act2:到着「少年の来訪が作る波紋」
ようやく投稿できました。前話にも言いましたが視点変更が多いです。
何にしても、今回も皆様にとって楽しい読書であることを
目が覚める。今日はずいぶん早く起きた、と眠気なまこをこすりつつ。
確認した時計はまだ6時を過ぎたていどだった。そしてあたし―
キロメ・クォーレはこの確認した時刻に10年にも満たない人生の中で
これ以上は無いほどしぶい顔をする。思い出した。いいや、ちがう。
思い出してしまった。
「あいつが行く日かよ…クソが」
あたしん家の汚点。それがようやく私の目の前から消えるだろう当日に
早起き。しばし呆けた後、あたしは伸ばした髪をガサツにワシャワシャと
ほぐす。そしてベッドのとなりに置いた髪留め2つで両はしの髪を
しばり上げ、部屋を出た後かいだんを下りて行った。…母さんはすでに
起きている筈だな。
*
「あら、おはよう。早いわね?キロメ」
「はよーさんだぜ、母さん」
いつもより早く起きて来た私の娘、と呼べるだろうこの子に私は挨拶を
しました。この子も何気なく返してくれます。こうなるまでに2,3年も
月日をかけたのが今もなつかしく思います。…いつもならば【あの子】も
そろそろ起きてきて「おはよう」を言うはずなのですけど…今日はあの子は
家にはいません。
「あのバカ、本当に町の外でねたのか?」
「そうね、そうかもしれないわ。ゼス、ウソだけはつかないもの」
私が、腹を痛めて産んだ子は目の前のキロメではありません。他でもない
この帝国で忌子とされる2種類の色をした髪を持つ息子エルゼスです。
しかし…10年ほど前、ダンナ様の紹介で訪れた旅の夫婦が連れていた娘と
遊びから帰って来た日よりその髪は少しずつ輝くように色を変え―あの
方々がこの町を去った時には忌子の証とは思えない鮮やかな紅と白銀の髪に
変わっていました。それでも、この子が言う通り…
「んなの関係ねえ。フォルデロッサにいるおおぜい共と同じ言葉だってのは
しゃくだが、あたしはあいつなんざきらいだね。少なくとも、好きになんざ
なれるわきゃねえ」
この町、いえ、それだけではなく世界中の大半がゼスを嫌うのは時間の
問題でしょう。この町と同じように15年ほど前に起きた戦争後である今も
帝国は他国とのいさかいや争いを続け、支配の手を広げる事をやめません。
キロメの言葉が過去形なのはこれからもう2度とゼスと顔を合わせることが
ないからでしょう。それでも―
ふと、何かに気付いたのかキロメが突然食事中のイスから立ち上がり、窓を
乱暴に開けました。少なくとも親として愛した私の息子がこの町の北西に
ある門に向かい歩いていく所でした。振り向いたゼスの顔から察するに、
キロメはそれはもうかくやという顔をしているのでしょう。
まだ生まれて8年しか生きてないこの子は血が半分だけ繋がった
兄である私の息子にあらん限りの、恐らく最後の暴言を言いました。
「せいぜいあがけ!んでもって死んじまえや!化けて出ようが何だろうが
間違っても二度とこんな町来んじゃねえ馬鹿アニキのクソが!」
そう言い見送ったキロメと、きっともう2度と戻らないだろう私自身の腹を
痛めて生んだ息子を、私は静かないつも通りの笑顔で見ていました。
*
「来たな、坊主」
腕を組み正面からでむかえた俺様を見るなり坊主と呼ばれたそいつ―
エルゼスは苦笑しやがった。
「何て所で立ち止ってんだよ…そこ門の正面じゃないか」
苦笑と言うよりはあきれの方が大きいだろうか。最もそんな事を俺様が
知る所ではない。行く前に渡すものはすでに俺様の後ろにある。それで
俺様は昔からの好であるこいつを…送り出すのだ。
「今度こそ、お前には乗り抜いてもらうぞ、坊主!」
「確認する方法、無いよな?」
「ところがどっこいってもんよ!その車にゃ、俺様特製の発信器がしかと
ついてんだ!この日の為に作ったとっておきだぜ!!」
「…」
「そんな輝かしい笑顔でこめかみひくつかせるねえ!これだから若い身空で
お前は細けえこと気にし過ぎなんだよ!!」
ガッハッハと半ばごまかすように(あくまでごまかすようにだ。断じて
ごまかすために笑ったわけじゃねえ)笑った後、顔を引き締めいよいよ
俺様は本題に入る。
「魔力による調整はそいつが限界だ。それと最悪、壊れた際の連絡先も
コンソールの収納場所に入れてある。宛先は俺様の兄だ、俺様が作った
これよりも大きい車でお前を届けてくれることだろう。最も…修理は
タダでも呼び出し賃はしっかり払う事にならからなあ!俺様の兄貴も
義理人情深いが、がめついぞぉ!」
そう言いながら俺様は笑う。
「まあ…とりあえずは動かしてみるさ」
そう言い、俺様の作った魔導車の―魔力炉伝達端末:シリンダーへ坊主が
試しに触れた。そして
ガギャアアアアアアギャラギャラギャララララギャラ!…ボスン…
何時もこいつがやった時と変わらない悲鳴を上げるような駆動音に
俺様も両耳を押さえちまった。その音が終わったのを確認しながら耳から
手を離し―けむりを噴き上げたベルーグを見てオレ様は呟く。…つまりだ
「またしても…なのか?」
「…さしあたり、どこまで行くか試してみるよ」
「そうか。ありがとうな坊主…俺様ぁ、もう駄目かもしれん…」
「何言ってんだ。この町じゃアエルードしかベルーグを作れねーんだぞ。
それに俺はこれからこの町を今から出てくんだからな?」
「…くぁーったく!今度会ったらただじゃあおかねえぞ!オレ様はなぁこんな
事でくじけるタマじゃねえってんの!!」
「はぁ、そうかよ…」
そう地団太ふんだオレ様をいなしながら、坊主は危険承知で俺様が作った
ベルーグに乗る。帝国の央都よりはるか南東の端にあたる俺様達の
田舎町からじゃあ歩いたら何日あっても付きやしねえ。結局こいつのために
魔力調整機能をこの町で集まる素材最大限に使いきって作ったベルーグでも
こいつの持つ魔力量の前には暴走しちまった。
「行ってくる。これまでありがとうな、アエルードおじさん。墓の下で
寝てる俺の親父によろしく頼むぞ」
「あんだよ、お前自分の親父より昔知り合ったっつう嬢ちゃんの尻かい。
わぁーったよ…どうか達者でな。エルゼス」
そう言いあいつはベルーグを発進し―俺様のベルーグ共々悲鳴を上げながら
丘を下って行きやがった。それこそ途中でとんでもねえほどの盛大な
回転ジャンプまでしちまいやがって…影が小さくなっても煙が見える辺り、
1時間もてば奇跡か。―俺様ぁこれまであいつの親父である親友―アントルの
代わりはやれただろうか?
そう思いながら通信機を手にする。こいつはただでも性格がひねくれるしか
なかった世の中でそれなりにまっすぐ育った、あの坊主への餞別だ。
「おう、兄貴。オレ様だよ。例の坊主が町出た。俺のベルーグじゃあ走って
1時間が限界そうだ。そっちが偶然こっちに向かう用事があったって事に
しねえとそいつが死にかけるだろうし、すまねえが―」
*
夕方、あたしが着替えて更衣室から出ると、空いた窓から入ってきた
【この子達】がさえずりだす。
『タテモノ、マンナカ、ヒダリハシ、クサムラ、キノミ、ナッタ』
『オナカ、ヘッタ、ホシイ、オイシイノ、ホシイ』
「わかった、わかったから、せかさないの!と言うか前見えないから」
急いで目の前を飛び回るこの子達から顔をかばいつつあたしは校舎の壁を
背にする。【この子達】も最近悪戯の数や質がエスカレートしている
気がすると思いつつ、階段を下りて言い分に心当たりのある場所に向かう。
この学校は中央に鐘を鳴らす塔が建っていて、その周辺の庭に足を
踏み入れると…
『アッタ、アッタ、マダ、トレル』
『タクサン、デキテル、ウマソウ!』
この子達が飛んで行き回り始める。しゃがんで草を見てみれば言う通り
相当できてたみたい。ポンシンソウの実が綺麗に直立した葉に紛れ込む形で
実を生やしている。採取はこの機龍軍高では流石に校則規定されていない。
つまり早い者勝ち。あたしはすぐさま懐から採取用の切物を取り出し
バン!!!!!
頭上でひびいたとてつもない乱暴な音に驚いて思わずホフク体勢に加えて
頭上ガードまでしちゃった。一体何だろう?確か壁の向こう側は…
教頭室だっけ?
「全く何をしているのだ!そんな所を気まぐれに審査した結果、よりにも
寄って適格者が見つかる事になるとは…」
「い、いえ…書類内容を拝見した時には既に手遅れでして…調査員を
【上】の手違いなのか急かす形で出してしまったようで」
「言い訳はいい!…だがこの分だと報告書は必要ないのか?いや、そんな
事よりも…魔玉の方の処分は―」
『サワギ?サワギ?』
『キマグレ?シンサ?どらぐーん?』
この子達が聞こえてきた内容に疑問を持ってる。教員内の事情で何か
不都合な事でもあったのかな。あてはあるからその人の所に向かおう。
…採取は当然済ませるよ?
*
「それで、私の所に来たということか」
書類の束を2回ほど机の上で叩き整えた後。目の前で机に腰を預けながら
木の実を2匹の小鳥に分け与えている長年の親友を見る。駆け足で
飛び込んできた時の動きから見るに、またこの子は上半身の下着を
つけていないようだ。動くと何かザワザワすると言っていたが本当は、
今も大きくなるサイズに合わせるのが面倒なのだろうとは思うが。
「うん、ヒビキちゃんなら多分新入生だし分かると思うんだけど…」
校則内では野生の鳥などを校舎内に入れる事は非推奨とされている。
そしてここは生徒会会議室。今日の会議が終了してから約5分後の現在。
後少し早かったら困ってたかもしれないと思いつつ、書類を探してみる。
「話から察するに普段行かない辺境の町?のようだな…ここ最近調査した
記録は……」
名簿系統の資料を確認し、すぐその書類があった事に少し呆れたよ。あまり
話に聞かない田舎町のようで帝国の端の端、南東に位置する村とそのように
表現してもいいような町。かろうじて腕に自信があるらしい鍛冶師達がいた
おかげか町の囲いができており、ギリギリ町の基準に乗っかるという
何と最早と言うような町だった。
「これは、ここに何かあるのではと確信した【上】からの圧力か何かで
調査したように見えるが…」
「何かあるのかな?やっぱり…」
調査結果を見てまゆをひそめる。調査ででた適正者は1名。数値的な部分は
でたらめなのが並んでいたので斜め読みだけし、写真を見る。この帝国で
言う所の赤と白銀を組み合わせた―忌子の髪がまず目に映った。
「よりにも寄ってこんな季節に、か…」
書類の写真もさることながら、本人能力のでたらめとしか言えない数字の
羅列を作った調査結果報告書にため息をしつつ、私は自身の小さな体を
―気にしてるのだが育たないものは仕方あるまい―いすから軽く飛んで
下りた後に窓の外を見る。町と平原を超えて見える地平線の彼方。…私の
故郷である国、アカナチでは北風が体に障る季節になっているだろう。
*
「それで、これはどういう事だ?」
「出過ぎた真似でしたでしょうか?貴方様が気にかけていたので」
「フム……まあいい。今後も私の為に尽くしてくれるとありがたい」
「承知しております…全ては、貴方様の為に」
*
天命という言葉がある。天から与えられた運命やら、寿命やらそう言った
類のものを指すらしい。何て、アホらしい言葉だとエルゼスはベルーグを
搭載した車両に乗りながら思っていると隣―運転席の方から声がした。
「ベルーグと同じ乗り心地は期待しねえでくれよ?」
「むしろ、いいくらいですよ。助けてくれてありがとうございます」
「気持ちぃこもってねえなあ、オイ。まあ、こんな偶然があると何か
勘ぐっちまうかい?」
そうやってニヤリと笑うのはアエルードとうり二つのヒゲをたくわえた
顔全体が三角形、髭も加えるとひし形に見えるドワーフだった。
「まあ、あんなん見たので、どうしようもないのは丸分かりだし、送り賃は
無しでいいぜ。修理もまあ、央都に戻りゃあ簡単にできる事だからそれこそ
坊主が気にかけるこたぁねえ」
思ったより気前がいいのか、それとも彼の弟であるアエルードから何かしら
吹き込まれたか。何にしても、エルゼスは安堵をもらした。
「しっかしお宅、昔からあんな魔力操作してるんかい?」
「制御は一応してるつもりなんスけど…あれが限界で」
思えば何時ごろからだろうか。エルゼスは考えにふける。
ちょっと魔力を送り込むだけにもかかわらず魔力で動くものをことごとく
破砕、もしくは暴走させてしまうお約束ともいえる過剰な魔力の付与。
ただ一つ破壊も暴走もしなかったのは…
「あの不思議な、意思が宿っているとか言う魔玉だっけ…」
「そりゃそうだろうよ!その中でも純化しているものだろう検査用の
魔玉まで破壊できちまったら、古代の魔王復活やら、そうじゃなくても
そういうまぬけなキチガイ話になりかねねえ!ただでさえこの帝国は…
ゲフンゲフン」
チェトフがせきばらいをワザとらしくしている内に、黒い大きな壁が
見えてくる。自分のいた町とは数倍もあるだろうその城壁のような門の
整路をそれた少し手前で止まり、アエルードの兄、チェトフは言う。
「ま、細かいこたぁさておき。付いた事だし、歓迎させて貰うぜ。
ようこそ、―帝国:カドラバ―の―中央都:ヴァルガナウフ―へ!」
そんなわけでヒロイン2人の視点も加えてact2、投稿です。
いかがでしたでしょうか?可愛く描けていたらいいなあと思います。
え?妹はヒロインじゃないかって?HAHAHA
まったく、小学生は最高だぜ!とか言ってそうなそこの君
ちょいと今から体育館裏行って来い、ジャンクにして差し上げよう!
申し訳ありませんがエルゼスとキロメは父親の同じアレによって生まれた
れっきとした兄妹…の筈です(←
ちなみにヒロインと主人公の視点にいるキャラクター以外は
次章―少なくとも十数話後―まで登場予定がありません(←




