従事しております。スミス少佐様は現在
現地で交戦中とのことです。中佐殿は…」
「その件は分かっている。さて、どうしたものか」
(あいつらが私の方に多大な厄病を振りまく事は無い筈…だとすると工作の
線は消えるはずだが…)
確かに【灼蛇】はある1つの目的の元に集った同志だった。しかし、互いに
信用を置いているわけではない。利用し合う部分はどんなに汚いやりようでも
利用し合う。そんな関係だった。しかし、最低限互いの足を引っ張り合う
真似はそれぞれに誓ってしてはいない。やったら最後互いの価値観の違いで
争ってもおかしくない程バラバラな組織でもあった。
しかし、逆説的にいえばニアテルスの足をそう引っ張る事自体が無謀であり。
現在計画を進めているこの帝国内でのトラブルは文字通りニアテルスへの
裏切りであり、最悪ニアテルスが帝国軍をもって他の灼蛇にいるメンバーを
滅ぼしてもおかしくない話だった。そして、灼蛇はそんなリスクが分からない
愚か者たちの組織では断じてない。ならこのトラブルは、どう考えても灼蛇の
組織内でさえ知らない災いの種である。即刻排除しなければならなかった。
「問題は早い内に解決せねばなるまい。ただでさえあの方面では央都の南で
建設している【あれ】に何かあるようではいかんからな。お前には歩兵全般の
統括を頼むとしよう。後は…いかんともしがたいが中佐を北東に行っている
一行から呼びもどすしかないな。問題は中佐が―商業都市:テルラスク―や
―要塞都市:イアシェ―にいるかどうかだが…伝令を急いでおいてくれ。
編成が完成次第、出るぞ!ジーク・カドラバ」
「はっ、ジーク・カドラバ!」
そう部下と共に敬礼してから12時間後、編隊が完了し王城を発つ軍の上空を
ニアテルスは飛ぶ。
緊急会議の結果、中佐が特務隊と共に向かった北東方面へは2つの都市へ
伝令所を届ける事に決定した。伝令は訓練された鳥などを用いて各都市へ
送り届けられる仕組みができている。特務隊が言った北東便を利用し、先程
ニアテルスは伝令を2つの都市に送るよう伝便局へ申し込んだ。
『西方面の制圧状況に異常事態が発生、至急現在地より西方面へ急行せよ』
機龍が配備された重要な都市ならば量産機を緊急の用事で借りて指定場所への
急行が可能、運が良ければ現場の方でおちあえるという打算を巡らせながら
行軍すること約1日。ニアテルスは前方でぶつかりあっている2つの巨大な
魔力を軽く崖や坂となっている場所のあたりから感じ取った。地上の副官や
軍がそれらに気付いたそぶりを見せていない事も。
(間抜けとは言え―少佐:ニアテオ―とまともに戦えたという事態・報告から
予想していたが何と言う魔力だ…!これ以上は進軍を止めねば…)
魔力で形成された手綱で機龍に命令し、軍のすぐ真上前方まで急降下しながら
ニアテルスは声を張り上げる。
「全軍、その丘の手前で止まれ!」
「はっ?准将様、それは…?」
「いいから隊を止めろ!それ以上は貴様らの命の保証ができなくなるぞ!」
「り、了解!全ぐーん制止ぃ―――――!」
ザッ…ザッ…ザッ!!
副官の命令通り見事な3歩目で軍隊は制止する。先頭の副官の元へ機龍を
おろしたニアテルスは指示を飛ばしながら崖へと自ら慎重に歩いていく。
「よし、少し下がった林の方で第1拠点を作れ」
「あの、准将。一体何が…」
「これ以上前に来るな、来たら―」
その先をニアテルスが口にするより前に、鞘越しに腰へ吊るした魔剣が障壁を
張る。それと同時に
ブワッ!!!
その障壁を無数に巻き上げた風の刃が崖の底より吹き荒れた。ニアテルスの
後ろで副官は言葉を失くしている。ニアテルスは崖から舞いあがった2つの
影をにらみ上げる。
それは上層部用量産機龍に乗り狂ったように笑うニアテオとその機龍とは
倍近くも身長差があるバケモノが上昇しながら暴れ回っていた。現れたのは
いくつも人の苦しむ顔があるかのように見える模様を羽につけた6枚羽の
―蛾:が―だった。互いの風の刃が交わり色とりどりの刃が周囲の崖さえも
削り取っている。このままではいずれこの周囲も戦いの余波だけで崩れる
危険な状況だった。互いの攻撃をき当て、破裂させ、相殺させ合う。まるで
ロンドの打ち合わせを事前にしたかのような高度な攻撃の読みあいが理性とは
かけ離れたこの戦いの次元で行われているのをニアテルスは見た。
争い合う事で巻き上がっている風は清らかな輝きをもっている。ニアテオと
蛾が操り刻み合う風の刃が風の持つ本来の姿とでもいうかのような異様な
自然さをニアテルスは感じていた。他の者達がどう思うかは分からないが
ニアテオとこの羽虫の化け物は互いに相当な強さの領域にありながら、それを
宿命づけられたような強さをもっていると。かつての戦いで弱く愚鈍な者達を
葬ってきた作業の如き戦いの対象とは一味も二味も違っている。間違い無く
そう感じられる何かをニアテルスはこの戦いから感じ取った。
PRRRRRRRRRRRRRRRRRRRPRRRRRRRRRR!!!
「アハハハハハハハハハアハハハ!!!!コワレコワレコワレロォオオ!
ソラニハボクダケボクダケボクダケイレバイイイイイイイイイイ!ホカハ
イラナイイイイイイイイ!ゼンブキエロオオオオオオオオオオオオオオ!
アハハアハハハハアハハハハハハハハハハハアハハハハハハアハハ!!!」
しかし、そうである故にニアテルスは手を出すわけにはいかなかった。現状は
何とかしなければならない事態なのは確かだった。しかし、今のままでは
ニアテルスだけではまずこの状況をどうにかする術と力がない。収拾へと
乗り出す勇気を無謀とかけ違えてはいけなかった。
ニアテオは間違いなくニアテルスを自らが遣える対象と認識しない。彼が
強さの代償にしたこの狂いようは最早理性を【解放した】上での強さだと
ニアテルスは知っている。その事実と今更ながらこのような者でも手ごまに
置くしかない己の無力さに対してニアテルス落胆していた。
「到着したとはいえ流石に私の手にもこの事態は余るか…」
ニアテルスのそばにいる副官さえも重く押し黙るしかなかった。ニアテルスは
おろか軍全員でしかけた所であの暴風を止められる者はいない。むしろ、
無意味な犠牲が増えていくだけだと分かっているからだ。
幸いこの化け物2対象が副官とニアテルス、また後ろで拠点を作りつつある
部隊に気づいていないことが幸運だった。しかしこのままではいつこちらに
気付かれ、牙を向けられてもおかしくなかった。アスカレナがいない現状では
ニアテルスも2人がかりの相手で死に軍も壊滅的な被害が出てしまう。
そんな沈んだ状況で、副官がふと右上の空を見上げる。黒い影がこちらに
向けて大きくなってきている―すなわちこちらへ接近している事に気づいた
副官は遠見筒を取り出した後、影を期待の目で見―声を張り上げた。
「援軍です!一機のみですが…あの空の方角から来たと言うことは!」
副官の叫びにニアテルスもすくわれたように声を上げる。
「エッチェンバルグ中佐、連絡が早くに届いたのか…!?」
ニアテルス1人だけではこの事態―2つの障害を無力化するには力不足と
認めるしかなかった。事実、ニアテオとバケモノの戦闘は地形すらも変え、
このまま続ければ西方面を無きものにさえしかねない勢いだった。機龍と
ニアテオに宿る狂犬の人格はそれ程に凶悪で、それと渡り合う化け物も今
ニアテオと争い合えている時点でとんでもない強さをもつのだろう。機龍に
乗ったニアテルスでもどちらか1つを無力化するだけでもただでは済まない。
だが、ニアテルスに匹敵する実力を持つ者がもう1人いれば。
そのもう1人とも言えるアスカレナが准将のとなりやや後ろへと、機龍を
降下させ―准将の斜め後ろへさっそうと歩いてくる。
「ヴォーゲ准将、連絡を聞き参りました。して、これは…!!」
アスカレナが来て早々言おうとした事にニアテルスはうなずく。かわす言葉は
少ない内に状況を開始しなければならないようだった。
「スミス少佐の方を頼んでいいかね?」
「了解しました。アスカレナ、行かせて頂く!」
「ゆくぞ…!!部隊の者達は拠点作成の追加に防道閉鎖の令を出しておけ!」
「了解しました!どうかお二方ともご武運を!」
この戦いの余波でさえ何も持たない副官には辛かったのだろう、敬礼しつつも
押されるように軍が下がった後方へ駆けていく副官にニアテルスはこの件が
片づいた後に何か労いの意味を込めたモノを寄こそうと思いつつも自身が駆る
機龍へ再度乗る。そしてアスカレナの乗った機龍と共に暴風渦巻くがけ下へ
向かい―2つの影を見るなりニアテルスが機龍の口内爆撃機を連射する。
ドドドドドド!
PRR!?
「ソラァ!?」
鋭い横やりに2つの影は分断され、その分断された間にそれぞれ機龍を駆る
ニアテルスとアスカレナが横切る。いきなり仕掛けられた事態に制止し2人へ
影がむきを変える中、ニアテルスは打ち合わせ通り怪物の方へ接敵する。
見れば見るほど醜悪に見える蛾の化け物に対しニアテルスは翼関節に付いた
爆弾頭の一部を掃射する。
ドドドドドドド…!
総計6つの爆弾頭がこちらの攻撃に反応し旋回で逃げ伸びようとした化け物へ
―殺到:さっとう―し、爆撃音を鳴らす。直撃したと、確かな手ごたえに
確信したニアテルスのに飛び込んできたのは、無傷の化け物だった。
「な―」
思わず声を上げそうになる、が。熟練の戦闘技術が何かに背後に回られた事を
ニアテルスは即座に察知する。そしてこちらに向けて直線的な何が迫ってきた
事も察したニアテルスは機龍の体を最小限の反転で背後からの攻撃を交わす。
シュッ!
ニアテルスのすぐ背後を怪物の細長い口が通り抜けた。その管のように伸びた
口はかわした先にある木々に刺さり―刺さった気が精気をしぼられた様に
一瞬で葉が落ち枯れ果てた。
内心ゾッとしながらも、しかし敵の方へと振り返り―ニアテルスは笑みを
浮かべた。さっきの全てかわされたのはどうやら幻覚だったらしい。証拠に
羽は少しニアテオの戦いの影響なのか、所々が良く見ると切れている。更に
これは好機、とニアテオは更に爆弾頭と口内爆撃機を並行使用し弾幕を張る。
当然これに反応しないバケモノではなく、難なく旋回し回避する。しかし、
その旋回先に先行し迫っていたニアテオは魔剣を片手で抜いていた。黒く
禍々しい魔力が魔剣に帯びる。
ズアァッ…!!!
交差は一瞬。しかし幾重にも蛾の化け物は切りさかれ、ばらばらの残がいから
更に黒い霧に変質し消えていく。だが、ニアテルスの機龍も無事にはいかず、
翼部関節部にある爆弾頭搭載箱が爆発する。
「チッ…!」
舌打ちしながらも引導を確実に渡すに問題ない言ってだったはずだった。そう
納得しながら後方に拠点を作ったろう自軍へ一旦戻りつつもアスカレナが
ニアテオと戦いを繰り広げられている場所を目視把握する。
(破損部分を修理次第、加勢せねば…万が一は無いと思うが、彼女もこんな
事で失くすわけにはいかん…)
ニアテルス様の爆撃により横やりを入れられた争いに割り入り、私は
スミス少佐と対峙する。
「ボクノソラボクダケノソラダア!ホカハイラナイゼンブゼンブイラナイ!
キエテキエロキエテナクナレバイインダアアア!!!」
そう言うが否や、機龍の魔玉に含まれた魔力さえ風の刃に変換し、少佐は
放ってきた。普通、こんな戦い方をしていては機龍でさえ長くはもたない。
己自身が規定している力の【鍵】にさえお構いなしか…少しばかりため息を
つきながら背にかけた私の―聖遺物:アルク―を抜く。全くこの少佐は…
別部隊の隊長とは思えないデタラメだ。しかし、私はそんなこの男の様子を
ニアテルス様やアホ中佐、そしてレギット少将殿以上に察していた。
彼は【加護持ち】だ。本来ならあり得ない存在。
それ故にあのように常に誰かから―疎まれ蔑まれ:うとまれさげすまれ―た
結果、おびえながら暮らす生となってしまったのだろう。同情こそするが
こればかりは私でもどうしようもない。
加護と言うのは本来遺跡や物質など無機質に宿るものであり命あるモノには
宿らず、また独自の意思をもつというわけでもない。そこにあるのはただの
法則、理。そう言われるものだ。世界を作りかえる際に世界へ散りばめた
魔力の恩恵が、この加護の正体。増して人が人格が変ぼうする程に浴びる
シロモノではないはずだった。
私の出た家は少なからずそういった理を作り出した組織に関係する。世界を
創生するその理に触れた組織―「白」からかつてこの帝国の地盤を作る戦争を
機に離反を企み―それを成功させたのが私達の一家だった。
そして万物を構築する【理の座】に触れ、白の望んだ世界が今この万象を
基盤と子供が作ったようなこんな世界だが。少し私は落胆した。こんな加護を
作る事に何の意味があったのか。それともこれは座に付いた「白」の組織の
あずかり知らぬ異常事態なのか。思案を巡らせながらも私は量産機龍の少ない
爆撃とアルクから発する稲妻で弾幕を形成し敵の軌道先へ攻撃を的確かつ
容赦なく、さし込んでいく。当然敵からの攻撃は少ない軌道で回避しながら。
突っ込んでくるならでかい的だからアルクを直接伸ばして刺せばいい。全く
上層部機龍は少ないものを…
「キエロキエロキエロナニモカモナクナレ!ソラソラソラソラ!ボクダケノ
ボクガスベテノソラ!!ソラダケアレバボクダケソラダケアレバイイノニ
ナニガイルナンデイルスベテイラナイナニモイラナイイイイイイイイイ!」
正直気が滅入る。ただ、ニアテルス様の思惑通りにもこいつは【無力化】で
何とかしなければなるまい。
本当に本能だけで飛ぶ存在と言うのは厄介だ。こちらの思考などお構いなく
好き勝手かつ滅茶苦茶な軌道でこちらをおそってくる。全ていなしているが
万が一私を倒した所でこの男は止まりはしない。本能のままあり続けるだけ
世界に傷を付けるはた迷惑。ただ―
「そろそろ、時間だな」
元より、私の中にある力は【礎:いしずえ】とする力だった。様々な存在の
ふみ台、土台や基盤として形成されたもの。しかし、そんな古い力が私の
持つ力だったとして―
「加護1つ手にしただけで、―我が家の宝槍:アルク―を持つ私とここまで
戦えた事自体が評価に値するのだ」
既にこの周囲の理は加護へと対抗する私の【呪】で満たされた。それは雷で構成され何面も編まれた立方体の網となり少佐を包み込む。
「ソラソソソソソソララララララララ?!ナナナナニシタナニシタナニ―」
「耳障りにわめくな。それがお前の本能の結果だ」
私は指を鳴らす。私が乗っている機龍も、少し疲れたかと思いながら
バラバラになって落ちていく機龍と少佐を見下ろしつぶやく。
「任務完了…百害あって一利無しではあるが」
私はイアシェに戻らなければな。セルアとあの2人…に一応軍曹はしかと
しているだろうか?
―act11(後編)へ続く―
後編も恐らく5日後になりそうです。それでは皆さん、GW共々お楽しみに




