第69話 無理難問5
「ねぇ飛鳥 期末・・・何か賭ける?」
「えー?だって燐が勝つに決まってんじゃん」
うそばっかし 飛鳥のが入試の成績よかったの 私知ってるんだからね?
「いいじゃん!何かしない?ね?」
「・・・んじゃーお前が勝ったら帰りにアイスでもおごってやるよ」
「ホントに!?じゃあ飛鳥が買ったら・・・何にする?」
「・・・・・・」
しばらく沈黙が続いた。
不意に飛鳥が顔を真っ赤にした。
「飛鳥?」
「あ・・・いや なんでもない!」
「???」
「・・・あのさ」
「何?早く言いなよー」
「・・・・・・・・・キス しちゃだめ?」
「は?」
小さい声で なにやら・・・言ったけど・・・
「いや、なんでもない!!」
飛鳥はくるりと私に背中を向けた。
「何さ 別に試験で賭けなくったってしてもいいのに」
私がくすりと笑って言うと飛鳥はこちらを向いて私の顔をじっと見る。
「・・・何?」
「・・・俺からじゃなくてさ」
「へ?」
「お前から。したことないじゃん」
「・・・ええぇえぇ!!?」
私からキス!?やだよ!そんなの恥ずかしいもん!!
「い いや!!」
「じゃあ お前が勝った時の物もう少し高いのにしてもいい」
「・・・じゃあねーアイス1週間毎日1個買ってよ」
「んー・・・まぁいいけど?1週間で毎日1個ならな。」
「やった♪負けないからね!勉強しよ!!」
「俺も勉強しよー♪」
飛鳥がご機嫌に言う。
「あ、お前言いそうだから今言っとくけど『やっぱなし』はだめだからな。そしたら罰ゲーム」
「う・・・言いそうだなぁ・・・」
「言ってもなしにはしないからな♪」
「はいはい・・・」
私がため息をつくと服を誰かにひっぱられる。
そちらを見るとそこにいたのは華穂。
「華穂?どうかした?」
「あのねー克哉がすごいことになったよー」
「へ?」
克哉の席のほうを見ると克哉はいなくなってた。
おかしいな・・・勉強してたんじゃないの?
「すごいことって?」
「あのねー明美のところに行ったの」
華穂がにっこりと微笑むから、すぐに克哉がどうなったのかわかった。
「・・・バカだねぇ アイツも。」
横で飛鳥があきれたようにつぶやいた。
「ね 飛鳥は私のためなら明美に殴られてもいい?」
飛鳥に言うと飛鳥はきょとんとした後
「当たり前じゃん で?克哉は?」
さらっと言ったけど 飛鳥の顔が赤いのはわかった。
「んとねー保健室」
華穂がくすくす笑いながら言った。
私は飛鳥と華穂の手を握る。
「んじゃ 保健室行こ!」
そう言って2人の手をひいて 私は教室を出た。
「ちょ・・・燐!離せ!」
後ろで飛鳥の声がしてぱっと手を離す。
「あ、ごめんごめん つい・・・」
「いや 謝るこたねぇけど・・・」
飛鳥が顔を赤くしたまま言う。
「あー 飛鳥照れてるー♪」
華穂が飛鳥を指差して笑った。
「失礼します・・・先生 克哉は?」
保健室の先生に言うと先生は困ったような顔をしてベッドを指差した。
そこには顔をゆがませた克哉が横たわっていた。
「克哉 大丈夫?」
私が言うと克哉は目を開けたが黙ったまま。
まだ『女の子と喋らない』を貫いてる。
・・・と すると
もしかして 明美のけりをくらった後に 立ち上がれた・・・の?
「・・・オイ 克哉 大丈夫か?」
飛鳥が言うと克哉は口を開く。
「大丈夫じゃねぇよ・・・あの野郎 ようしゃねぇな・・・」
「当たり前だ。明美だぞ?んで どうだったんだ?結果は」
「・・・・・・・4秒」
克哉は小さな声でぼそりと言う。
4秒で・・・立ち上がった?
『あの』明美の飛び蹴りをくらって!?
「すごいじゃん!克哉!!」
「よかったな。んで 夢乃は?」
飛鳥がキョロリと保健室を見るが夢乃はいない。
「・・・蹴られる前 呼び出して・・・目の前でやったんだけど・・・俺が保健室に運ばれてる時にどっか行った・・・」
あーあ・・・夢乃・・・
「ま、これで条件1つは完璧クリアだろ?じゅうぶんだろ」
「・・・試験とランニングと・・・女・・・最悪」
「お前 本当に女好きだったのか?」
「本当にっていうか・・・夢乃まではいかないけどさ やっぱ女って可愛いじゃん」
「そうかなぁ?」
「・・・テメェにゃ燐がいるからだろうが 全然振り向かない好きな女と黙ってても近寄ってくる好きではないが可愛い女 どっちのが楽で楽しいと思う?」
克哉が震えた声で言う。
そりゃあ・・・夢乃見てたらそう思っちゃうよねぇ・・・
「まぁ・・・なぁ そりゃあ・・・思うよなぁ」
飛鳥も諦めたようにそういう。
「お前は燐がすぐに振り向いたから運がよかったよ。俺なんて ずっと好きだったのにこの有様だよ」
ゆっくりと克哉が起き上がる。
「・・・つ・・・」
苦しそうに顔をゆがませる。
「・・・こんなんで朝走ったりなんかできやしねぇ・・・」
「大丈夫か?お前・・・」
「大丈夫なもんか 全身痛ェよ。特に腰と肩を思い切りやられたからな・・・痛すぎ・・・」
「明美も容赦ねぇな」
打撲痕を見て飛鳥が言う。
「まさか明美もお前が4秒で立ち上がれるとは思ってなかったんじゃねぇの?」
「・・・・・・女の友情ってのは恐ろしいな」
克哉が力なく言う。
「は?」
「明美が本気で俺を殴るなんて 夢乃のためだろ?」
「まぁ・・・そりゃあ・・・」
「そんなに俺 信用ねぇのかな」
明美は 自分に言い寄ってくる男や明らかに悪いことをしてる人ぐらいしか本気で殴らない。
後は試合とか・・・練習とかで。
なのに 特に悪いこともしてない克哉をこんなに殴るっていうことは 夢乃のため。
簡単に言えば 明美は夢乃と克哉がつきあうことに反対なんだ。
そりゃあ 私だって・・・っと これはいえないんだけど・・・。
克哉みたいな女好き 夢乃がだめなパターンだよ。
若い女と逃げた父親
そんな父親とかぶったってしょうがないと思う。
浮気なんてされた日には どんな男とも関わらなくなってしまうかもしれない。
そう思うと 私だって・・・・・・




